第6回 意外な一面
予想外にハゲシマの客の入りは多かった。
「はぐれないようにね」
「大丈夫だよ。もりしー」
先頭を切って歩いている森下和樹と、宮崎衣里。
その後ろから誰に対しても分け隔てなく接する小山亜美と、その彼女にうち解け始めている菅原翔太。
そして、互いに何も喋ろうとしない立花悠と、立花悠。
「ねーみんなー!最初に何乗りたい?」
亜美が振り返って尋ねる。
みんなが何がいいか考え始めたそのとき、2つの声が同時に重なった。
「「スカイジェット2008!」」
言った張本人たちが驚いてお互いに驚いて顔を見合わせる。
「なんや。たまにはええこと言うやないか」
「そっちもね。まともなこと言えるんじゃん」
ハルカとユウはニヤリと笑い、もりしーたちを見た。
「いいよ。じゃあ。先に立花たち並んでてよ。俺たちちょっと飲み物買ってくるから」
「「オッケー!!」」
ハイテンションで答えるハルカとユウはそのとき、もりしーたちの計画にまだ気づいていなかった。
◇
「やられた・・・・・・」
スカイジェット2008に並び始めて1時間近くになったとき、ようやくハルカたちはもりしーたちが来ないことに気づいた。
慌てて衣里に電話をかけてみると、
『うん。言わなかったけど、あんまり絶叫系好きじゃないんだよね。でもあんたたちは好きそうだから、私たちに構わないで思う存分乗ってきてね』
「はぁぁぁっ!?なにそれ?」
『じゃそういうことだから』
そう言って一方的に電話は切られた。
待ってよー・・・こんなんまるでデートみたいでやだよぉ・・・・・
「宮崎さん、なんやて?」
隣にいたユウがいぶかしげに尋ねてくる。
「や・・・絶叫苦手だから乗らない、って・・・」
「ふーん・・・・・」
絶対この後、なんで2号なんかと一緒におらなきゃなんないねーん、とか言うに決まっている。
しかし、ハルカがそう覚悟しているのに対してユウは、
「ほな、絶叫好き同士、めっちゃ楽しもうやないか!」
その童顔でさらに幼く、かわいく見える笑顔に、一瞬ハルカはどきっとしてしまった。
「意外」
「なにがや」
「なんでもない」
まさかいつも口ゲンカばかりしているユウを、一瞬でもかわいいと思ってしまったなんて言えるわけがなかった。
◇
スカイジェット2008は絶叫好きにはたまらない、とにかくスリル満点のコースターだった。確かに、苦手な人にはこれは無理かもしれない。
ハルカはユウと一緒に他の絶叫系にも乗り込み、思う存分楽しむことができた。
「サイッコー!!」
「せやな!また来たいなー!」
「うん!」
今日は来てよかったとハルカは思う。いつもケンカばかりだったが、こんなふうに普通に話すことができると知れたから。
「おーい!ハールカー!!」
この変なデートを企てた人の1人、衣里がエントランス前で手を振っている。その隣にはもりしーもいる。
「どうだった?楽しかった?」
「おかげさまで。いっぱい絶叫乗れましたよ」
皮肉たっぷりで言ったやったつもりなのだが、衣里は嬉しそうにハルカに耳打ちをしてくる。
「正直こうしようって思ったのは、立花が高橋をあきらめたハルカを心配してたからだよ。素直じゃないから言わないけどね」
へー・・・立花がそんなことをね・・・・・・
不思議な気持ちでユウを見ると、彼はもりしーと菅原に頭をなでなでとされてからかわれている。その顔は真っ赤だ。
今日は来てよかった。ハルカは心からそう思った。
一応予定では、高校卒業後まで書くつもりです。
どうか時々でもいいので、読んでくださると嬉しいです。