エピローグ2 小春
谷口小春が高校1年生のとき、立花悠と同じクラスになった。
名簿番号順で座ったら席が隣になり、彼の人懐っこい性格のおかげですぐに仲良くなることができた。
「大丈夫。俺が言うんやから大丈夫や」
何の根拠もなしにそんなことを言う男子だった。
その後、友達のちょっとした一言でユウに自分の気持ちがバレてしまった。
それがわかったとき、最初は恥ずかしくてたまらなかったが、友達の協力のおかげでなんとか告白をすることができた。
「うん・・・・・俺も」
たったそれだけしか言ってくれなかったけど、2人はつきうあうことにした。
幸せだった・・・・・・・・ユウが黙って転校しようとするまでは・・・・・・
◇
「小春・・・?どうしたん?ぼーっとしとるで」
授業が終わったというのに気づいていなかったらしい。小春はようやく自分がどこにいるのか悟った。
「あ・・ごめん。ちょっと考え事してた」
慌てて立ち上がると、隣で一緒に授業を受けていた友達――ユウが苦笑して立ち上がった。
転校したユウは、向こうの高校で新たに好きな人ができてしまった。
再会したとき頑張って告白してみたが、結局フラれてしまうことになった。なんとなくわかっていたことだったが。
今こうして小春がユウと一緒の大学に通っているのは自分のせいだ。
黙って会いに行き、そのときに事故に遭ってしまった。ユウはそれを自分のせいだと思い込んでしまったのだ。
「小春は次授業休みだよな?」
「うん・・・でも図書館でちょっと勉強せな・・」
「ほな、俺も勉強しよ」
ユウが自分に気を遣っていることがわかった。こういう優しいところがまたユウの好きなところでもあった。
◇
「ユウ君・・・1個だけ訊いてもいい?」
図書館へ行く途中、小春は今までずっと気になっていたことを初めて口にしようとした。
ユウは気軽に振り返ってきた。
「ええよ。どした?」
「私とつきおうてたとき・・・私のこと好きやった・・・?」
ユウの表情が変化したのを見て、小春はしまったと思った。
別にユウを困らせたかったわけではない。こんな優しい性格の彼をこんな些細なことで困らせたくなかった。
だけど、ユウはちゃんと答を返してくれた。
「当たり前や」
「・・・・・・今は、ちゃんと彼女さんのこと好きなんよね?」
ユウは少しだけ困ったように笑った。
「うん」
照れ屋だから、これ以上の言葉を言うつもりはないのだろう。それだけで小春は満足だった。
「ユウ君不器用やから心配や。ちゃんと彼女大事にせなあかんで」
本心だった。心から言えるその言葉。
こないだ今の彼女とつきあうことをユウの口から聞いたときには言えなかった言葉だった。
「・・・・・・ごめん」
とユウは一言。
「ごめんじゃないよ」
「ありがとう」
ようやく胸のつかえが取れた気がした。
小春は今でもユウのことが好きだ。でも、以前とは違う。ユウの心に変化が訪れたように、小春の考えもだんだん変わってきているのだ。
いつかユウと、ユウの彼女のハルカと一緒に遊びにいけたらいいと思う。
そのときまでに自分の気持ちに整理をつけて、隣には優しい彼氏がいることを夢みて・・・・・・
長い間更新できなくてすいませんでした…
一応の完結です。
もっと短い話のつもりでしたが、ダラダラと続いてしまいました;
次回作もそのうち更新予定です。
また気楽に読んでくださったら嬉しいです。