表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
29/37

第28回 新たな生活


少し時間が空きましたが、いよいよ大学編です。

よろしければ暇なときにでも読んでください。



 時は流れる。

 季節は巡り、桜の舞い散る春・・・・・・立花(はるか)はある人物を待っていた。

「ハルカ!」

 息を切らしながら現れたのは、桜井薫だった。


「大学生活にはもう慣れた?」

「少しずつ・・・でも、大学の授業って90分だから長く感じちゃいますけど」

 C大学に入学してから2週間。ハルカは大学生になっていた。


 思えば3年生のとき、今までしたことがないほど勉強をした。そのかいあってか、なんとかC大学に合格。無事にここまで来ることができた。

 ちなみに、同じ大学を希望していた宮崎衣里も合格し、同じキャンパスライフを過ごしている。


 ハルカはカオルを食堂へと案内する。

「日本へはどのくらいいる予定ですか?」

「今回はあさってで帰んなきゃなんないんだけど、冬に1ヶ月くらい休みを取ろうと思ってる」

 食堂で積み重ねられたトレーを取りながら、カオルが答える。

「そのときは一緒に過ごそう?クリスマスとか」


 カオルが真剣に言っていることがわかっているので、ハルカは曖昧にしか答えることができなかった。

 カオルは優しいし、かっこいいし、はっきり言って非の打ちどころのない青年だ。

 今だってこうして一緒にごはんを食べているが、周囲の視線が明らかにカオルに向いていることがわかる。


 だけど・・・ハルカはたぶんカオルの気持ちに応えることはできないだろう。

「ハルカ?」

 高校生のときの嫌なことを思い出してしまい、ハルカは慌ててそれを振り払った。

 これはもう思い出さないって決めたんだから・・・・・


            ◇


「ハルカ!こっち」

 3限の教室。人がいっぱいいる中、手を上げて手招きをしている人を発見した。

「衣里。席取っといてくれたんだ」

「だって取っとかないと座れなくなっちゃうじゃん」

 いつもは衣里と一緒にこの教室で食べるのだが、今日はハルカがカオルと一緒に食べたため、衣里が席を取っておいてくれたのだ。


「カオルさん、元気だった?」

「うん。衣里によろしくって言ってたよ」

「懐かしいなぁ〜修学旅行のときのこと思い出すなー」

 衣里はしみじみと昔を思い出す。

「みんな元気かな?亜美ちゃんは慣れないって言ってたけど、器用だからきっと上手くやってるだろうね」


 亜美も無事に看護学校に合格して、今は夢に向かって一歩ずつ前進している。

 もりしーは有名自動車会社に就職し、日々稼いでいるらしい。

 菅原はこっちの大学に合格して、週末に亜美とデートしているそうだ。


 そして―――あの人は、


 そのとき、チャイムの音が鳴り、授業の開始が知らされた。

「明日、カオルさんと一緒に映画見に行くんだ。いいでしょ〜」

「べっつにー。でもよかったじゃん。ちょっと安心した」

「安心・・・?」

「ほら、いろいろあったけど、やっぱりハルカには幸せになってほしいからさ」


 そこまで言って、衣里は急にしまったというような顔をした。

「ごっごめん・・・こんなこと言っちゃって」

「いいって。もうあのときのことなんか全然忘れてたんだから」


 そうだ。忘れなきゃだめだ。

 だけど、ふとした瞬間に思い出してしまうことを否定することはできない。

 ハルカにとってやっぱり大事な想いだったから、それをなかったことにすることなんてできなかった。


           ◇


 翌日、ハルカはカオルと一緒に映画を見に行った。

 見た映画は大好きなシリーズ『31』の映画バージョンだ。

「ハルカ、よっぽどこれが好きなんだね。鍵のキーホルダーもこれだし」

「そうなんです・・・・・これは大事なものなんです」

 答えになっていない返事をして、ハルカは無意識に両手をぎゅっと握り締める。


 と、そのとき、視界の片隅に見知った人の後姿を見たような気がした。

 ハルカは思わず追いかけてしまった。

「たっ・・・・・!」

 声をかけようとした瞬間、その人の横顔が見えて、違う人だということがわかった。


「彼氏だと思ったの?」

 ハルカを追いかけてきたカオルが後ろでそう呟いた。

「・・・・・・・・・・」

 否定することができない。だって実際そう思ったんだから。

 それは、カオルに対してすごく申し訳ないことのように思えた。


「忘れなきゃだめだってことわかってるんですけど・・・もうちょっとだけ時間をください」

 弱気なハルカに対し、カオルは静かにハルカの頭に手を置いてぽんぽんとなでた。

「俺は忘れろって言ってるわけじゃないよ。ただ、ハルカにとって居心地のいい男になれればいいと思ってる」

「なんで・・なんでそんなに優しいんですか・・・?」


 絶対に応えられないのに。カオルだってそれがわかっているはずなのに。

 それでも、そんな優しさがハルカには嬉しくて、辛かった。

何があったか、はそのうちわかると思います。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ