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第27回 電話の音


最初に言っておきます。

この次の回から話が一気に大学生まで飛びます。



「つきあうことになったー!?」

「しーっ!声が大きいよ!」

 慌てて衣里の口を押さえて、ハルカは他の人に聞こえないようにする。


 新学期になって、初めてハルカはユウとつきあっていることを衣里と亜美に告白した。

「ようやくハルカにも春が来たかぁ〜」

「よかったね、よかったね、ハルカちゃん」

「うん・・・ほんと2人のおかげです」

 ハルカは顔を真っ赤にしながらお礼を言う。


 思い返せば、夏休み。ようやく自分の気持ちを言うことができた。

 現在、念願叶っての恋人同士だ。

「お、噂をすれば彼氏が来たよ」

 衣里の声に反応してハルカは振り返る。彼氏と言われるとなんだか照れくさいが、悪い気はしない。

 ハルカは服部と歩いてくるユウのほうを見た。


「おはよー」

 隣にいる衣里と亜美が気軽に挨拶をする中、ハルカはなぜか恥ずかしくなって声が出なかった。

「おー、はよ」

 気づいたユウと服部も挨拶を返す。

 意識していたのは自分だけだった・・・ハルカは少し後悔して顔をそむけると、彼らとすれ違う際に小さな声が聞こえてきた。


「おはよ」

 顔を上げると、ハルカにだけ挨拶をしてくるユウがいた。

「おはよ!」

 思わず大声で挨拶を返すと、ユウは苦笑してしまう。

 このとき、つきあっているということを改めて実感した。


            ◇


 1学期からの続きで、2学期早々日直の仕事がまわってきたが、むしろハルカにとってはハッピーだった。

「部活も終わっちゃったし、俺も本格的に勉強始めんとなー」

 ほうきでごみを掃きながらユウが呟く。

「立花が目指してる大学って偏差値どれくらいなの?」

「・・・・・・知らん」


 この男は自分の行きたい大学のレベルも知らないのかとハルカは内心呆れた。

「C大学ってそんな偏差値高いん?」

「え、学部によっては高いけど、なんでそんなこと訊くの?」

「だって俺もそこ目指そ思てるから」

 心底不思議に思ったハルカに対し、逆に心底不思議そうに答えられてしまった。


「えっ!?大阪の大学に行くんじゃないの!?」

「そういう話もあったんやけど、実際別の大学に行くっちゅう友達もおるし、受けてはみるけど滑り止めやな」

「全然場所違うじゃん。なんでC大なのよ」

「そりゃぁお前・・・・・一緒の大学に行きたいからじゃぁダメですかね」


 予想外にもこんな嬉しいことをきょとんとした表情で言ってくることが恥ずかしかった。

 ハルカは慌ててちりとりを取りにいくフリをして、赤くなりかけた頬をごまかす。

 嬉しい・・・好きな人からそう言ってもらえるなんて・・・・・幸せかも。


「受かるといいね。私も立花も。もちろん他のみんなもだけど」

「せやな。そのためにはまず勉強や!」

「じゃぁ・・・これあげる。お守りだよ」

 ハルカはバッグの中から1つのキーホルダーを取り出す。それをユウの目の前に差し出した。


「コレ・・・『31』のキーホルダーやん」

「知ってる?『31』のグッズ持ってるだけでご利益があるんだよ」

 もちろんそんな話はないが、ハルカはそうだと信じている。根拠はない。

「サンキュー。ほな、これ持って勉強するわ」

 急に腕まくりをして、ユウは気合を入れる。

「なぁ、今度の日曜日ヒマ?一緒に勉強せえへん?」

「いいよ!するする」


 少しだけ一緒にキャンパスライフを送っている将来を想像してしまい、ハルカは1人浮かれていた。

 勉強しなければならないことはわかっていたが、次の日曜に会えることが楽しみだった。


            ◇


 だけど、このときはまだ気づいていなかった。一緒にキャンパスライフを過ごすことができないということに。

 このときがどんなに幸せだったのか、失ってから気づくことになる。


            ◇


 全てはそのときに鳴った1本の電話から始まる。


 ブーンブーン

 無機質な機械音が2人だけの教室に鳴り響く。

「悪い。俺や」

 ユウはケータイを取り出して会話を始める。


 電話はすぐに切れた。

「・・・今日はまっすぐ帰れだと」

「そうなの?じゃぁ早く終わらせようか」


 全ては始まった。

次から大学編へと変わるんですが――…

この空白の間に何かがあったわけです。

それはまた後日に……

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