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第23回 宿題という名の告白

「・・・・・行っちゃやだ・・・」

 今まで言えなかった思い。とうとうハルカは口にしてしまった。

 これは、相手を困らせる言葉だってことはわかっている。だけど、もうどうしようもなかった。

 二度と会えなくなるよりもずっとマシだった。


 ユウからの反応は何もない。

 おそるおそるハルカは上目遣いに相手を見ると、ずいぶんきょとんとした表情でこっちをじっと見ている。

 しばらくして、それがだんだん険しいものに変わっていった。

「なんやねん・・・行け言うたり、行くな言うたり・・・・」


「え・・えーっと、別に行けなんて言ってないような・・・」

「言うた。もう立花がわからへん。俺の人生狂わす気か?」

「はぁ?」

 せっかく意を決して言った言葉は、この時点で綺麗さっぱり流されている。

 煮え切らない思いを抱えながらもハルカはユウの言葉の意味を考える。


「俺はもし小春とやり直せる機会があったら、そうしよ思てたんや!せやのに・・・・・あかんかったやんけ!」

「はぁ?それって文化祭のときのこと言ってるの?そんなの私のせいじゃないよ!勝手に教室でそんな話し始めたそっちが悪いんでしょ?」

 いつのまにかハルカもユウも立ち上がって、いつもよりさらにエスカレートした口ゲンカが始まっていく。

「ちゃうわ!別に立花()んくても断るつもりでおったわ!」


 その言葉でハルカの意識はそっちに向いてしまったが、ユウはまだテンションが高いまま大声を出した。

「立花が気になってしょうがないんじゃ!ボケ!」

「え・・・・・?」


 急にばくんと心臓が高鳴った。

 それと同時に、ユウの声が急激に小さくなっていく。

「もーわけわからんしー・・・」

「なっなによ・・・わけわからんって・・・私のほうがわかんないよ」

 緊張と不安で心臓の鼓動が速くなっていく。


「・・・・・・悪い。勉強の邪魔したわ。帰る」

「えっ?別に・・・」

 帰ろうと思っていたことを思い出したが、少しだけ期待していた分、帰ろうと立ち上がったユウの言動にショックを受けた。

 やっぱりそんなわけないか・・・・・

 ため息と共にハルカも帰ろうと準備し始めたとき、すでに図書室の扉近くまで行ったユウがくるっとこっちを向いてきた。


「宿題を出します」

「はい?宿題?」

「数学のベクトルを完璧にマスターすること、英語のリスニングを完璧にすること、それから―――」

「まっまだあるの・・?」

 げんなりとハルカは構える。

「俺とつきあうかどうか考えること・・・以上!」


 強引に会話を終了させると、ユウは早々と図書室を出て行く。

 ハルカはそれを目をしばたかせて見ていた。


 今なんて言った?

『俺とつきあうかどうか』それは、つまり・・・・・告白されたということだろうか?

 ユウも自分のことが好き・・・?

 そう考えると、ハルカはどうしようもない感情を覚えた。

 まさかこんな日が来るなんて思わなかった。今までケンカばっかりだった相手に告白される日が来るなんて。


「わっ・・・・わぁぁぁ・・・」

 思い出して、ハルカは1人で赤くなる。

 その答えはもう決まっている。嬉しくて嬉しくてなんだか涙が出てきそうになった。


            ◇


 ハルカは変なところで律儀な人間だった。

「ハルカ・・・何聞いてるの?」

「英語のリスニング中!」

 SDに録音した英文を聞き、次の日からハルカは休み時間中英語の勉強をし、放課後は数学のベクトルをやるようになった。


「宿題進んどる?」

 ひょっこりと顔を出すユウに、ハルカはどきっとした。

「まあね。少しずつだけど解けるようにはなってきてる」

「・・・・・期待しててええ?」

「どうぞどうぞ。もうアホの立花ハルカとは言わせないから」

「そじゃないんやけど」


 ユウは心底長いため息をついたのがわかった。

 でも、期待してていいから。どの宿題に対しても・・・・・・

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