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第1回 立花1号2号

これは高校2年生の5月頃の話です。



 いつもの朝、いつもの教室。弁当を食べ終えた後の授業は特に眠くなる。

「ぐがー・・・・ぐがー」

 豪快ないびきをかいて堂々と寝ている生徒が2人いた。

 それはいつもわかっていることで、ある意味名物になってきている。


「起きんかぁっ!!立花1号2号!!」

 ばしんっと容赦なく教科書を叩きつけられ、ぐぇっとカエルが潰れたような声を出して慌てて起きた2人組みはきょろきょろと周りを見渡した。

 目の前には2年5組の担任中尾先生。通称ゴリオ。


「お前らなぁ・・・毎度毎度俺の授業で寝やがって・・・・・何のために学校来てるんか!」

「「お勉強するためです」」

「嘘つけ!しかも今日はいびきまでかきやがって」


 こんなことはしょっちゅうで、今では教師の間で居眠り常習犯としてブラックリストに載っているらしかった。

「先生違うで。いびきかいてたんは俺ちゃう。2号や」

 そう言ったのは、ブラックリストの1人、立花1号こと、立花(ゆう)


「違うよ!私がいびきなんてかくわけないじゃん!絶対1号ですよ!」

 言い返したのは立花2号こと、立花(はるか)


 1号と2号の言葉に、ゴリオはふるふると震え、そして憤怒(ふんど)した。

「黙らっしゃい!!後で2人とも職員室に集合!!」

「・・・・・はーい」


            ◇


 元々ハルカは真面目な生徒ではなかったが、ユウが編入してきてから彼女の不真面目さがなぜか目立つようになってきた。

「おかげでこっちはいい迷惑だっつーの」

 ゴリオにたっぷりと怒られた後、罰として日直の仕事である教室掃除をすることになり、ハルカはぶつぶつと呟きながらほうきを動かしていた。


「はよ終わらせるで。俺部活行かなあかんし」

 テキパキと手を動かすユウに対し、ハルカはジジ臭いため息をついて相手にも聞こえるような声でぼそっとまた呟いた。

「ああ。確か158cmの君はバスケ部に入ってるんでしたよね」

「身長は関係ないねん!要はハートや!ハート!」


 おせじにも高くない身長で廃部寸前だったバスケ部にユウが入ったとは噂で聞いたのは、編入してすぐのことだった。

 ちなみに身長はハルカと同じで、体重を絶対知りたくないとつくづく思う。


「コラ。手ぇ動かせ言うてんのがわからへんのかい」

「うるっさいなぁ・・・そういう1号だってさきから動いてないじゃん」

「なんじゃとー!俺は教室の3分の2はやったで!」

「やだやだ。レディーに3分の1もやらせるつもりなの?」

「レディー?どこにおるん?」

「目の前にいるやろ!ボケー!!」


 口ゲンカの流れで関西弁がうつってしまったところで、ハルカは廊下を歩いている1人の人物に気づいて慌てて口を止めた。

「どうしたん?」

 不審に思ったユウが尋ねてくるが、ハルカはぶんぶんと首を振ってごまかす。

 たった今、廊下をハルカが片想いしている男が歩いていたなんて言えるわけがなかった。絶対からかわれるから。


「何?お前、高橋のことが好きなんか?」

 いきなりその人物の名前を言われて、さすがにハルカはどきっとした。

「なっなんで・・・なんであんたが高橋君、のこと知ってるの・・・」

「いや〜あいつんち、俺んちの近所やし」

 しかし、急にユウの顔が何かを企むようなニヤリとしたものに変わった。途端にハルカは嫌な予感がしてきた。


「へー・・・おもろいやん。覚えとこ〜」

「ちょっと待て!」

「ほな行くわ」


 ほとんど誰にも言ったことのない恋心を、よりによって最も知られたくなかった人物に知られてしまった。

「さいあく・・・・・・」

 ハルカは泣きたい気持ちになった。

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