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第18回 じれったい

「なにしとんねん・・・あのバカ」

 それがステージ上のクラスメート3人を見たユウの感想だった。しかし、その言葉はたった1人にしか向けられていない。

 どうやらそのイベントは新しい飲み物の宣伝らしく、ハルカたちはそれを配る係になっているのだ。選ばれた人だけが飲み物を受け取り、中央にいる男と乾杯をして飲む。日本で言う握手会に似ていた。


 しかし、その作業もすぐに終わり、韓国語で何を言っているのかわからなかったが、時々ハルカたちのほうを見てにこやかに会話するのがわかった。

「なんか楽しそうだな」

 服部が呟いた言葉に、ユウはおもしろくなかった。

「そうかぁ?」


 しばらくして、服部が意外なことを言い出した。

「お前、立花さんのこと好きなんだろ」

「はぁ?」

「みんな言ってるよ。お前らはよくっつきゃいいのにって」

「あんなぁ・・・そんなんありえへんって」


 ユウは意識的にハルカを視界から外していた。そうしないとまたおもしろくないと思ってしまう。

「でも立花さんはお前のこと好きだろ、たぶん」

「それもないな。あいつ、年上っぽい好きなヤツいるみたいやし」

 クリスマスイブのこと、それからバレンタインデーの2個のチョコレートを思い出した。


「しっかし、お前モテるな〜。太田さんといい・・・そういや、立花の彼女はどうした?文化祭のとき俺見たけど」

「だー!もう訊くねん!俺かてどうかしてるんや。けど、どうしようもないねん!」

 たぶん服部には通じていないと思われる言葉を吐くと、ユウは完全にステージから視線を外した。


            ◇


「ありがとう。ほんとは男のスタッフがやる予定だったんだけど、やっぱり舞台には華がないとと思ってさ。それでびびっとくる女の子を捜してたんだ」

 イベント終了後、カオルは丁寧にお礼を言って、今日のイベントで配った炭酸飲料水をプレゼントしてくれた。

 まさかハルカたちはドレスに着替えさせられるなんて思ってもみなかったので最初はびくついていたが、実際にやってみるとすごく楽しくて時間を忘れてしまった。


 ハルカは衣里や亜美と顔を見合わせてから、カオルとスオンにお礼を言った。

「こちらこそありがとうございました。まさか修学旅行でこんなことができるなんて思いませんでした」

「個人旅行で来たときはいつでも連絡してよ。俺が案内するから」

 カオルがにっこりと笑顔で言う。笑うと幼く見えてかわいい。


 帰り際、もう集合時間が近くなってしまったのでそのままホテルに向かおうとすると、カオルが呼びかけてきた。

「ハルカちゃん!」

「え?」

 振り返ると、はにかんだように笑うカオルがいた。


「俺、ハルカちゃんに似てるって言われて良かったよ」

「―――?」

「近いうちに日本に行くから。そのときは案内してくれない?」

「はいっ!もちろん!」

 最後にそれを約束して、ハルカたちは別れた。


            ◇


 集合時間にはまだ30分近くあったが、すでに何人かの人がいて、その中にユウの姿があるのをハルカは見つけた。

「立花君!」

 珍しく衣里が話しかけると、こっちに気づいたユウが歩いてくる。


「どしたん?」

「ううん。今日誰と回ったのかなって思って。もりしーとは回った?」

「や、服部たちと回っとった。もりしーは別のクラスやからなぁ・・・」

「そうだよね。私も1回も会わなかったし」

 衣里はそこまで言うと、辺りを見渡して少し早口で言う。


「ごめん。ちょっとお手洗い行ってくるね」

「私も・・・・・!」

 亜美も慌ててついていく。

 それを見ていてわかった。これが衣里たちの「2人きりにしてあげる」だということが。


            ◇


 2人きりになった途端、急に静かになったと感じるようになってしまった。

 意識しなければなんでもないことなのに、今のハルカは変な風に考えてしまってそれどころではなかった。

 どうしよう・・どうしよう・・・どうしよう・・・・・!


「じれったいなぁ・・・・・」

 いきなりそんな声が聞こえたかと思うと、すぐ隣にいつのまにいたのか太田が立っていた。彼女は巨乳で、そういえば修学旅行中にユウに告白するという話があった。

「お互い両想いなんだから、つきあっちゃえばいいじゃない・・・」


 一瞬自分の気持ちを言われたような気がして恥ずかしくなったが、もう1度ハルカはよく考えてみる。

 そして、思った。両想い・・・・・・?


 目の前ではハルカと同じような顔をして、こっちを見ているユウの姿があった。

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