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第13回 サンタがやって来た

 夕方4時を少し回ったとき、ハルカは衣里、亜美と一緒に高校近くのカラオケボックスにやって来た。

 すでに2年5組の面々は来ていて、ハルカはその中にユウがいるのを見つけた。


「よっし!これで全員だな」

 このクリスマス会を仕切る服部が全員来たことを確認して、立ち上がる。

「とにかくー・・・今日という日を迎えられたことに感謝して―――」

「ほなカンパーイ!!」

 横からユウが言葉を奪い、服部が固まっている間にみんなは乾杯をしてしまった。


 プレゼントはあみだくじで適当に決めて、渡す相手を決めるらしい。

 ハルカは密かに、ユウにプレゼントが渡せるようにと願ってくじに自分の名前を書いたが、その結果は――・・・


「はい!プレゼント」

「え?私も服部君にプレゼントあげるんだよ?」

「マジで?俺ら物々交換じゃん」

 服部はにこにこと笑いながら、プレゼントを開けて喜ぶ。

 服部がくれたものはペンケースと、有名アパレルショップの20パーセントオフ券だった。


 もちろん嬉しい。

 だけど、無意識にハルカはユウの姿を捜してしまった。

 どうやら彼は衣里にプレゼントをあげることになったらしい。相手に少し安心しながら、あみだくじで衣里のところに名前を書けばよかったと後悔した。


            ◇


 クリスマス会は続いていく。

 クラスメートが自分の好きな曲を歌って採点し、その点数が1番高い人が勝ちというゲームになってきている。

 今のところ1番高いのは衣里だ。


「ハルカちゃん、調子悪いの?」

 クラスメートの歌を聞いているとき、隣にいた亜美にそんなことを訊かれた。

「え・・・大丈夫だよ」

「ほんと?なんか顔色が悪いように見えるけど・・・」


 そういえば頭が痛い気もする。亜美に言われて初めて気がついた。

 亜美がハルカのおでこに手のひらを当ててみると、

「わっ・・・あっついよ!熱あるかもしんない・・・」

「ほんとだー。ハルカ、ちょっと顔色が悪いよ」

 ジュースを持って戻ってきた衣里も心配そうな表情で言ってくる。

 ハルカもだんだん熱っぽさを感じるようになってきた。


「ちょっと頭痛いかも・・・今日はもう帰ろっかな」

「そうだね。服部君には私から言っとくよ」

 ハルカはこくんと頷いて、よろよろと立ち上がった。


            ◇

 

 結局、ユウと話すことができなくて何のために来たのかわからないクリスマスだった。

 今日来てみて、わかったことが1つだけある。自分はユウを意識しているということだ。

「なんで好きになっちゃったんだろー・・・・・」

 その言葉は、12月の空に白い息と共に消えた。


 自分にとって辛いことにしかならない恋。

 相手には彼女がいる。

 決して叶わない恋。

 辛い・・・だけだ。


「立花!」

 物思いにふけっていて、最初は気づかなかった。しかし、何気なく振り向いてみて、ようやく気がついた。

「なんで・・・?」

 そこにユウがいたということに。走ってきたらしく、息が荒い。

「宮崎さんに聞いた。なんや調子悪そうだったから、送ってってほしいーって」

「あぁ・・・そうなんだ。でも、家近いし、大丈夫だよ」


 素直になれずにそのまま帰ろうとしたが、ユウは走って隣に並ぶ。

「送ってく」

「・・・・・・うん・・・」

 少しだけ緊張してきた。


 特に話題があるわけではなかった。だけど、ハルカにとってはこれ以上ない幸せな時間だった。

 以前は普通に話せていたのに、そんな当たり前のことがもうできなくなっている。


「ここでいいよ。ありがとね」

「ええよ。気にしんな」

 自分から言っておいてなんだが、ハルカはこのままユウと一緒にいたかった。

「ほな・・・」

 だけど、ユウはあっさりと帰ろうとする。あきらめてハルカも家に向かおうとする・・・そのときだ。


「立花ハルカ!」

 振り返ると同時に、ハルカは何かが飛んでくるのを見た。反射神経でそれを取ると、

「朝怒鳴った()びや」

 そのままダッシュでユウは走っていってしまった。


            ◇


 サンタが街にやって来た。ハルカのもとにもやって来た。

 もらった『31』のキーホルダーをずっと大事にしようと決めた。

『31』とは、ハルカが文化祭のときに

課題よりも優先して見ていた洋画の題名です。

どうでもいい設定ですが……

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