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幼女のオットマンは幸福か 6

 ガシガシと頭を踏みつけられながら、帰路を行く。


 真っ赤になった僕の額をリノが笑う。お前のせいだからな!


 ママのぺたんこな胸に頬ずりしていたのが故意だとバレ、セルシスの怒りが爆発したのだ。ご機嫌取りのためにセルシスの胸に顔を埋めようとしたのだけれど、それがさらなる怒りを買った。


 それだけならまだよかった。下心なんてまったくなかったのに、マリアさんは僕を避け始めたのだ。視線が合うと胸を隠しながら身体を背ける。とてもつらい。


 カミュは泣き疲れて眠っていた。両親が目の前で殺されたのだ。彼女の心は深く傷ついているだろう。しばらくは塞ぎ込んでしまうかもしれない。


 こればかりはどうしようもなかった。忘れろとも言えない。


 帰りは鬼獣に遭遇することもなく、二日後にプロディへ着いた。

 エマさんに挨拶をしたかったけれど、もう日が沈んでいたから明日にした。家に着くと、みんな疲労を吐き出して横になる。いくら睡眠を取っていたとはいえ、トラックの荷台ではあまり身体が休まらない。リノはもう寝ていた。はやい。


 セルシスが首に布を巻いていたので外に連れ出した。案の定、赤い筋が首まで這い上がっていた。


 何でアルカゼノムを使ったんだ。そう叱ってやりたかった。けれど不安げな彼女の表情を見てやめた。


「セルシス、お願いだから、もう力は使わないでくれ」

「わ、わかって……るわよ」

「僕はお前を失いたくない」

「っ――ば、ばっかじゃ、ないの……そんなの、へんたいに言われたって……うれしくなんて……」


 ああ、もう! もにょもにょとうるさいな!

 彼女の身体を強く抱き締める。抵抗はなかった。


「いいから、約束して」

「…………うん」


 不満げな声に嬉しそうな音を混ぜて、セルシスはそう呟いた。


 僕は安堵の笑みを浮かべる。



 ――この約束がすぐに破られるとも知らずに。

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