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とにかく色々やってみた  作者: 玉屋モトク
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mission 1-1 コックリさん開始

もはや説明不要、神の国JAPANにおいて最も有名な降霊遊びの一種である。


元々は西洋のテーブルターニングが輸入された際に改変して出来たもので、明治の中頃に始まったとかなんとかいう古いのか新しいのかわからない中堅クラスぐらいの降霊術だそうだ。


やり方は簡単で、硬貨一枚と紙に「あ」から「ん」までの平仮名と「はい」と「いいえ」(HighとYeahだと多分パーティピープルな霊しか来ないので注意して欲しい)、鳥居のマークを書くだけである。

平仮名と地図記号ひとつ書ければ出来てしまうので、対象年齢は7才ぐらいだろうか。とにかくお手軽でしょうがない。


始める前に硬貨の上に人差し指を乗せるわけだが、ギャラリー込みならば参加できる人数は2〜∞だ。

硬貨の上に指を乗せられるのは参加者の質量がゼロでない限りは3人とか4人ぐらいが限度なので、あらかじめコックリさんを行う人間は決めておいて、とにかくさっさと指を乗せよう。


今回、我々が用意出来たのは3人で、まあ友達が少ないとこうなるよねっていう人数である。問題はない。

人物の説明が必要かどうかはわからないが、一応全員にイニシャルを振ってA、H、Oとしておく。AHOだ。

名前の詳細はといえばA型のアホと、O型のアホがいて、残りの1人がHENTAI(へんたい)ということでHになる。当方はO型です。


時間はたまたま丑三つ時で、ゴーストバスターには事欠かない時間だったが、そんな資格はもっていないので心霊現象が起きた時には丸腰で闘う羽目になりそうだが、そうなればクエスト失敗の予感しかしない。


コックリさんコックリさん、いましたら返事をして下さい。「はい」の方へ移動して下さい。


そんなようなグダついた始め方だったと思う。

何せ初めてで、しかも半信半疑だったので微妙な始まり方にはなる。このやり方で良いのか悪いのかもわからないから仕方ない。

だが、予想に反して3人の指を乗せた硬貨はすぐさま動きはじめた。


「はい」


本当に、硬貨には指を軽く乗せていただけである。

それが、指からすっぽ抜けようとするように、ゆっくりと、やや軽やかに、ズズズ……と動いた。


「おいやめろ」


「とか言って、誰か動かしてるんでしょ?」


「いや本当に何もしてない」


AHOはビビりながら、硬貨が動くのを確かに見た。

この後しばらく沈黙していたが、硬貨は暇を持て余したように左右に動いたり、円を描いたりしている。というか放っておくと、文字の書かれた用紙を突破して自販機にでも吸い込まれてしまいそうな勢いだ。


やばいコレめっちゃ動く。そんな事を言いながら質問を考える。


でもいきなり硬貨が動くものだからビックリして何も思いつかない。人間、パニックになると二の句も告げないものだと痛感したものである。

とはいえ呼び出しておいて先方を待たすのも社会人としてどうかと思うので、誰もが知ってる質問をすることにした。


「Oの恋する人物とは誰ですか?」


すぐに硬貨は反応し、目標の文字へと舵を切る。

仕事の早い霊である。


「あ……」


硬貨は「あ」で少し留まった後、すぐに移動する。


「ど……む……」


あどむ。


もちろん知らない名前である。

やけに強そうなのは分かるが、そんな名前の人物には会った事もないし、そもそも恋する相手とは一文字も合ってない。ひょっとしたら性別も違うと思う。


「すいません、違いますが……」


先方に恐る恐る尋ねると


「に……ょ……ろ……ん」


にょろん。である。


ここまで来ると緊張もほぐれてきたというか、もはや呆れ顔の我々である。

正直な話、会話にならない奴と話しをする為にコックリさんをしているわけではない。


妙な奴に当たってしまったものだ。こうなれば、一刻も早く帰ってもらおう。

当然そう思ったが、ここに来て肝心な事を忘れていたのを思い出した。


そういえば終わり方を知らない。


……とはいえ非常にメジャーな遊びなので、どこかで聞いた気もしないでもない。

「お帰りください」と頼んで、「はい」の方へ移動して、硬貨が鳥居のマークへ移動すれば良いとかそういうのではなかっただろうか?

そもそも、これまで出番の無かった鳥居のマークだが、ここで使わなければ他に使う機会もないだろう。よし、間違いない。


すぐさまこのポンコツなコックリさんを帰すべく、先の言葉を唱える。


「コックリさん、お帰りください」


……もちろん帰らない。硬貨はまるで関係のない場所をユラユラと動くだけであった。

それもそうだ。そもそも会話が成立したのは、最初の「はい」一回のみだ。

こいつに話が通じるわけがない。


まるで言うことを聞かず、3人の指の下にある硬貨は紙上を右往左往している。

この後、何度か帰宅を促してみるも、全く帰る素振りもない。


こうなればもう、10円玉を放り出して強引にでもやめるしかない。

だが強引に止めたらどうなるのか?という疑問に対してはっきりとした答えも聞いた事がなかった。

或いは霊に取り憑かれる、或いは不幸に見舞われる、或いは何ともないかもしれない。その程度の話しかあがって来ない。


故にここで一旦、コックリさんとはなんぞや?というところを見ると考えてみようと思ったのである。

そもそもがコイツ(10円玉を動かしているであろう、謎の力)、いつまで経っても右往左往するばかりなので、考える時間は山ほどある。


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