はじめに
心霊、オカルトにまつわるアレコレを、やってみようじゃないですか
コックリさん、肝試し、降霊術に悪魔召喚。
本当なのか嘘なのかよくわからないが、そんなワクワクするものが世の中には沢山ある。
かく言う私もそういった摩訶不思議なモノが大好きな性分で、夏休みの日記に「今日は空に霊が沢山だった」とか書いて、先生に霊の部分を雲に書き直されたりしているような子供だった。
(下駄箱の横でガーゴイルを見た、という日記に対してはノーコメントだった今日がする)
そんな冒険心を胸に秘めた子供であったので、随分長いこと不思議なものを追い求めてきた。
あっちで幽霊が出ると聞けば胸を踊らせ、こっちで霊能力者がいると聞けば童心を拗らせたものである。
とはいえそれらを全て自分で試すのは嫌なものだ。
もしも何かあった時に、例えばそれがとてつもない呪いだったりした時に、どうしたら良いのかわからない。
やはり、なんらかの救済処置が無ければ躊躇してしまうものである。
そもそも軽いスリルを求めてやるような低俗な遊びの場合がほとんどなので、これやるといきなり死にますだとか、別世界の住人に猛烈な攻撃を食らって精神が朧豆腐のごとくクラッシュしてしまうというのは、今後も長い人生を過ごす予定である者にとっては全然面白くない。
せめて誰かの体験談が聞きたいのだが、そこら辺に大量に転がっているフェイクなのかリアルなのかわからないような怪談話では、現実では遭遇し難い展開しか聞いた事がない。
例えば、呪われた時には大体、寺の坊さんだとか神社の神主に見せに行って、念仏だのお祓いだのを受けるシーンがある。
そして顔面蒼白の坊さんなり神主さんに「これは手を出せない」と言われてバッドエンド……もしくは現状維持で幕を閉じる事が多い気がする。
だけどどうだろう、例えばあなた方の身の回りの坊さんや神主は、そんな雰囲気をしていただろうか?
おそらくだが、皆さんの身の回りにいるのは、そのほとんどが普通の人ではないだろうか。
「すいません、今日ちょっと呪われちゃったんですけど」
などと、風邪を引いて病院へ行くノリで訪ねたならば、普通の人は困惑するはずだ。
「先程レメゲトンを読んで悪魔アスタロトを召喚してみたんですけど失敗しちゃって困ってます。悪臭がとれません」
なんて言ったところで
「アスタロト?ああ、得意分野だ任せとけ。まったく、どうせ銀の指輪を忘れたんだろう?」
などという坊さんがいたら、逆に胡散臭さ爆発ではないだろうか。仏門に入ったはずなのに、そっちに行っちゃ駄目だろう。
ゆえにまともな神職者、僧侶ならば困惑してしまうだろうし、お祓いや調伏に対してやけにハッスルしてしまう人は怪しいものだし、なんだかお祓い先を考えるのも七面倒臭い。
とは言っても、先に述べたような顔面蒼白で「これは手出しできない…」なんていう神職、僧侶なんてのも全く現実的ではない。
なにせこちらはお祓いを頼んでいるわけだし、相手はお祓いを業務内容として掲げているわけだから、やらなければ職務放棄である。
バンドマンが小さなライブハウスから成り上がり、ドーム公演を果たしたとする。
その時に、あまりの規模の違いに
「規模がやばいですって。これは手に負えません……」
と言って帰ってしまったら、職務放棄以外のなにものでもない。
いやいや、お前のプレッシャーは知らんけど、とりあえずいつもの歌やろうよ。いきなり帰ったら駄目でしょう。……当然ながら、そうなるのが社会である。
お祓いも同じで、それを行なっている所に行ってお金を払えば必ず受けられる。
ゆえに問題になってくるのはその後の話で、バンドマンがドーム公演で歌ってみたものの大失敗するのと同じく、神職がお祓いに失敗した時のみである。
だから本来、気軽にオカルティックな行動をとるのは、あんまり良くない事なのである。
生産性はまるでないし、当事者か、呪いの主か、救済する人かはわからないが、そのうちの誰かが損をするだろう。
全員が得をするようなwin-winの関係を築くのは、特に肝試しでは100%不可能なのは間違いない。
コックリさんで呼ばれる方も、何人体制か知らないが、24時間年中無休で日本全国津々浦々に呼び出されていたら苛々してしまうだろう。
これが悪魔召喚ともなればキリスト教圏にまで出向かなければいけないので、日本どころかもっとグローバルな活動になるし商社マンも腰を抜かす忙しさに違いない。
いや、むしろ悪魔召喚については向こうが本場なので、海外出張で日本に出向くようなものだろうか。
肝試しなんかは縄張りに侵入者が来るのだから、もはや気が気ではないに決まっている。
なにかを思い残して其処へ留まっているのに、全然関係ない第三者が勝手にガクガク震えたり叫んだりしながらウロウロして、あまつさえ注意をしようものなら「心霊現象だ!」となって、一躍メジャー観光スポットの仲間入りである。酷く迷惑な話に違いない。
そんなわけなので、好奇心によってどこかの誰かが嫌な気分になる前に色々やってみてレポートに残して、少しでも誰かの負担を減らそうではないかという、半ば押し付け気味なボランティア活動が今回の企画である。
いやいやお前が試すんなら既にその分あちらさんに
迷惑かけてるじゃないか!
……なんて叱責を受けるのも充分承知ではあるが、本レポートを読んだ人が行動を踏みとどまってくれたら、試す人が減って今後の迷惑がかかる人の総数が減少するに違いないと思うので、目を瞑ってくれまいか。
これから行われる数々のレポートにより、皆さんの人生を左右するような不利益でも発生しない限りは、生暖かく見守って欲しい。
あと過去に行った事を思い出しながら書いていたりもするので、既に時効と言うか、とりあえずそこらへんも配慮して欲しい。
それではぼちぼち、はじめていこうと思う。