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ぱーふぇくと・かばー  作者: 小出毬子
8/9

完全隠蔽 〜母視点〜

瑞希のお母さんは占い師です。忘れてた方は一話を参照願います。

 ヒースと出会ってから7年後のある日。


「ママ、『いってまいります』できる?」

「ちょっと待って。髪ほどけてるから、こちらへいらっしゃい」

「むー、今日もダメでしたか」


 口を尖らせて私の方へ駆け寄ってくるが、眼は嬉しそうにキラキラ輝いている。


 娘は三つ編みにまだ慣れていないので、私が編んだ方が早くて綺麗だが、練習の為に一度は自分で編まないと直さないと約束したので、編んでもらえるのが嬉しいらしい。


「パパは今日どこの局に出るんだっけ?」

「今日はお昼の●●TVの報道バラエティだった筈」


 祐介さんもコメンテーターの仕事がすっかり多くなり、以前のように数ヶ月も海外出張することはなくなった。


「パパは中身はともかく見た目と人当たりいいから、TVのお仕事ぴったりだね」

「…忌憚のなさすぎる、娘ならではのコメントありがとう」

「ママ、キタンって?」

「忌み憚かること。遠慮や容赦って言った方がわかる?」


 誰に似たのか見た目おっとりさんなのに、言うことは毒針攻撃のように一撃で倒すようなセンスを持っている。


「本当に瑞希は、急所をつくのがうまいわね」

「わーい、ほめられた!」


 …褒めてない、呆れただけだと言いたいが、今は黙っておこう。


 何だか最近荒事から遠くなって、嘘のように穏やかな生活が続いている気がする。


 瑞希(爆弾娘)はヒースに気に入られたお陰か、英語教育に熱心な私立小学校から特待生のお話を頂き、毎日登下校に付き合うようになってから早4年。見た目だけはハイソサエティな小学生に見えるようになった。成長したせいなのか、あんなに気に入っていた縫いぐるみのアリスちゃんとも、いつの間にか部屋のインテリア程度のお付き合いになってしまった。


 荒事の問屋だった河崎組は、いつの間にやらカワサキ組傘下のリサイクル業者の名前になっていた。

 カッちゃん曰く、桜田門けいさつもうるさくなったし、縄張りよりもシノギ(本職)の方が大事だからと、自分はリサイクル業者(新河崎組)の社長兼営業部長として軽トラ乗り回して巡回している。

 カワサキ組の新しい社長は元々営業で手腕を発揮していた翔平(葛城専務)が大抜擢され、(中島の兄貴)は営業1課長に、実は工業高校の建築科出身だった包帯君は、目配りの巧さを買われて現場監督をしている。なんと仕事の合間を縫って大学にも通ってるそうだ。

 そしてヒース。大統領が辞職するのを待っていたかのように、家族で日本に引っ越して来た。尚、末息子のクリス(自称瑞希の婚約者)は瑞希と同じ学校の中等部に在籍している。

 コメンテーターとして引っ張りダコで、裕介さんともよく仕事が一緒になるらしい。番組の後、反省会と称して我が家でヒース達が呑んだくれるせいで、我が家のリビングは海外事情に詳しい方々の溜まり場になっている。


 最近、なんだか他人の人生を生きているような違和感がする…平和なんだけど、何かが違う。

 なんて言うか、台本通りに動かされてるような人工的な流れに乗せられてる気がする。


 それはともあれ、私の生活も随分と変化した。

 町の薬局店主だった私の店は「ドラックストア神農堂」として改装されて大きくなった。酒も扱えるように、酒屋さん(しょうちゃんの家)に手伝ってもらって酒類販売免許もなんとかクリアした。一緒の店にしたおかげで、お互い店番が楽になるというメリットもあったし、配達を有償にしてもうちの商品と一緒ならそれなりの需要があったので、お互い個人店主の頃より楽して収入を得られるようになった。


 以前と比べて、今の方が間違いなく安全で、収入も安定したが、ふっと何か大きな不安を感じる事がある。

 毎日の雑事に追われて忘れるような、小さな違和感。

 でも、忘れてはいけないような焦燥感。


 一体何なのか。


 思い出せないのは覚える必要がない事と聞く事があるが、最近その焦燥感ですら思い出す事もなくなった。


 本当にこれでいいんだろうか…


…カードも水晶玉も、私の不安には答えてくれない…


次が本編最終話の予定です。

初の瑞希ちゃん目線のモノローグが入ります。

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