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007.
「本当に教科書通りに入れてる?」
疑いの声音でシーナは訊いた。
「えー、入れたよ。〈月の涙〉と〈眠りクモの糸〉に〈ささやきの木の実〉でしょ、それから〈なまけバチの蜜〉……。これを二対一対三対四の割合で混ぜる。これでいいはずなのに……」
「うーん、たしかに合ってるよねぇ」
でしょ? とルルはシーナの方へ目線をやった。
材料は間違っていない、分量もきちんと量った、けれど、目的のものはできない。迷路に入っていくようだった。
シーナは点検するように、机の上のものをひとつひとつ持ち上げて調べていた。
一年生であるルル達は教材を支給されているので、皆同じものを使っている。それなのにルルひとりができないというのは不思議であった。
「あっ!」
シーナがあまりに大きな声をあげたので、ルルは驚いて体が大きく揺れた。シーナを見ると手になまけバチの蜜が入った容器を持っている。
「ルル! これだよ、これがダメなんだよ」
シーナは興奮したように強い口調で言った。