005.
ルルの住むルガウヌ王国は、主に大小三つからなる島国である。
長く続いた戦乱の時代を経て、建国から三百年余りの歴史を持つ。現在はマルカス二世の治世の下、平和が続いている。
この国は鉱山資源が豊富で、国中で採れる宝石の産出は世界一を誇る。それにより貿易が活発に行われ、産業も発展した豊かな国だった。
多種多様の宝石は研磨され、一部は宝飾品として加工されるが、これは魔術の使用時にはかかせないものである。
このため、宝石のよく採れる地域には、魔法使いが多く集まるのが常だった。
特にルガウヌ王国のものは品質が高く、世界中から商人が買い付けに来て、主要な都市はいつも彼らの元気な声にあふれていた。
ルルの生まれ育ったリバールは、海を持つ街の定め通り大きな港があり、多くの商船が入っては宝石を積んで出て行った。
海岸から離れた高台にある家から、ルルはよくその光景を眺めていた。
濃い藍色をした海面が、穏やかに上下左右に揺れては光を返す。その上を様々な大きさ、種類の船がゆったりとした速度で水平線の彼方へ現れては消えていくのだった。
この海に続く異国に想いを馳せ、
「いつか行ってみたい」
と小さな少女はささやかな夢をみるのだった。