004.
彼女の周囲にいた魔法使いは、リバールの実家近くに住む、長い白髭の先を緑色に染めたおじいさんくらいだった。
そのおじいさんが使う魔法はとても穏やかな癒しの魔術だった。ルルはおじいさんが大好きだった。
彼の体から滲み出る温かな雰囲気は、そこにいる者を優しい気持ちにさせる。父親のいない彼女はどこかで彼に父性を感じていたのだろう。
ロシヌへ向かうルルに、おじいさんは一羽のフクロウをくれた。
それは、手のひらくらいの大きさで、明るいオレンジ色の翼を持っていた。
「わぁ、かわいい」
思わずルルは声をあげた。
「こいつはピィイというんだ。きっとルルの助けになるよ」
鳥かごのピィイは、真っ黒なまるい眼でパチパチと瞬きをしてから、小さな口をめいいっぱい開いてあくびした。
それを見た二人は顔を見合わせて微笑んだ。
「ピィイ、おいで」
部屋の隅に天井からぶら下がる専用の止まり木から、ピィイは小さな翼を広げ、流れるようにルルの肩へ乗った。
オレンジ色のおでこを人指し指でなでてやると、彼はまるい眼を気持ちよさそうに細めた。
指先に羽毛の柔らかさが伝わってくる。ルルは穏やかな笑みを浮かべながら、また窓の外の景色に視線を向けた。
彼女の指が離れたのに気づき、ピィイは眼をぱっちりと開いた。そして、片方の翼を広げせわしなく羽づくろいを始めた。
シーナは相変わらず規則正しい寝息をたてている。