003.
そして、晴れて入学許可を得て、ルルはこの春に「マラン魔法予備学校」へ入った。
彼女が今暮らしているこの寮は、地方出身者のために予備学校が用意したものであり、居住する全てがロシヌ以外から長旅を経てやって来た者達だった。
部屋は二人ずつの相部屋で、ルルのルームメイトがシーナだった。共に今年で十六歳だが、魔法の知識はシーナの方がずっと豊富だった。
なんでも知っているシーナにルルはきいてみたことがある。単純に、どうしてそんなに物知りなのか、というものだったがシーナは、
「だって、周りに魔法使いが多いからよ」
と、あっけなく答えた。
そして、
「わたしには、そういう血が流れているの」
そう言うと、大人の表情をしてルルを見たのだった。
その時のシーナは、未熟なルルに対して、既に立派な魔法使い然としていた。体の奥から静かにたぎる自信や意気込みが、彼女からほのかに感じられた。
ルルは、自分にここまでの覚悟があるだろうかと自問した。
母から魔法大学校への入学を勧められて、なんとなくその気になって予備学校へ入ったけれど、動機といえば“人の役に立ちたい”というささやかな望みだけだった。
最初はそれだけで充分だと思っていた。
魔法使いという存在がどういうものなのか、ルルには本当のところが、まだわかっていなかったのかもしれない。