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後ろのメリーさん  作者: 10.bi
着信アリ
8/34

1.8

「ひとと云う物は、すぐに物を忘れてしまうのね」

「それ程に様々な出来事に遭遇しているからね」

「その全てから学ぶべき事柄がある。だからね、全て覚えているべきなのよ」

「学びきったからこそ、或いは別に代用を見つけたからこそ忘れたのだろう」


 早苗の言葉に、メリーは心底呆れたように言う。

「私を忘れたことさえ正当化しようと言うのね」

「本当に君は、捨てられた?」

 あまつさえメリーの言うことを疑って掛かる。


 早苗には、人形を捨てた記憶がない。

 そもそも人形遊びの趣味は彼女にはなかった。数少ない少女らしい物は、四つ下の従妹にあげてしまったように思う。つまり人形を持っていたとすれば従妹の手元に行っただろう。となれば、捨てた人間の元に現れるメリーが早苗の元に現れるのはおかしい。


「もしかすると君は、勘違いをしているかもしれない」


 疑って掛かる早苗に、メリーは首を振るう。

「そんな筈はないわ。だって丹念に住所を調べたもの。私自身でね」

「それこそ間違いが起こりそうだ」

「そう言って難癖をつけて、逃げようとしているのでしょう?」


 メリーの言うことは間違っていない。

 得体の知れない相手を近くに置いておきたくはない。殺さないと云う気が変わらない保証はなく、遠ざけてしまいたい物だろう。勘違いで此処に来たとなればメリーが帰ることを踏んだが、上手くはいかない。


 メリーは、自らが怖れられていることなど微塵も気づかない。

 だから言うのだ。

「安心して良いのよ。私は貴方を殺しはしない」


 保障のない言葉に何を安心できるだろう。

 愚痴をこぼそうとした早苗に、メリーはポツリと漏らす。

 

「――理由は分からない。そもそもね、殺せないのよ」


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