1.6
「私にはね、住む場所がないの。だから住まわせて貰えると助かるわ」
「……ねえ、メリー。君はここをホテルのように使おうとしているだろう。いや住処だけでなく、食事も要求するつもりに違いない」
「よく分かったね。次にお願いしようと考えていたことはそれよ」
「だからね、念のため聞いておくよ。ホテル代わりに使おうとするが、ホテルは使わない。その理由はもしかすると無一文だからだったりするのかな」
「貴方、エスパー?」
早苗の想像の通り、メリーは金を持っていない。だから住処を必要としたとき、こうして頼む他はなかった。
悪びれるわけでもなく、むしろ胸を張る。当然と云うように言う。
「都市伝説たる私がお金を持っている方がおかしいじゃない。それは日本人相手にルピーを持っているかと聞くような物よ」
「それは、そうかもしれない」
それでは住処の見返りとして何も示さない物かとメリーに尋ねたい。
横暴な態度をとるにふさわしくはないだろう。泊めてくれと云うならば相応しい態度をとるべきだ。畏まることをしようとはしない相手に、早苗はどうした物かと首を傾げた。
「ねえ、それなら他に言うことはない?」
「言うこと?」
対し、メリーは小首を傾げた。
姿は見えずとも、メリーがそうして傾げる様を早苗は容易に想像できた。
「――ああ、そうね。貴方がホテル代を払えと云うのは分かるわ」
しかし、そうして答えを示すことは想像出来しなかった。
分かっていたのか。頷いた早苗に、メリーはでもねと反対に首を倒した。
「これはお願いよ。メリーさんから早苗へのお願い。分かるかしら?」
「脅しと云うわけ?」
「早苗、住処を提供して貰えるなら貴方を殺さない」
「……ずるいな」
渋々と頷く他はない。
早苗は首を縦に振るう。
仕草はメリーを笑顔にさせるが、メリーの顔が早苗に見えることはない。
「早苗、私も悪いと思っているのよ。だからね、することはするつもり」
「へえ、それは助かる」
「本当よ? お風呂掃除とご飯をよそるくらいなら出来るつもり」
「するたびに100円を上げたら良いかな?」
どうやらすることが少ないだろうことを察し、早苗は嘆息した。




