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後ろのメリーさん  作者: 10.bi
Life
33/34

2.15

 歩き、歩き。そして早苗が部屋に戻ったのは、7時半のことだ。

 することはなく、しかし随分と時間を過ごしたことに気付くのは部屋に戻ってからだ。そう長く歩いていた記憶はない。まさか歩きながら眠っていたと言うことはないかと我を疑い、わけはないと首を振るい、そして、未だ眠っている友を横に再度時計を伺う。


 用意周到に準備を済ませていた友を起こした物か、悩みどころだろう。7時半と言う時刻にまだ眠っていて良いのだろうか。しかし、起こしたところでアラームを掛けていると言われれば申し訳ない。迷った末、早苗は何もしない。


 友が目を覚ましたのはそれから30分後、8時のことだ。

 アラームの音はなく、友は自然と身体を起こした。欠伸を一つ。身体を伸ばそうとしてか、上半身だけを後ろに向けた後、時計を見る。


「時間、大丈夫かな」

「うん。大丈夫かな」

「そう。それなら良い」


 コンビニで帰ってきた朝食を差し出しながら早苗は言う。

 おにぎりが三つ。どのくらい食べるか分からないからと渡されたそれに「不健康だね」不満げに呟きながら封を開けた。


「それにしてもお姉さんは随分と早起きだね」

「たまたまだよ。いつもは昼過ぎまで寝ているくらいだ」

「もしかして私の寝相が原因、とか……?」

「どうだろう?」

 肩を竦める。


「ところで、どのくらいに此処をでるつもりかな」

「10時前、かな。寄り道をしたいし、帰ってくるのはたぶん4時くらいだと思う」

「寄り道? 買い物とか、かな。私が着いて行っていいなら付き合うよ」

 元よりその役目は任されてた物と早苗は考えていた。

 面倒臭がりな彼女にしては珍しい提案に友は嬉しげに頷く。

「それじゃあお願いしようかな」

「ああ、学校を見終わった辺りで連絡してくれれば行くよ」

 オープンキャンパスまで着いて行くことはない。

 連絡の手段が生きているか確認するために早苗は携帯を手に取り、充電の残量、マナーモードの設定を確認する。おそらく鳴るだろう、とそれをテーブルの上に放れば午後には居場所など忘れている。


「お姉さん」

 と、おにぎりを齧りながら友は言った。

「夕食もこれかな?」

 生活を案じたよう言う言葉の意図を察することなく、早苗は首を振る。

「流石に同じ物を続けると飽きる。別の物を選ぶよ」

「それなら、だけどさ。私が作ろうか?」

「生憎と冷蔵庫は空だよ」

「買い物のときに買おう、ね?」

「そこまで言うなら頼もうかな」

 食生活を問題と感じていないゆえにどこか偉そうな言葉だ。

 料理を趣味として持っているのだろうか。料理が好きなのだろうか。その程度の考えを抱き、首を傾げるのは失礼だろうに、しかし友は憤ることなく、やはり嬉しそうに頷く。


「それにしてもさ。普段からこんなものばかり食べていてよく体形を維持できるよね」

「こんな物とは何か。美味しいだろう、これ」

 早苗は好物のツナマヨネーズのおにぎりを手に言う。

 どうであれ不健康に変わりない。コンビニ弁当を食べては長時間眠っている。それで顔立ち、並びに体形が整っていることは、同性の友にとって不思議でしかなく、疑問を口にさせる。


 まあ、と食器棚を振り返り、早苗は言った。

「普段はこればかり食べているわけでもないよ。他人がくれる物を食べている」

 主にそれは先輩だ。部屋が隣だからと理由を口にしながら渡される食事により、早苗の食生活は人並みに健康な物といえた。でなければ必要のない食器類に埃は被っていない。来客者があることが理由か、お恵みがないことを理由にこうして弁当を頬張ることになっている。


「……良かったね。良いひとがいて」

呆れたように言う。

 他人に任せきりな生活は関心できた物ではなく、顔立ちばかりが大人びたことを感じさせる。親元にあり、親に食事を任せている自分と何ら変わりないことは、友を大いに呆れさせた。その先輩に会ったとき、きっと理由を言ってしまう程に。


 友は立ち上がる。二つの包装紙をゴミ箱へ、残った一つのおにぎりを何処に置くかと尋ね、指示により冷蔵庫へ向かう。開いた冷蔵庫が家主の言葉通りに空であることに目を細め、そうして幾度か呆れた後、出かける準備に取り掛かる。

 筆箱良し、コピーした紙良し。中身をざっと確認した後に時計を見て、時間に余裕があることを確認する。

「行ってきます、かな」

 自信なさげに言い、家を出て行こうとする。


「行ってらっしゃい」

 座ったまま言い、手を振った。

「さて、何をしようか」

 部屋に残された早苗は、そうして呟いた。


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