2.13
早苗は、相手を誰かと問う言葉ばかり向けられると構えていたが、風呂から出たときに彼女に問いが向けられることはなく、どころか言葉を掛けられることさえない。何故か。尋ねられないことに越したことはないが、その理由を不思議に思う。待っている間に熱が冷めたかと部屋に入ったとき、その理由に納得し頷いた。
友は部屋の壁にもたれ掛る様に眠っている。不安定に頭はこくり、こくりと揺れており、旅の中で抱いただろう疲れを感じさせる。車に乗っていただけとはいえ、長い間揺られたことで疲労がたまっていたのだろう。
手に携帯、筆記用具は握られていない。寝落ちと言うわけではないのだろう。判断するや否や早苗は従妹の目の前に立ち、こつと額を叩く。
「何をしている」
その言葉に直ぐに反応はない。友は眠たげに目蓋を擦り、そしてこくりこくりと頭を揺らしながらうわ言のように言葉を繰り返し、終いには理解することなく、早苗の言葉に首を傾げた。
「何してたって。えー。寝てた、かな?」
求められる答えを示しているだろうか。友は不安げだ。
「寝ていた? そんなところでか?」
友はその言葉こそおかしな物と思う。
彼女から見た部屋には他に眠る所はない。
早苗の敷いた布団。枕代わりになるか怪しいクッション。テーブル含む幾つかの家具。選ぶとすれば床に寝転がることと壁にもたれ掛ることで、そのうちの一つを選んだに過ぎない。
そして責めるように物を言われるとなると――。
「まさか寝ちゃダメ?」
「布団を使えよ」
「それはお姉さんに悪いよ」
「どうして? まさか寝相が悪いのか?」
違うけど。否定する言葉に、ならばと言う。
「ほら、さっさと寝よう」
早苗は布団に入り、手を招く。
「あー。そうですね」
姿は変われど中身に変化はないことを感じ、友はこくりと頷いた。




