表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
後ろのメリーさん  作者: 10.bi
Life
29/34

2.11

「荷物は適当な所に。部屋は荒らさなければ好きに触って貰って良い。……まあどこかに行くことはたぶんない。分からないことは聞いてくれて構わないよ」

「うん。二日間お世話になるね」

「大した振る舞いは期待するなよ?」


 早苗は、客用のコップを出しながら釘を刺す。

 片づけばかりを進めていたために出し忘れた物は幾つかあり、コップ、それに座布団代わりのクッション等をせっせと運ぶ。そのどれもが親に渡されてから一度も使っていない、埃の被った物だ。


 また片づけは杜撰な物であり、部屋の隅に物が積まれているだけだ。どうして時間が掛かったのだろうか、山を突きながら疑問に思うが、尋ねることはない。これは使わないだろうと山の検分をする。

 友の期待とは裏腹に目ぼしい物を見つけることは叶わず、ゴミのような物ばかりが目に入る。かと思えば教科書類が挟まっているのは、早苗にとってそれが同義であることに他ならない。


「何かあったかな?」

 クッションを叩きながら早苗は尋ねる。

「何かあったかと言われると、まあ」

「使う物があると困るし、捨てるのは勘弁願うよ」

「片づけのときに仕訳すれば良かったのに」

「まあ、待たせるわけにもいかなかったからね」


 メリーにそれが出来ないと言えたわけはなく。

「ほら」ぽいと投げられたクッションが友の元へ届く。


「他に必要な物はある?」

「うん。……どうかな?」

「まあ分からないか。追々出せば良いかな」


 結論付けて腰を降ろすと、途端に話はつまる。

 それまで話をしていた友は言葉を探し、忙しく部屋を見回している。話し掛けられないのであれば、と受けに徹した早苗が気を回すことはなく、どこ吹く風でぼうとする。

 二人きりの空間で無言が続くのは心地よい物ではない。かと言って話し始めるには如何せん空気が重く、解消できないだろうことを悟り、友は部屋の隅に置いたトランクケースを引き寄せた。


 そこから取り出されたのは、筆記用具とファイルだ。ファイルから取り出された紙に早苗は興味を示す。

「オープンキャンパスの日程?」

「うん。学校のサイトに乗っているみたい。学校から渡されてね?」

「それを確認とは、感心するよ」


 早苗が黙っていることを起因とした行動だが、何も言うまい。

 友はタイムスケジュールを流し見て、ときにチェックを入れる。そうした行動に、早苗はマジメだと終始感心した素振りを見せる。


 紙を見終わるのにはそう時間は掛からない。チェックを付けていても掛かる時間はそう変わった物ではなく、作業は直ぐ終わる。

 先ほどまでに比べれば空気は和らぎ、幾分か話し易くはなっただろう。しかし根が真面目なのか、友が手を止めることはない。

次いで取り出された紙に早苗は首を傾げた。

「大学の地図だよ」

 通っているのだから何となく分かるだろう、と友は呆れた様子だ。点々とした校舎の配置とタイムスケジュールとを合わせて見ると、「面倒なことをするな」同じく呆れたように早苗は言う。


「たぶん心配性なのかもしれないから」

「心配性?」

「お姉さんの家に泊めて貰うのも心配からだよ」

 電車がとまるかもしれないし、乗り遅れてしまうかもしれない。何があるかなど分かった物ではないと言い、友は肩を竦める。

「……まあ大抵の場合は、杞憂に終わるけれど」

「そう面倒なことばかり考えていて、いや感心するばかりだね」

「嫌味っぽいよ、それ」

「本心だよ。心配するべき事柄と目を合わせない性質だからね」

 真似をするように、早苗は肩を竦めながら言う。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ