2.2
やはりメリーは箸の扱いがなっていない。昨夜と打って変わり、蠅を掴めるほど箸の扱いに長けることはなく、部屋には唸り声が響いていた。そこは昨夜と変わっている。根を上げず、箸を扱い続けている。
ブロンド髪の少女が苦労する様は、見るひとに外国人らしいと印象付けただろう。文化に触れようとしている。そう感じさせるだろう姿は、早苗には見えない。
「あとどれくらい掛かる?」
「そう急かさないでよ。貴方のご飯はこれ以上は冷めないのだから」
「少しくらいなら良かったよ。でもね、君のご飯まで冷めきってしまっているとなれば別だ」
呆れたように言う。観念してスプーンを使えと勧める早苗に、しかし頷くことはない。
不器用ながら箸を扱い、残り半分下になった飯を食べようとする。白色の山は箸により切り崩されていた。崩れた米を掴む事は、メリーにとってつるりと滑る豆を掴むのと同じ程に難しいことだ。箸は動くが、進まない。
「全く日本人は阿呆ね」
「どうした。藪から棒に」
「なにが棒よ。棒切れ二本扱いご飯を食べる。芸を見せているつもり?」
「空腹を満たすだけで銭が貰えるか。それは美味い話だね」
「嫌な話よ。芸達者でなければご飯を食べられないなんてね」
「それは本質だろう」
「そうね。――ところで、早苗」
メリーは尋ねた。はじめ、早苗はとうとうスプーンを求められる物と考えていた。メリーの言う物はそれと違う。散々早苗がしてきたように、メリーは尋ねた。
「早苗はどうして食べているの?」
「物を食べる理由、ではないよね。仕事のことかい?」
「こうして暇を持て余していられる職業はなに?」
「なんだと思う?」
「それはあれね、箸の扱いを芸として食べているのでしょう?」
「学生だよ」
バイトをしていた、と付け足される。もっとも数十日の間行かなかったアルバイトをクビになっていないとは思えない。それゆえに口を大にしては言えず、していると言うこともまた出来ない。
「でもね、学生と云う割には、学校に行っていないように見えるわ」
「それじゃあ本業は親のすねかじりかな」
「案外ダメなひとなのね」
「案外、と言って貰えて嬉しいよ」




