2.1
カーテンから日の光が差し込む。小さな部屋を照らす光に、しかし家主は気付かない。新しく部屋に身を置いた者のみがのそり、と活動を始めた。
「カーテン、閉めていないのね」
恨めし気に窓と家主とを交互に睨む視線に、家主が気付くことはない。アイマスクにより目を覆い、外界を閉ざしたままだ。
ふと何時だろうと、メリーは時計を見る。
壁に掛けられたオードソックスな白い時計は、11時手前を指していた。
良い時間だ。若い女性二人が部屋で寝過ごすには勿体ない時間だろう。
「起こしても良いかしら……?」
その疑問に答える者はない。それはそうだろう。起こしても良い、と答えがあればそもそも寝ていないことになる。
メリーはよし、と頷いた。そして、いま出たばかりの布団の前に立つ。
「する後悔よりしない後悔と聞く。だからね、起こさせて貰うわよ?」
まるで許可をとるようにそう尋ね、メリーはひざを折り、早苗の顔に自らの顔を近づけていく。頭二つ分程だろうか。隙間を埋めようとするのは、メリーの両の手だ。両の手は次第に早苗の顔に近づいていき、ついには顔を覆う。
「早苗。ねえったら、ねえ?」
と、そうして掛けられた言葉に、ようやく早苗は目を開ける。
「おはよう、かな?」
「こんにちはかもしれない」
「全くアイマスクと云う物は、いけない物だね。まだ夜中の気分だよ」
「カーテンに隠れているからその間に日差しを浴びて来ると良いわ」
「それは助かる」
早苗は手を引かれ、窓際までつれて行かれる。まだよ、その言葉は次第に離れて行き、少しすると衣擦れの音があった。カーテンに隠れる音だ。メリーは布を身体に巻き付け、身体を隠す。早苗はアイマスクを外した。
果たして日差しを浴び、安堵したことはあっただろうか。夜を越えたことを嬉しく思うことがあっただろうか。早苗はホッとした面持ちでカーテンを見やる。どうやら真に危害を加えるつもりはないのだろう、と判断を下す。
何もするつもりはない。昨夜から幾度か考えたことは根拠がなく、朝を迎えたことは小さいが根拠となり得るだろう。満足し、そして頷いた早苗はカーテンに呼びかける。
「朝飯を作ろうか。アイマスクを受け取って貰えない?」
「ええ、良いわ。もうお腹が減って仕方ないの」
嬉々とした声色でメリーは言った。




