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後ろのメリーさん  作者: 10.bi
Life
18/34

2.1

 カーテンから日の光が差し込む。小さな部屋を照らす光に、しかし家主は気付かない。新しく部屋に身を置いた者のみがのそり、と活動を始めた。 


「カーテン、閉めていないのね」

 恨めし気に窓と家主とを交互に睨む視線に、家主が気付くことはない。アイマスクにより目を覆い、外界を閉ざしたままだ。

 

 ふと何時だろうと、メリーは時計を見る。

 壁に掛けられたオードソックスな白い時計は、11時手前を指していた。

 良い時間だ。若い女性二人が部屋で寝過ごすには勿体ない時間だろう。

 

「起こしても良いかしら……?」

 その疑問に答える者はない。それはそうだろう。起こしても良い、と答えがあればそもそも寝ていないことになる。

 メリーはよし、と頷いた。そして、いま出たばかりの布団の前に立つ。

「する後悔よりしない後悔と聞く。だからね、起こさせて貰うわよ?」

 まるで許可をとるようにそう尋ね、メリーはひざを折り、早苗の顔に自らの顔を近づけていく。頭二つ分程だろうか。隙間を埋めようとするのは、メリーの両の手だ。両の手は次第に早苗の顔に近づいていき、ついには顔を覆う。

「早苗。ねえったら、ねえ?」

 と、そうして掛けられた言葉に、ようやく早苗は目を開ける。


「おはよう、かな?」

「こんにちはかもしれない」

「全くアイマスクと云う物は、いけない物だね。まだ夜中の気分だよ」

「カーテンに隠れているからその間に日差しを浴びて来ると良いわ」

「それは助かる」

 早苗は手を引かれ、窓際までつれて行かれる。まだよ、その言葉は次第に離れて行き、少しすると衣擦れの音があった。カーテンに隠れる音だ。メリーは布を身体に巻き付け、身体を隠す。早苗はアイマスクを外した。


 果たして日差しを浴び、安堵したことはあっただろうか。夜を越えたことを嬉しく思うことがあっただろうか。早苗はホッとした面持ちでカーテンを見やる。どうやら真に危害を加えるつもりはないのだろう、と判断を下す。

 何もするつもりはない。昨夜から幾度か考えたことは根拠がなく、朝を迎えたことは小さいが根拠となり得るだろう。満足し、そして頷いた早苗はカーテンに呼びかける。


「朝飯を作ろうか。アイマスクを受け取って貰えない?」

「ええ、良いわ。もうお腹が減って仕方ないの」

 嬉々とした声色でメリーは言った。

 

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