1.17
「布団はどうしようか?」
布団を部屋に敷きながら、早苗は尋ねた。
部屋に布団は一つしかないし、代わりになる物はなかった。もしも相手が客人ならば布団を譲っただろう。これから同居人となるメリーにはどうした物かと思い、早苗は尋ねた。
「そうね、私は左を向いて寝るから、左が良いと思う」
「何の話をしている」
「布団のどこに身体を置くかと云う話。違った?」
「……いや、それで良いか」
返事を待たずして布団に倒れ込むメリーに、早苗は頷いた。
どちらかが布団の外で寝るよりは、これが良い。
メリーは掛け布団を被り、膨らみを作る。行動は子供のようだ。人形と云うより妹ととれる行動に、早苗は苦笑する。
「アイマスクを付けたままは寝づらいだろう。私が付けるよ」
メリーの寝相の良し悪しは分からない。それよりは信用できる寝相に早苗が提案すると、メリーは嬉しそうに了承した。アイマスクの付け心地に慣れない物があったのだろう、すぐに黒色を投げ捨てる。顔を隠しているのを良いことに、アイマスクを外していた。
床に落ちたそれで目を多い、早苗は布団に入る。そして布団に入った途端、メリーはねえ、と声を掛けた。
「夜を語り明かしましょうか」
「それは、恋バナでもするつもりかい?」
「いいえ。お互いのこと、よく知っておきたいでしょう?」
お見合いね、と早苗は頷く。
確かにメリーの言う通り、メリーについて知っておきたいことはまだある。
人形であったこと。都市伝説であること。目を合わせると死ぬこと。
メリーに聞かされたこと、分かったことは、まだ彼女の一部分にも満たないだろう。着信に名前を映した件について聞いていない。どうして番号を知ったかもまた、聞いていない。早苗には尋ねたいことがある。
しかし――。
「ねえ、早苗」
呼びかけに答える声はない。
「もしかして寝ている?」
すっかりと疲れていた早苗は、睡眠に落ちていた。
メリーは不満に頬を膨らませる。
ぶうと膨らませた頬をそのままに、そして考える。
いつまでこうしているのだろうか。
「……殺すことは出来ないのに、ねえ?」




