1.15
ミロのヴィーナスに両腕があったとき、果たしてそれは称賛されただろうか。
両腕を付けた女性は、世界から評価されただろうか。
欠損しているからこそ美しいと言う者がいる。
両腕がなくしたことで評価を得たと言って過言ではないと考える者がある。
幾ら語ったところで真偽は分からない。確かめる方法はない。
早苗は唾を呑む。彼女の視界には、少女が映っていた。
メリーだ。一糸纏わぬメリーの身体に、早苗は欲情する。
メリーの身体は、早苗の知る芸術品よりもなお美しい物だ。
病的なまでに白色の肌は赤子のように柔らかく、また幼さを感じさせる肉付きを持っている。髪は長い。肩甲骨ほどまで届く髪色は、日本人ではないのだろう、ブロンド色だ。子供らしさを残した身体は凹凸が少なく、そして顔は分からない。
どれだけ美しい物だろう。頭の先からつま先まで下った視線はまた上へ行く。見えなかった顔をどうしても見ようとするように再度見た顔は、変わらずにアイマスクに覆われている。
アイマスクがあるからこそ完成されているのか。
それともアイマスクがなくとも美しいままだろうか。
ミロのヴィーナスと異なるのは、真偽を確認できる点にあるだろう。
アイマスクを外せば良い。事実の確認は容易だが、早苗には出来ない。
早苗がそう出来るのは、死にたくなったときだけだ。
顔を合わせたとき、命を落とすことになる。
そうと分かっていても見たいと思う程、早苗はメリーの身体に恋に落ちていた。




