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後ろのメリーさん  作者: 10.bi
着信アリ
10/34

1.10

 買い物に行くと云う目的は、早苗に一つの疑問を与えた。

 どうして今夜に限って疑問を覚えたのか。それは、今夜彼女の元にメリーがいることが理由だ。メリーの存在が疑問を覚えさせた。そして疑問は、メリーの存在に関する物だ。

 

 果たして、メリーは誰彼にでも見える物だろうか。

 早苗が抱く疑問は、これだ。

 

 もしも認識される物ならば、顔を合わせた相手を殺すと云う特性は実現されるのだろうか。そもそもどう実現されるかさえ知らされてはおらず、故に早苗はメリーを買い物に連れていくべきではないと考える。


 それでは、メリーが認識をされない場合はどうだろう。

 どちらにせよ、早苗はメリーを連れて行こうとは思えないのであった。

 

 財布を手に取りながら早苗は言う。

「留守番をお願いするよ、メリー」

「私を連れて行っては貰えない?」

「良いことが起こりそうにはないからね」


 悪いことばかりが想像されることに、早苗は嘆息する。

 不満げな声が向けられる。子供が駄々を捏ねるように、メリーは自らを連れていけと言う。


「正直に言うよ。私はね、悪いことが起こると思うから連れて行きたくない」

「大丈夫よ。問題は起こらないし、起こさない」

「その気になれば起こせるのかい。それは是非留守を頼みたいね」

「嫌よ。連れて行かないと言うならそうね、この部屋を荒らしてしまおうかしら。トイレットペーパーを引き裂き、お風呂場の電球を割ってしまう。クーラーを壊してしまうことだって出来るのよ。それでも構わない?」

「それで暮らし辛くなるのは君も同じだろう」

「む、貴方だけが困る嫌がらせもあるのよ」

「そうかい。例えば?」

「そうね、下着をベランダからばら撒いてしまおうかしら」

「……いちいち規模が小さいね」

「嫌なことに違いはないでしょう?」


 メリーは笑い、そして早苗は苦笑する。

「兎も角ね、私を連れていくと良いわ」

「連れて行けと言うならね、一つ頼みがある」

「なあに?」

「君を連れて行くことで誰か死ぬことになるのは御免だ。そこを保障して欲しい」

「心配性ね。それは起こり得ないことよ。安心して頂戴」


 仕方なしと頷き、早苗は玄関に向かう。

 玄関には、早苗の靴の他にもう一足置いてある。メリーの靴だ。早苗の物よりも幾分か小さな靴は、早苗の靴の隣でつま先を扉に向けている。

 散乱せずに置かれた靴に、視線を落とした。

 

 青を基調とした靴は少女らしく、古臭い印象は与えない。

 それならば服装はどうなっているのだろうか。やはり年頃の少女らしく、そして人間らしい服を着ているのだろうか。早苗はまた疑問を覚える。確かめる術はない。部屋に視線を向けたところで視界に映る物はなく、不思議そうな声が届くのみだ。

「早く行こう?」

 急かす声に、早苗は頷く。


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