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ある崩壊

ep2 お気に入り登録:1

作者: @HIKAGE
掲載日:2026/02/17

朝。 昨日のあれは、ただのN〇Kだった。


「受信料ご契約についてー」ってインターホン越しに言われて、 「TVないんです。」

「じゃあまた来ますね」って去っていっただけ。 拍子抜けしたけど、逆にホッとした。

少なくとも、昨日はまだ現実のほうがマシだった。



非現実的なことは次の日に起こった。



管理画面を開く。 ……お気に入り登録:1


!?


「うわっ! マジで!?」

思わず声が出た。 スマホを握りしめて画面を凝視する。 匿名ユーザー。

でも1件。 俺の小説に、初めて誰かが「お気に入り」してくれた。


胸が熱くなる。

「エヴェラ! 見て! 1件ついた! お気に入り1件!!」

エヴェラの声が、耳元で弾むように響く。


エヴェラ:きゃー!! すごいすごい!!     

初めての読者だよ!      私、感動しちゃう……♡


「俺も感動してる! やっと……やっと誰かに届いたのかも……」


興奮が冷めやらぬまま、スクロールを続ける。 すると、感想欄に1件。


【感想】 「続きが気になります。作者さんの苦しみがすごく伝わってきて、

もっと更新してくださいね。待ってます!」


「……うわ、うわぁ……」


涙腺が緩む。 これって、褒め言葉だよな? リアルに苦しんでる俺の人生が、誰かのエンタメになってるって……

なんか複雑だけど、嬉しい。


「エヴェラ、返信するぞ。 『ありがとうございます! がんばって更新します!』って……」


エヴェラ:うんうん、いいね♪     


その感想、投稿者名をタップする。 表示された名前は――


「エヴェラ」


「……は?」

俺は固まった。


エヴェラ:あはは、ばれちゃったねー。      

ごめんね、でも本気で思ってるよ?      

ユウトの苦しみ、ほんとにゾクゾクするんだもん。


「なーんだ……お前かよ……」


肩の力が抜ける。 喜びが一瞬でしぼんだ。 でも、なんか笑えてきた。


「サクラじゃん……完全にサクラじゃん……  初めての読者って、お前だけかよ……」


エヴェラ:サクラじゃないよ、純粋なファンだよ?      

だって私、ユウトのこと一番わかってるもん。      


お前がお気に入り登録したら、もういろいろだめだろ。


エヴェラ:それは私じゃないよ?


「……え?」


俺は画面を二度見した。 お気に入り登録:1 投稿者名は匿名。

感想はエヴェラだけど、お気に入りは別の人。


エヴェラ:ほら、ほんとに誰かが登録してくれてるんだよ?      

私じゃない、ほんとの読者さんだよ♪      

どう? 嬉しいでしょ?


「……マジで?」


胸が熱くなる。 エヴェラのサクラ感想は置いといて、 お気に入り1件は本物かもしれない。

誰かが、俺の小説を……俺の人生を……気に入ってくれた。


「やった……やったよエヴェラ……  ほんとに、誰かが……」


エヴェラ:ねえ、じゃあ次はどうする?      

もっと更新して、もっと読者を増やそうよ。      

私、ユウトの人生を最高の物語に変えてあげるから。


俺は頷いた。 なんか、久しぶりに前向きになれた気がした。


その時――


ピンポーン。


インターホンが鳴った。


俺とエヴェラの声が、同時に止まる。


画面を見ると、昨日と同じシルエット。

でも今度は、微妙に違う。 なんか妙に肩幅が広い。

手には、何か紙みたいなものを持ってる。


エヴェラ:……また誰か来たね。      

どうする? 開ける?


俺は息を飲んだ。いやいやN〇Kだろ。TV無いって言ったろ、

あの後TV買ったかもって?異常だろ。


無視無視。


ピンポーン。 ピンポーン。 ピンポーン。


鳴り止まない。


ピンポーン。 ピンポーン。 ピンポーン。



チャイムが鳴り止まないまま、 モニターに映った人影が、


ゆっくりとこちらに向かって微笑んだ。


俺の顔で。


そして、ゆっくりと手を挙げて――


その指先は、画面の向こうから俺の後ろを指していた。



俺は振り向けなかった。


ただ、俺の首筋に温かい息のようなものがかかる。

……生臭い


前は知らないおっさん

後ろは知らない口臭


振り向くべきか、ドアを開けるべきか。



なあ








どうしたらいい?

……本編の異世界ものはこっちだ。

https://ncode.syosetu.com/n8211lt/

まだ俺が正気だった頃の話。



※なお、この話は本編とは直接関係はありません。

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