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自己紹介

作者: N

 『社会不適合者』という呼び名があるが、自らこの名を語る者は「濁ったこの世界に染まりたく無い、別の感性を持った特別な存在でありたいと願う者である」と定義付けたい。これは皮肉でも苦言でもない。なぜなら僕自身がそうなのだから。心のどこかで、何者かになりたい、何かに縋りたいと、救いを求めている。


 人生観について考えるようになったのはいつからだろうか。おそらく初めての転職を心に決めた時だろう。社会人5年目となり、年齢は27歳。年相応の落ち着きと経験が求められる。様々な言い訳を用意したが、結局は責任から逃れ、自由になりたくて退職した。そこから次の仕事に就くまでは、いわゆるニートというやつで、まあ何とも素敵な時間だった。好きな時間に起床し、好きな物を買い、散歩し、本を読み、タバコを吸い、好きなだけ寝る。こんな日が続けば良いのにと願う反面、続けるためにはお金が必要で。この世界はよく出来ている。一巡りして「仕事」の必要性にまた気付かされる。これが今、僕が仕事をする理由だ。


 「誰かを笑顔にしたくてー」「幸せな時間を作ってあげたくてー」転職面接では思ってもいないことを平然と口にした。この偽りを演じる技術レベルは高い方だと自認しているからこそ笑えてくる。事実、面接まで漕ぎつければ内定まで落とされたことは一度もない。第一印象なんてものは、相手の求めるキャラクターをほんの数分演じていれば良いのだ。僕には詐欺師が向いているのかもしれない。因みに座右の銘は『やらない善より、やる偽善』である。小説で出てきたこの一文に心打たれた瞬間は今でも忘れられない。まさに僕の人生観に直結する名言だ。もちろん、面接は『努力は嘘をつかない』で一貫した。


 年齢を重ねるにつれて、日々の生活の中で『演じる』ことが自然と多くなり、少しずつ『本当の自分』を見失いそうになり、一度立ち止まり、しかし立ち止まっていられる時間は少なく、また『演じる』。この繰り返しに心身が疲れてしまう。演じる回数を減らしたくて人付き合いを極限まで少なくするが、どこか素の自分を受け入れてほしいという欲も拭えず、いや、希望が捨てきれず、時々人が恋しくなる。僕は病気なのだろう。冒頭の『社会不適合者』が僕の病名にピッタリだと思わないか。


 そんな病気と奮闘の最中、この気持ちを突然文字に起こしたくなり、今こうして文章を書き連ねている。共感を求めているのか、真実を告白したいのか、書いている理由は今でも不確かだ。しかし、文字というものは摩訶不思議で、普段口に出せない思いの丈を、文字に起こすとそれら全てが許されているような心地よさを感じる。この世にラブレターや遺書という文化が根付いていることも、少しは納得できる。


 今は人生二度目の転職を考えている。再転職したところで何が変わると言うのだろうか。しかし、何かが変わると信じたい。分かっている。また同じ事の繰り返し。このままでは、ますます病気は悪化していく。望むところだ。かかってこい。僕はこの病気と共に、僕という存在価値を見出していこうじゃないか。

 

 僕の自己紹介はこれでおわり。こんな僕がこれから描いていく物語を、どうぞよろしくお願いします。

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