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5話

世界の飯は、安くてうまい。


予想外の訓練にへとへとになり道場を後にしてしばらく。

屋台の謎肉の串焼きを手に魔法具店へ向かっていた。

今日の串は何と"何かの尻尾"。圧倒的インパクトのビジュアルからは想像もできないほどやさしく淡泊な味。

対するたれはガツンと強く。辛めの刺激も相まって抜群の相性を誇っていた。

食べる。食べる。食べる。

若い体は屋台で買った謎肉をほおばるたび実感できるレベルで回復していく。


いやぁ、若さってすごい。


土日丸二日寝て過ごしても一週間の疲れが取れなくなっていた三十代の肉体との差異に、思わず苦笑する。

周囲には肉体労働者たちをターゲットにした屋台が放つ脂と香辛料のにおい。

ふらふらとそちらに足が吸い込まれていく。


あぁ、だめだ。これも若さゆえか……。


さらなる買い食いを誘ってくるが、ここで財布の紐を緩めると今後の生活に響く。泣く泣く、誘惑を断ち切るように足を速めた。



◆◆◆


大通りから2、3本入った裏路地にその店はあった。

魔法店"ルガ・アソレイエ"

確かに日が差しているはずなのに、なぜかこの店の前だけ影が濃く感じられる。

ごく自然に、周囲の家や屋台が少し距離を置いて建っているのも、奇妙ポイントの一つだ。

店の前はきれいに清掃され、外観もまっさらで清潔そのもの――――なのに、どういうわけか怪しさが漂う。そんな店。

――なんで店の前で待ってるんだ。


「へ、へ、へ。……あ、アルカちゃん。……きっと、来ると思って……待ってたよぉ」


日中にもかかわらず全身を包む黒ローブ。加えてその口調、背の高い体を小さく縮めるような猫背。

それらが合わさり発する空気は完全に陰の者だ。

ぼさぼさのウルフカットからのぞく横顔は、色素の薄い髪と青白い肌。目の下の濃いクマがいやでも目を引く。たとえローブの奥に隠れていても、ひと目で細身と分かる。


本人は目立つつもりがないのか、どこか所在なさげにうつむきながらも、妙に存在感があった。

年のころは20前後だろうか、フードから除くその顔は間違いなく整っている。

何なら、彼女目当てで店に通うものがいてもおかしくないほどだが、相変わらず店内には人気がない。


店主、アソレイエ・サフィーナ。


この街有数の魔導具師にして魔女、そしてマッドサイエンティストな女である。


◆◆◆


店に入るなり出された、お茶――色は緑茶のくせにやたら甘い――謎茶が湯気を上げている。

謎茶が冷めるのを待ちながら、店主――サフィーナが使い魔を様々な機器にかけているのを観察していた。


「あ、あぁ~。……こ、これは完全に、い、いっちゃってるねぇ」


使い魔を点検していた、サフィーナは俺にそう告げる。

相変わらず、少し陰気でとぎれとぎれな話し方だ。店の照明もそんな店主の気性を現したかのように細い炎が揺れていた。


「やっぱりか……。すまんなサフィーナ。配信が途切れて焦ってな。魔力直で流してもうてん。」


だめかも?と思ってはいたが、告げられたその言葉に俺はがっくりと肩を落とした。


「へ、へぇ~。……ば、爆発、しなくてよかったね……あ、あと、サフィ、でいい、よぉ?」

「マジで爆発する可能性あったんやな。サフィ?」

「へ、へ、へ」


独特の笑いを返し、サフィーナもといサフィはこちらへ向き直った。


「ど、どうする~?……こ、この感じなら、修理するのも、買いなおしでも、あんまり変わんないかも。……ち、ちょうど、グレン魔法具店から新作が――」


慌てた様子でごそごそとチラシのようなものを漁るサフィーナ。

俺は、机上に転がった配信用使い魔をぼんやりとつめていた。


――なんだか、寂しいものがあるな。

まぁ、なんだかんだ、この使い魔もずっと一緒にやってきた。

使い勝手もわからない配信初期から一緒にやってきた仲間だ。

魔法的に生み出された半生物とは言え、愛着がわいている自分がいた。


「修復、できるか?やっぱちょっと愛着わいてん。」


俺の言葉にびくり、身を震わせたサフィーナ。

驚いたようにこちらを見やると、そっと使い魔を拾い上げた。


「ひ、ひ、ひ。で、できるよぉ……う、うれしいな、うちの子、大切にしてくれて」


その顔にはわずかに喜びが浮かんでいた。

使い魔をひと撫で、ふた撫で。口元に不器用な笑みを浮かべたまま、サフィがぐっと体を乗り出してくる。

――思ったより距離が詰まり、慌てて身を引くのが実にらしい。


「そ、それでね。あ、アルカちゃん、に耳寄り……情報があり、ます」


いつもは少し眠たげに閉じられた瞳が、爛々と輝き始めた。

どこか渦を巻いたような虹彩が、こちらを惑わすように揺れる。――サフィがお願い事を始めるときの合図だ。

普段、サフィとは目が合わないが、こうやってお願いするときだけ目を合わせてくるのだ。

この目に騙されて、結構散々な目に合ってきた。ヒートアップ回復薬、魔物忌避剤、etc。


ひどい目にあった過去のもろもろを思い出して、遠い目をしてしまう。


「あ……い、いまなら、なんと。えっと……配信使い魔をグレードアップ、でき、ます!」


でん!と使い魔を掲げながらそういう。

修理だけでなく、アップグレード。俺にとっては何とも都合のいい話ではある。

こちらが答えないことに焦ったか、サフィは手元の使い魔を揉みしだきながら説明を始める。


「へ、へ、へ……あの、ね、グレードアップ……できるんだよぉ……。えっと、音質も、画質も、きっと、うん、すごく上がるし……。それで、知能も、きゅ、きゅっと上がって……前より、いっぱい考えられるように……。それにね、あの、魔力の消費も、ちょっとだけど、うん、抑えられる、はず……。い、いろいろ、全部……盛り盛り……だよぉ……」


つっかえつっかえながらも、一息にそう言って、また「へ、へ、へ」と誤魔化すように笑った。


「……随分、ええ話しやな」

「あ、あの、ほら……最近、偶然、……素材、良いのが、手に入ったから……ふ、ふ、ふ」


また笑いながら、奥から取り出した素材を見せてくるサフィ。

素人の俺が一目見てわかるほど、高価な素材だ。すべて店で買おうとするといくらになるか。


話がうますぎる。


世の中には報酬には対価がつきものだ。ただの善意でこれらの素材を提供してくれるわけではないだろう。

こんなのでも、サフィはれっきとした商人だ。


「何をさせようっちゅうんや?犯罪はお断りやで」


すっとサフィの目を見つめ返す。

とたん視線をそらし、わたわたとし始めた。


「え、い、いやいや!。……そ、そんなことないよぉ。その……か、代わりに……あ、アルカちゃん、の配信で……ウチの商品……せ、宣伝して?」

「宣伝?」

「そ、そう!」


伝わったと思ったのか、再度ぐっと乗り出してくる。いっそう瞳が渦を巻く。

宣伝――この場合、配信的に言うと商会依頼という奴だ。

名の売れた配信者なんかはいくつもやっているらしい、あれか。


「へ、へ、へ。……いま、ね……た、探索者向けの……爆薬作ってる……新型の。」

「爆薬ぅ?」

「う、うん。……結構、お、おっきな一発が、欲しいみたいな、依頼……多くて」

「あぁ、なんとなくわかるわ」


魔物に対して火力が足りなくて"詰む"というのはありふれた話。

なんとか逃げられれば御の字、そうでなければ待っているのは死の未来だ、


「で、で……新型、作ったの。……小型、高火力の、やつ」

「……大丈夫なんかそれ。高火力ちゅうても、自爆前提やったら意味ないやろ。」

ぎらり、とサフィの瞳が輝く。しまった!と思ったが、後の祭り。とっさに俺は俺は耳を伏せ、聞き流す体制にはいる。

照明の炎が急に輝きと動きを増し始めた。――サフィのテンションと連動でもしているのだろうか。

頬がみるみる赤くなり、机越しにぐっと身を乗り出してきた。

くわっと目を見開き、今までの口調が嘘のように言葉の洪水を吐き出し始める。


「そ、そうなんだよぉ!今までも、こういった爆薬みたいな商品はいっぱいあったんだけどね?どれもこれも、火力が足りないか、ただの自爆かどっちかだったんだよぉ!意味ないよねぇ!ほんっと凡百の魔導具師は結果ばっかり重視して作るものに美しさがないんだよ!」


喋っているうちにヒートアップしてきたのか、どんどん口調は早く、声が大きくなっていく。

――音程が不安定で聞き取りづらいのが、らしいというか。

こうなったら止まらないのは、短い付き合いながらも把握している。


「その点、ウチの爆薬は画期的でねぇ!なんと!魔力を込めることによって爆発に指向性を持たせることができるようにしてるんだよぉ!そうすることで、単なる自爆から起死回生の一撃にまで爆発を昇華してるんだ!量を調整することで、日々の攻撃のアクセントにもなって――」

「わかった、わかったから!サフィの爆薬はすごいって話やな!?」

「あ!アルカちゃん分かってくれるのぉ!?やっぱり、ウチの製品を理解してくれるのはアルカちゃんだけだよ。うぅ…。でね!?――――」


全く聞いていない。

――こうなるともう止まらないな。


さらに熱を帯びていく語りに、適当に相槌を打つマシーンと化す。

冷静に観察してみると、わたわたと好きなことについて話すサフィは、そのビジュアルと何よりも熱も相まって、非常に魅力的に映る。


こういう"語れる"ものがあると、配信的にもおいしいだろうか。

だがまだ俺は異世界幼稚園生、そんなに語れるものがない。中途半端な知ったかは自分の首を絞めるだろうし――

いっそうヒートアップしていく様を見ながら、冷めてきた謎茶をすすり、さらに耳を伏せた。


「……………ご、ごめんねぇ。つい」


落ち着いたサフィが、その体をさらに縮こまらせながら誤ってくる。

その顔はローブに隠されているが、真っ赤になってるだろうことは想像に難くなかった。


「ええよええよ。好きなことは語りたくなるもんなぁ。こっちも宣伝する商品のことは、よう知っときたいしな。」

「……宣伝、してくれるの?」


ローブからちらりとこちらをうかがってくる。

――なんだこれあざとかわいい。


「ま、悪い話やないしな。いい製品なら配信的にも映えそうやし。もう完成しとるんか?」


瞳を丸くし、嬉しそうに笑う。


「ひ、ひ、ひ。あ、アルカちゃんありがとぉ。……完成、は…もうしばらく……はかかる、と、思う。」

「なんや、えらい気ぃ長い話やな。完成してからでよかったんとちがうか?」

もうすぐにでも、宣伝となるかと思いきや、製品の完成まだらしい。

「へ、へ、へ」


想像と違った展開に俺が首をかしげていると、また、怪しく笑い始めた。


「あ、アルカちゃん……最近人気出てきてる、から。……先に、予約し、しとかないと、なぁって。へ、へ、へ」


サフィの笑い声が途切れた瞬間、謎茶の湯気が静かに消えていく。

固まってしまった俺は、何とか喉の奥から言葉を絞り出した。


「……お前まさか、配信、見とるんか」

「ひ、ひ、ひ」


ローブの奥から顔をのぞかせ、サフィがにやぁと笑う。


「いつも楽しませてもらってるよぉ。こ、これも虚狐様のご加護だねぇ」

「ぐっ……!」

――こ、こいつ!


血の気が引く感覚――。

まさかこの間の黒歴史配信も、全部見られて……?――もしかして地獄の初配信も?

ぐるぐると思考が迷う。勢いに任せて口まで出かかった文句を、無理やり飲み込んだ。


「……応援、ありがとうな。仕事も受けるわ、正直助かる。」

「――!い、いいよぉ!私もアルカちゃんを応援したいしねぇ!」


おぉ、めっちゃテンション上がったな。


再度使い魔を手に取り揉みしだき始めるサフィ。いつになくその顔は血色がいい。


「つ、使い魔はグレードアップしとくねぇ!う、ウチの宣伝配信までにもっと視聴者増やそうねぇ!」


若干早口になりながもご機嫌なサフィがトントン拍子に手続きを進めていく。

使い魔の修理、強化に1週間。宣伝配信はもう3か月程度先らしい。

もろもろの準備を終え、回復薬等の消耗品を補充した俺は、サフィに見送られ魔法具店を後にする。


「ひ、ひ、ひ。アルカちゃんまたねぇ。」


わざわざ、店前まで見送りに出てきたサフィはいまだにテンションが高い。


「あぁ、またよろしく頼むわ。」

「へ、へ、へ。ありがとうねぇ。あ、こ、こんこんこんこーん!」


唐突に黒歴史ネタを突きつけられ、バランスを崩す。


「ぐっ!!おまえ!!」

「へへっへっへ」


いつも以上の謎笑いをしながらバタンと扉の向こうにサフィは逃げて行った。

行き場のない羞恥が苛む。

顔が赤くなっていることは百も承知だ。この顔を見られなかっただけましかもしれない。


慣れろ、俺。配信者を続けていくならこんなの日常茶飯事。むしろ誇っていくべきことだ。


「はぁ」


癖になったため息をひとつ。尻尾を軽く撫でて心を落ち着かせ、路地裏の冷えた空気に顔を冷やされながら歩き始めた。


◆◆◆


喧騒からは離れつつも、不便さは感じない。そんな絶妙な立地に、俺の定宿――宿屋「波間の灯」はあった。

一階の飯屋兼酒場は今夜も盛況のようで、扉を閉めていても賑やかな笑い声や歌声が外まで漏れていた。

扉を開ける。焼けた肉やスープの香り、酒場特有の湿った熱気が肌を包む。

あぁ、帰ってきたって感じがする。


「お、アルカ!お帰り!無事だったんだね」


てきぱきと配膳をしながらも、この宿の女将さん――セラさんが手を振ってくる。

せわしなく客をさばきながら、こちらへ快活に挨拶をしてくれる。


「女将さん、ただいま。何とか生きて帰ってこれたわ」

「結構お疲れみたいだけど、今日はどうする?働いていくかい?」


部屋を優先的に押え、宿代を少しまけてもらう代わりに酒場を手伝う。

ここに泊まり始めてから変わらない取り決めだった。


「せやね。頑張らせてもらうわ」

「了解了解!着替えといで!今日は忙しいよ!」


部屋に戻り手早く装備を整理していく。時間もないので手早く汗をぬぐい、制服を手に取り着替える。

鏡の前でくるりと回る。狐耳美少女、町娘スタイル。女将お手製の制服は、派手さはないけど素朴にかわいらしい。

――だがスカートだ。


この“下だけ寒い”感じは相変わらず落ち着かない。これも慣れだ。慣れろ俺。


異世界、戦闘、配信もそしてこの体もそうだった。そう自分に言い聞かせながら階下へ向かう。


「来たね!これ!探索者揚げ、4番ね!今日はシュラウスだよ!」

「はいよ~」


すぐさま盆を渡される。毎回使っている肉の違う、から揚げのような何かが山盛りになっている。


シュラウスということは、あの飛ぶダチョウみたいなあいつか。鶏肉と言えば鶏肉である。


「はい、おまたせ~。ご注文の品やで。今日はシュラウスや。あたりやな。」


適当なことを言いながら配膳をしていく。

愛想よくフレンドリーに。キャラクター設定は気安い親戚の娘をイメージだ。


「おぉ!久々にアルカちゃん見たな!こりゃラッキーだ!」

「おひさやで、おっちゃん。ちゅうか飲みすぎたらあかんって、いつも言うとるやろ。」


機嫌よく笑いながら杯を進める常連のおっちゃん。ほぼ毎日来ているお得意さんだ。

毎回、景気よく酒を煽っては人懐こく話しかけ、そうして毎回飲みすぎだと叱られている。


「がはは!言ってもらいたくて飲んでるからな!」

「そういうことばっか言うて。ちゃんと飯も腹に入れるんやで!」


軽くその禿頭に突っ込みを入れると楽しそうに笑い、また飲み始めた。

別の笑い声に、狐耳が反応する。

カウンターの上、壁に掛けられた大きな魔導版――この世界なりの“テレビ”――には、どこかの酒場を舞台にしたバラエティ番組が流れている。

何処の世界でも、バラエティで流れる笑い声はどこか空々しい。


そう――もろテレビである。この世界の文明は本当にどうなっているのか。


いまだに馬車や竜車なんかが移動手段で使われるくせに、テレビ、スマホ、配信なんてもんが存在する。

この世界の技術ツリーはどうなっているのか。魔法と科学で得手不得手が違うのか。


――そんなことを考えボーっとしていたのがいけなかったか。


配膳の合間、見知らぬ男が尻尾に手を伸ばしてきた。条件反射で尻尾がピクリと跳ね、うまくすり抜ける。


コイツ――!


俺が声を上げるより、男が舌打ちするよりも早く、女将が盆を持ったまま一直線に近寄り――

バシンッと一発、盆で男の頭を小気味よく叩いた。


「こら!ウチはそんな店じゃないよ!ヤリたきゃ別の店に行きな!」


上げかけた声の行き場がなくなり喉の奥に飲み込まれていく。


周りの喧騒をかき消すほどの大声で威圧する女将。いつもの朗らかさが嘘のような剣幕に慌てて男は謝罪する。

静まり返る店内、客の冷たい視線が男へ突き刺さる。


「わ、悪かったって!すまん!勘弁してくれ」


頭を押さえてうなだれる男を一瞥し、女将はため息をついて俺に視線を向けた。


「ったく……。アルカもちゃんと自分でやり返さないと。自分の身は自分で守るんだよ」

「すんません」


女将の目は厳しいけれど、心配してくれているのはわかる。

そのことをありがたく思いながら。俺は頭を下げた。


「まったく!アルカは探索者だろ?こんなやつガツンとやってやったらいいんだよ!」


ガツンという言葉とともに腕を振って見せる女将。

俺は自分の右手を握ったり開いたりしてみた。

出来るかできないかでいえば、できる。


「了解や女将さん。お客さん、次やったらこれやからな!」


顔の横で拳を作り、なぐるで?といったポーズをとる。

その姿に威圧感がなさ過ぎたのか、男はどこか馬鹿にしたような半笑いで答えた。


「あぁ、悪かった悪かった。気を付けるよ」

あ、こいつまるで反省してへんな。


ぼっ!


拳が空気を割く。

おおよそ普通ではありえない音に男はさっと顔色を失っていた。


「次、やったら、これやからな!」

「……わ、わるかった。魔が差した勘弁してくれ」


うん、この感じなら大丈夫やろ。


「おっけーや。で?お客さんご注文の追加はないんか?」

「……揚げもの、おかわりで」

「それと?」

「……ポテ煮も追加で」

「それと?」

「……串焼き……」

「それと?」

「すまん!ほんまに反省してるから勘弁してくれ!」


「いったれー!」「まだあるやろ!」

酒場中からどっと合いの手が飛ぶ。完全に見世物だ。

誰かが口笛を鳴らし、別の客が「次はデザートだろ!」と叫ぶ。

気付けば賭けまで始まりそうな勢いだった。


「しょうがないな、勘弁したるわ。――女将さーん!揚げもん、ポテ煮、串焼き盛追加でー!!」


「はっはっは!あいよー!」

女将がケラケラ笑いながら、厨房に引っ込んでいく。


「あ、こっちにも揚げもの追加ー!」

「あいよー!」

「こっちには酒ー!アルカちゃんの分もあるぜー?」

「遠慮しとくわ!代金はもらうけどな!」


その後、悪ノリした客から大量注文が入りてんやわんや。

酒場の売り上げはうなぎ登り。


「はいこれ!臨時ボーナス!」

女将から手渡されたのは、銅貨数枚と……串焼き3本。


「……現物支給かい!」

思わずツッコミを入れると、客席からまた笑いが弾けた。


ここまで読んでいただきありがとうございます。

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