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3話

深く呼吸をし、鼓動を整えていく。

森のすがすがしい香りにまざってわずかに感じる獣臭さは、ここが観光地ではないことを示していた。


なかなか落ち着かない心音を感じつつ、赤く点滅するランプを見つめる。

あれから6か月が経った。――そう、6か月だ。


異世界『ノルディア』に放り込まれてから探索者として生き延びてきた半年間――

というと、ちょっとカッコいいが、まぁ、死なずに何とか生き延びた期間ということだ。


そして――


「き、今日も参拝ありがとうございま~す。虚狐神教筆頭巫女、アルカ……ですよぉ。"おつとめ"配信、やっていきます」


――この世界でダンジョン配信者として生き延びてきた、6か月でもあった。


うーん、いまだにちょっと死にたくなるな。マジで。


謎の狐神『虚狐』を崇める美少女探索者、アルカ――それが今の俺のありさまである。


俺の本名である『宵森 歩』。


アルカという名前は『歩』をもじった名前ではあったが、最近ようやく自分の名前として受け入れられるようになってきた。


……未だに違和感はあるが。


カメラ代わりの〈配信用使い魔〉に手を振りつつ、未だに慣れない"巫女ムーブ"を演じる。


そもそも誰だよ『宗教系美少女狐巫女ダンジョン配信探索者』なんて設定を考えたのは――

そう、俺である。


素顔バレ対策兼、安直な"狐"イメージで購入した木彫りの狐面――鼻下を切り落とし、口元を見えるようにするのに苦労した。

配信中だけは、こいつを装着するのがルールだ。

加えて安物の革鎧。お金があればこちらも配信向けにしたかったが、見た目と防御力の両立は困難だ。妥協して色だけ"ぽく"してある。

とりあえず"キャラを立たせた方が映える"とアドバイザーに勧められて購入した白い外套。

唯一お金をかけられている実用重視で重厚な脚甲とのあいだには、よくわからない絶対領域までできている。


アドバイザーにはスカートを勧められたが、ホットパンツなのは最後の抵抗である。


視界の端に、文字列が流れていく。

通称『コメント欄』は摩訶不思議魔法技術によって実現されている、超常現象である。

――文明技術の使いどころがおかしいと思うんだけどなぁ


視聴者数は三十人そこそこ。

コメントの流れはゆったりとしていて、幾分か寂しいほどだ。


<<今日も美少女。ありがてぇ、ありがてぇ……>>

<<狐人のダンジョン配信者めずらし。>>

<<絶対領域助かる>>

<<仮面とって~>>

<<お、声はかわいい>>


「『ひだまりおじ』さんいつもありがとうございます~。今日もよろしくお願いしますねぇ。

『素泊まり』さん初参拝ありがとうございますぅ。」


数人しかいなかった初配信から30人まで増えてきてはいる。

しかし、なかなか増えない視聴者数にやや焦りを募らせつつも、なんとか配信を続ける。


「それでは~。今日は探協の依頼で"武装ゴブリンの間引き"やっていきますねぇ。」


<<音小さいし、画質悪くない?配信者ならもっといい使い魔買いなよ>>

<<え、それ一人で大丈夫な依頼?>>


「ご心配ありがとうございます~。大丈夫ですよぉ。こう見えて"鉄盾"級探索者なんですからねぇ!」


配信に映るように、背にしていた盾を持ち上げる。


<<いや、それ盾!?なんかの壁かと思ってたわ。>>


「ふふふ、そう……でしょう~。これぞ虚狐様から授けられた、祝福の大盾なんですよぉ。」


嘘である。街の鍛冶屋の売れ残り、でかくて重くて取り回しが悪いということで店の隅でホコリかぶっていた一品だ。


<<祝福の大盾無骨すぎでは?>>

<<虚狐様、今日もアルカちゃんをお守りください。ありがてぇ、ありがてぇ……>>


「ノルマはゴブリン20匹。さくさくとやっていきましょうねぇ」


下ろしていた装備を手早く装着しなおす。

探索者になりたての頃は、身に着けるだけでも一苦労だったんだが、我ながら成長したもんだ。


「それでは~。虚狐様の復活目指して、邪悪な魔物駆除始めていきましょうかねぇ」


メイスを手に、一歩危険地帯に踏み込んでいく。


<<もしかしてそのメイスも何かしらの……?>>

「いや~?このメイスはただのメイスですねぇ。」

<<あ、はい。>>


コメントの流れが停止する。

文字でのやり取りにもかかわらず、空気が固まってしまったのがありありと分かった。

コメ返しミスったな……


「ま、まぁこれから!これからこのメイスも祝福を得る予定なので!」

<<お、おぅそうだな>>


完全にダダ滑りだ。

視聴者数がそっと2人減少した事実に涙を禁じ得ない。


――視聴者はとても正直である。


挽回できないまま無言で目的地へ進む。目指すは未開拓地域。魔力のよどむ危険地域である。


◆◆◆


この世界には人間が手を入れられていない"未開拓地域"が驚くほど多い。

未開拓地域には未知の素材や資源、多くの利益をもたらすダンジョンなど様々な夢が広がっている。

――しかし、夢以上の危険も多く存在するのだ。


「ゲ、グ、ゲグゥロォオオオオオオオ!!」


焦りを帯びた雄たけびが、空気を震わせる。

緑色の肉体にこびりついたような筋肉。腹ばかり目立つバランスの悪い体つきの生き物、ゴブリン。

力任せに振り下ろされた棍棒が、俺の構えた盾に激突した。


「――ふんっ」


余裕!


重く湿った音と振動が、盾から体、地面へまるで流れるように通り過ぎていく。

大盾の重量と強化した肉体は衝撃を難なく受け止め、ダメージを防いだ。


<<なんだろうな、アルカちゃんの盾って変にいい音するんだよね。>>

<<ゴブリンなら俺でも受けられるわ。>>


「えいっ!」


受け止めた瞬間を逃さずに、棍棒をかち上げる。

呆然とこちらを見やるゴブリン。


「必 殺!」


姿勢を低く。素早く懐に潜り込み、盾を持つ左手の魔力強化を全開に。


「虚狐流、天返し!」


地を這うような軌道を描き、盾でゴブリンを殴りつけた。

――虚狐流・天返し。つまり盾で行うアッパーカットである。


<<巫女が必殺!って叫ぶ宗教ってなんだよ>>


心無いコメント。おっしゃる通り過ぎて言い返せない。

一瞬の静寂の後、打ち上げられたゴブリンが受け身も取れずに落下してくる。


「ギゲッ――」

「あら、まだ息がありますか……きっと名のあるゴブリンだったのでしょうねぇ。慈悲!」


完全に身動きが取れなくなったその顔面に、容赦なくメイスを振り下ろした。

グシャリ。最悪な感触が伝わってくる。

倒れ伏すゴブリン。周囲には同じように絶命した死体がゴロゴロと転がっていた。

ちらりとコメントを見る。


<<あぁ、ありがてぇ、ありがてぇ……>>


"いつもの人"以外のコメントは全くない。騒がしかった新規も完全沈黙だ。


どうしても"止め"の場面ではコメントも視聴者も減る。それはすなわち――ドン引かれているということだ。


実際、戦闘で少し高揚している自分でも、顔をしかめてしまうグロさである。

一般人がほとんどを占めるであろう視聴者にはきつい映像に違いない。

やっぱり配信するなら、"生"のターゲットは避けるべきか。


内心で反省会をしながらも、あたりを警戒する。


――自慢の狐耳が風切り音をとらえた。


「――ッ!」


心臓が大きく跳ねる。音の聞こえる方向へ感覚に任せ、盾を合わせる。わずかな衝撃。

飛来した粗末な矢は、あっけない音と共に地面に落ちた。


「随分と大きな音で飛ぶ矢ですねぇ!そんなに場所を教えてどうしてほしいんでしょうかぁ!入信希望ですかねぇ!」


防がれたのを見たゴブリンがその表情を焦りにゆがめ、弓をつがえなおす。

即座に身体強化を脚に集中。盾を構えたまま一気に距離を食いつぶしていく。

空気抵抗をぶち破り、踏み込みのたびに加速する。盾で視界こそ不明瞭だが、耳はしっかりとゴブリンの位置をとらえている。


「神 罰!」

「ギギギーーギェゲェ!?」


ゴブリンと盾が激突する。

先ほどよりも嫌な手応えがあるが、素知らぬ顔で振り払った。


「残念です~。神罰に耐えられないようでは、入信は認められませんねぇ。」


テンションに任せて喋ってしまっているが、果たしてこれは巫女だろうか?

……まぁ宗教ってそういうところあるし、きっとセーフだろう。だよね?


<<え、仮にも巫女を名乗るやつが、こんな物理的な神罰下すことあるぅ?>>

<<今の技は何なの?>>


……。


「虚狐流、流星!です!」


<<今考えたろ。流星ってかぶちかましだし。>>


ちっ、細かいやつがいるな。


素知らぬ顔で額の汗をぬぐう。


引き続き巫女キャラ(?)を演じながら、剥ぎ取り用のナイフを取り出す。

討伐証明のためゴブリンから魔石を取り出す必要があるのだ。


ひーふーみーよ……ざっと8体ほどだろうか。依頼の始まりとしては上々だ。


しかし、これから待っているのは探索者のやりたくない作業ランキング上位。

倒した魔物からの魔石摘出作業である。


死体の胸に刃物を突き立て、引き裂き、魔石を取り出していく。


血がとび、外套に付着する。

外套には汚れが落ちやすくなる魔術回路が組み込んであるとはいえ、顔色ひとつ変わらない。

日本にいたころの俺では100%できないグロい作業。

これに慣れてしまっているのは果たしていいのか悪いのか。


<<頑張ってる。ありがてぇ、ありがてぇ……>>


ふふ、意味わからん。キモ。

謎のコメントに少しだけ悩みが晴れた。

実際、悩んでもしょうがないしな。生き延びるためだ。


ざくざくざく。作業を進める。


ふと、太陽に雲がかかり、周囲が陰る。

あたりに立ち込める血の臭い、散らばった死体。森から吹き抜けてくる風が怪しげな音を奏でている。


今の自分の姿を顧みた。


周りに誰もいないのに、何かに話しかけながら、大振りのナイフで、死体から何かを取り出していく自称巫女。


はたから見たら完全にヤバい人――完全に邪教のなにかではないか?


<<これ、完全にヤバい宗教だろ……>>


うん。俺も、そう思う。


◆◆◆


「グ、ゲ、ギ……」

どぅ、と音を立て頭部をつぶされたゴブリンが倒れ伏す。

しばし、残心とともに周囲を警戒してお代わりがないことを確認した後、俺は戦闘態勢を解いた。


「はぁ~。やっと終わりましたぁ……。なぁんで最後の1匹がなかなか見つからない挙句に、出てきたら出てきたでわらわらと来るんでしょうねぇ」


ぼきぼきと緊張に固まった体を伸ばす。

総討伐数は29。ラスト1体を探し回り、10体の集団に襲われた哀れな配信者が俺である。

とはいうものの、後半はかなり派手な乱戦だった。

取れ高も十分。コメントも盛り上がってくれているのではないだろうか。


配信者にとって予想外のピンチ、苦労、トラブルはチャンスである。


「はい~。見ていましたかぁ。ノーダメでーす。これも虚狐様のご加護――あれ?」


――コメントが、まったく流れない。


……え?

ひやりと戦闘時とは違う緊張が走る。


経験上、こういった激戦の後は何かしらコメントが流れてくる。

今まで一度も、ともすれば配信を始めて以来、このタイミングで無反応なのは初めてだ。


何かやってしまったか?やっぱり生は避けるべきだったか、邪教が過ぎたか?


頭の中をぐるぐると懸念が駆け巡る。


まさかグロさで一斉離脱?いやいや、これまでもそこそこヤバい場面あっただろ!


「えーっと……もしもーし?ひ、『ひだまりおじ』さーん?『素泊まり』さーん?―――――」


今日、コメント欄で見た名前に声をかけてみる。コメントは流れない。

常連、新規共に反応がない事実に猛烈な勢いで湧き上がる不安。


まさか――視聴者0人。全員離脱?


"幸いにして"今の今まで経験することのなかった事態に血の気が引いていく。


「え、うそやん。このタイミングで?ほんまに?マジで言うとる!?」


気が付けばぐっと尻尾を抱き寄せていた。


だ、大丈夫だ。落ち着け、たまたま、偶然だ。ちょうどみんなタイミングが重なって――


と、そのとき。 


……ピクリとも動かない配信用使い魔が目に入った。


「あ、あれ?お前……さっきから全然反応せぇへんくない?」


慌てて使い魔に駆け寄る。使い魔は、その動きを追うでもなく宙に静止したままだ。

これは、まさか――

手に持ち、確認する。本来、配信中は青く光っているはずのその瞳は――


「"白目むいとる"やんけ――!!!」


ちーん、と擬音が付きそうなほど使い魔は硬直している。

何かしらの原因による、配信使い魔の停止。眼球タイプはその瞳の光を失う特性上、白目を向くと表現されていた。


「い、いつからや!いつからお前止まっとんねん!あれは?大型の一撃をめちゃくちゃうまく受け止めたところは撮っとったやろな!!」


意味がないことは頭の隅で理解しつつ使い魔を揉みしだきながら問い詰める。

迫真の白目はまるでこちらを煽っているようだ。

いや、違う!こんなことしとる場合じゃない!!配信再開しないと!


「う、うぅ……さ、再起動……再起動や!虚狐様のご加護を!!」


慌てて使い魔の裏側を押し込む。――ぷに。無駄に滑らかな肌触りが癪に障る。反応はない。


――ぷに。反応はない。


――ぷに。反応はない。


ぷにぷにぷにぷに!


「くそ!全然あかん!この割引生成の安モン!!このタイミングで逝かんでもええやろ!」


例の狐邪神も狐邪神である。

こっちに放りこまれて半年、ご利益らしいご利益ゼロだ。巫女として拉致った責任くらいとれ!


うんともすんともいわない使い魔。配信が途中で宙に浮いているという事実が焦りを加速させる。

頭の中に最終手段がよぎる。――やるしかない。


意識のスイッチを切り替え、魔力を練り上げる。


――最終手段、使い魔への直接魔力注入である。(商会保証対象外)


使い魔に魔力が流れ込んでいく。


――『こ、込めすぎると……破裂、するけど』


この使い魔を生成した店主の言葉が思い出されるが、俺の頭には配信を再開させるのにいっぱいだ。


いけるいけるいける。俺は巫女だぞ(?)。

あのくそ狐――虚狐の加護がある!あるよな!?っていうか!!


「たまには加護でもよこしてみぃや!お前のかわいい狐巫女やぞ!!くそくそくそ!こんこんこんこんこーん!」


ひときわ強く、魔力を込める。


――ドウゥン!


無駄に腹に来る重低音サウンドと共に使い魔が再起動する。

カッと目を見開き、せわしなく点滅する瞳の輝きはまさに起動中のPCを思わせた。


「よっしゃー!きたきたきたきた!」


叫びそうになるのを慌てて抑える。醜態をさらさないよう、必死で巫女のキャラをかぶりなおした。


「み、みなさ~ん!すみません!ちょっと使い魔の調子が悪くて、配信途切れちゃいましたぁ」


<<戻ってきた!ありがてぇ、ありがてぇ……!>>

<<お、もどった?>>

<<あ、テスト>>

<<再起動芸助かる>>

<<戦闘配信初見だけどおもろいなコレ>>

<<おぉ!美少女!登録します!>>

<<あー!配信戻ってきてる!おかえり!>>

<<女女女女ァ!!!仮面取れ!!>>


今まで見たことない怒涛の勢いでコメントが流れていく。

ちらりと見知った名前もあったが、ほとんどは初見だ。


「え、え、え、え!?」


なんや、このコメントの量!どうなってん!

はっとなり、視聴者数を確認する。


――視聴者数205人。


<<美少女が大立ち回りしてるって、話題になってたんで見に来ました!>>


よりによってこのタイミングで!?


叫びそうになるのをぎりぎりでこらえる。


突如増えたコメントのスピードについていけずに、右往左往。

何とかコメントの流れを拾って、配信を立て直していく。


「あ、あ~。でもよかったです、頑張ったところは映ってたみたいで!しょ、初見さんも参拝ありがとうございますぅ。ひとつ祈っていってくださいねぇ。で、で、どこまで配信できてましたかぁ?」

無理やり作った笑みはきっと不格好だが、こちとら狐耳美少女である。許される範囲だ。


<<すごかった!>>

<<あのでかいゴブリンの大剣受け止めたのはビビったわ。>>

<<俺、弓使えるよ>>

<<盾で突っ込んでたところから!>>


わいのわいの。コメントが流れていく。

大型との大立ち回り等、見せたかった場面は無事、配信できていたようで一安心。

内容も好意的なものが多いようで、何人かは常連になってくれそうだ。

ほっと一息、安心感から自然と尻尾が機嫌よく振れてしまう。


「わ、わ。皆さんありがとうございますぅ。この出会いも虚狐様のご加護ですかねぇ」


いやぁ、災い転じて福となすというか九死に一生というか!まぁ!何とかうまくいった――!?


「ヒュッ――」


視界に流れるとあるコメント、それを見た瞬間、思わず息をのんだ。


<<ずっと声は聞こえてたよ!>>


思考が停止する。無意識に前面に回り込んだ尻尾を抱え込み、固まってしまった。

そんな俺をよそに、コメントは盛況だ。


<<あ、そうそう!アルカちゃん慌てててかわいかった!>>

<<画面は止まってたけど、声だけ生きてたのマジでやばかった>>

<<神様に文句言っててめっちゃ笑った>>

<<こんこんこんこーん!虚狐様への背信ではないですか!?!?!>>

<<虚狐様?への暴言、全部聞こえてたからな!?>>

<<あれ、固まってる?>>

<<辺境訛りかわいい!>>

<<あんまり聞いたことない辺境訛りだったな、どこら辺出身なんだろ>>


頭の中が真っ白になる。


聞かれていたのだ。


一人で焦っている醜態も、設定上崇めている虚狐への暴言も、口から出た「こんこんこんこーん!」も全部。

まるで、家の中での独り言を聞かれていたような感覚。

――顔が熱い。耳も熱い。おまけに尻尾まで逆立ってる。


だめだわ、これはダメだ。逃げるしかない。この状況から、この羞恥から。この現実から。


「み、みなさ~ん。ご視聴、ありがとうございましたぁ。よろしければ視聴登録、よろしくお願いしますねぇ」


<<え?>>

<<え?>>

<<え?>>

<<めげずに配信してほしい。ありがてぇ、ありがてぇ……!>>


コメントに返信することもできず、使い魔への魔力供給を切る。瞳を黒に戻した使い魔は、ふよふよと所在無げに揺れた後、ぽとりと地面に落ちた。

どうやら完全に使い魔も壊れてしまったようだ。

これは、買い直しだろうか。あぁ神よ……。


壊れた使い魔をそっと荷物にしまい込む。

空を見上げる。相変わらず太陽は2つ。


たしか、明るい太陽は成功を、黒い太陽は失敗を照らしている……だったろうか?


街でどっかの宗教家が説法していた内容がふと浮かぶ。

今日は依頼も達成、視聴者も急増。


そして――たぶん、消えない恥の記憶もセットで、である。


「そんなに無理やりセットにしてくれなくてええんやけどな。はぁ。」


初配信以来のグダグダ配信。配信者アルカちゃんの黒歴史がまた一ページ刻まれてしまった。


「あかんな、冷静になってみると"マイク切り忘れ"なんて、ちゃんとネタにすべきやったわ」


仮面を外しつつ、大きくため息をひとつ。

次の配信に少し恐れを感じつつ、肩を落として帰路につくのだった。

ここまで読んでいただきありがとうございます。

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