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第一章 憎まれる令嬢
ステリア=ヴァルトハイム。
王国随一の名門貴族の令嬢。
完璧な容姿と冷酷な言動で、人々から『氷の令嬢』と呼ばれていた。
王都の広場では、彼女の名を聞くだけで子供達が泣き出すと言う。
「またヴァルトハイム令嬢が孤児院の寄付を拒否したらしいわよ」
「あの人は神さえも嘲笑うわ」
「クララ様とはまるで正反対ね」
噂はいつも彼女を悪の象徴に仕立て上げる。
しかし、誰も知らない。
ステリアが毎晩王城の地下牢へと忍び込み、鎖に繋がれた“それ”の封印を強化している事を。