3巻 4章 6話
収穫祭のイベントはいたる所で盛り上がっている。
アナウンサーが中継をしている。
「こちらのお店をご覧下さい。塔の少し奥のエリアにレアアイテムショップが誕生しました。整理券を持って並んでいる方に声をかけてみたいと思います。」
「ササー!珍しいお店が出来ましたが、何をお求めに来ましたか?」
「スペーストマトキットです。宇宙の旅での癒しになるな〜と思って。」
「実がなるのも楽しみですね。水と光だけで何度も実が育つのも人気の理由の様です。オープン前のお店にお話を聞きに行きましょう。」
アナウンサーとドローンカメラがお店に入って行く。
「ササー!このお店で働き始めたきっかけは何ですか?」アナウンサーが金色ジャッカルのカップルにマイクを向ける。
「紛争でお店を閉めて、フェニックスシティの募集を見て来た時に、たまたまオーナーに声をかけてもらいました。2人でお店がまた出来て幸せです。」「今日はオーナーとお仲間のスペーストマトキットの開発者も来てくれて心強いです。」
「オーナーのクラウンさん、お店は繁盛しそうですか?意気込みもお願いします。」
「それが、僕の方はまだ1人しかお客さんが並んでないけど、、動植物園と仲間の協力のおかげでレアアイテムはいいのが揃ってます。これを見てたくさんギルドが来てくれたり、クエスト受けてくれたらこの国も平穏になっていいかなって思ってます。」
「ギルドのクエストも今後たくさんでる予定です。クエスト依頼にも注目が集まっています。続いて開発者のブラストさん、行列が出来ていますね?」
「は、はい!苗はプロテア砦のうま、あっ、美味しいトマトで、サイズは2、30cmです。小さなスペースでも育てられます。苗だけなら野菜販売所でも買えます。」
「是非、ケンタウリDにお越しの際はフェニックスシティにお立ち寄り下さいね〜。」
ドローンカメラのRECのライトが消えた。
「取材のご協力ありがとうございました!ケンタウリD放送のデジタルステッカーです。どうぞ。」アナウンサーはディスプレイをタップすると笑顔で次の中継に向かった。
「あー緊張したー。」「ふうー終わったー。」クラウンとブラストは顔を見合ってほっとした。
まもなくオープン時間となり、スペーストマトキットは好調な売れゆきだ。
「クラウン氏、ブラスト氏。」ギルドの犯罪専門家が声をかけてきた。その横にはベージュ色のギルドスーツを着た白髪のオールバックの中年男性が一緒に立っている。
「こちらはクリス氏です。」犯罪専門家が紹介した。
「よう。クリス•シュタイナーだ。こんな所まで来て店開くなんて珍しいな。カルラの羽一枚くれ。」ガラスケースを指差し、クリスはぶっきらぼうにしゃべった。整理券を表示し、ワッペンをかざして会計を済ませる。
「ありがとうございます。」クラウンはレアアイテムをカウンターから渡した。
「せっかく一緒にクエストする訳ですから、それまでお互い話でもして仲良くなって下さい。私は取り置きを買うのに並んできます。」犯罪専門家は、にこにこしながら店の外の列に並びに行ってしまった。
「ああー、なんだ?んー、プロフ見るか?」クリスはカウンター横のテーブルと椅子に移動し、どかっと座ってディスプレイを出した。
クラウンとブラストは金色ジャッカルのカップルにレジを任せて、同じテーブルにつき、ディスプレイのプロフィールを見た。
ープロフィールー
クリス・シュタイナー
age.61
レベル489
精霊馬チャック
バツイチ
趣味、競馬
クラウンとブラストもディスプレイにプロフィールを出したが、クリスは軽くみてサッとディスプレイを閉じた。
「クラウンも精霊馬がいるんだな。どーやって守護精霊にしたんだ?」クリスがたずねた。
「巨人に襲われてたのを助けた時に。おじさんは?」
「ん?まあ、おじさんだけど、クリスって呼んでくれ。昔、競馬に行った時に馬舎が火事になった。競走馬を1人で全部逃してやった。そしたら目の前に梁が落ちてきて、出口が塞がったんだ。奥からチャックが現れて焼け落ちた屋根から飛んで逃げれたんだ。チャックは競走馬達の精霊だから速いぞー。空も翔る。」
「へー。」「ふーん。」
「ブラストは発明家か?儲かっていいよなー。ギルドなんか辞めて、競走馬の当たりを教えてくれるよーな発明してくれよ。」
「ギルド辞めないし、ギャンブルに興味ない。」
「あっそ。」
・・・・
沈黙が流れた。
「さてと、パトロールがてら見回ってくる。もう欲しいもんは買えたし、今日一日サポートしたら帰るから、それまでよろしくな。店がんばれよ。」クリスは気まずそうに立ち去った。
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フェニックスシティの外の荒野はキャンプエリアになった。日が傾いてくると渓谷の壁はオレンジやピンク色に染まる。
ハニ、ヴァルは個室テントを仲間の分まで設置している。
「全員分、完成〜。おつかれ、ハニ。」ヴァルはテントの入り口を開けて中をチェックした。
「中も広々としてて間隔も広くていいわね。」ハニは完成したテントをみて満足気だ。
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塔の見学者達は海や渓谷の絶景をログに撮ったり、フェニックスシティを上から見て、どこに行こうかなど賑わっている。
虎徹は塔の上の屋根で見張りを続けている。
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フェニックスシティのイートインには大きな厨房がある。
野菜コンテストが終わり、モナコはチョコとゴーストにコック服を着せ、コック帽を被せた。「これでよしっ!似合ってますよ。早速、優勝した野菜達を調理しましょう。」
審査員達と料理人達は、野菜を洗い、大鍋に切った野菜をどんどん入れる。チョコとゴーストは野菜を積んだコンテナをカートで運ぶのを手伝った。
次第に厨房には湯気やハーブの香りが立ち込めた。大鍋をかき回したり、ミキサーで野菜のドレッシングを作ったり、大きなボウルで野菜を和えている。野菜を切る音、炒める音はリズミカルで、モナコの手捌きは見事だ。
作業服を来たアードウルフが調味料のカートを押して入って来た。扉がバタン!と開くと犬達が「クゥーン。」と小さく鳴いた。
扉がバタン!と閉まると扉の裏で腕組みしていたスノーが静かに忍び寄った。
ガツ!
スノーは後ろから、アードウルフの首に腕を回して締めた。
「その毒と一緒に煮込んでやろうか。シシッ。」
アードウルフは必死に首を横に振った。スノーはベルトからスリープスタンプを取り、押し当て、業者に扮したアードウルフを眠らせた。
モナコ達は拍手した。
スノーはアードウルフを縛って、キッチン横の納戸に閉じ込めた。
犬達は通用口で待機していたイノセント刑事とナオミ刑事に調味料のカートを引き渡した。
料理は無事に完成し、イベント広場へ運び出された。
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イベント広場では来場客も農家も一緒に、長机を並べたり、黄緑色のテーブルクロスをかけたり、一体型のスプーンフォークを置いて行く。
夕暮れのイベント広場にいい香りが広がる。各料理ごとに器が並び、みな順に受けとる。クラウン達も広場に集まった。
モナコがマイクを持って挨拶する。「今日の主役、生産者さん達にお会いできて光栄です。心を込めて作りました。たくさん召し上がって下さい。」
会場に拍手が湧く。
パチパチパチ、、ザワザワザワ。
みなが振り返ると松明と樽を持ったピエールが大勢を引き連れてやって来た。みなが自然と離れる。
「ピエール様より、お祝いに酒の差し入れだ。」代理人が言った。ピエールが合図するとアードウルフ達がイベント会場に樽を下ろして積んでいく。
その時、クリスからのコール。
「たいまつと樽を持った軍団が来たぞ!」
「もう来てるよ。」クラウンのコール。
「そっちに行く!」クリスのコール。
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続く。
絵:クサビ




