3巻 4章 5話
ライブから数日後。
プロテア砦は収穫期に入った。
夕暮れ、エイムスの裏庭。
エイムスは火を起こしたり、敷物、クッション、飲み物を焚き火の回りにセッティングしている。
庭の焚き火の奥は、収穫が終わった畑が広がっている。作業小屋で女性達が片付けをしている。
2人の女性達が不貞腐れた顔をしてエイムスの家の裏口から入って来た。
「エイムス、ちょっと来てー。」
女性達はエイムスを呼びだし、エイムスが近づくと話し出した。
「あ?俺?ちげーよ。泊まるのは君達だけだから山エリアは全部で43人だよ。」
「えー!エイムスも一緒に行こうよー。」
「俺はやる事あんだよ。ネオサンドシティに部屋とったから、もう支度してくれ!」
「なんでよー。」
「私たちにもできるわー。」
女性達は口を尖らせ反発した。
「喋ったら気絶するんだぞ?せっかくゼブが休めって言ってくれた慰安の旅なんだ。もう部屋は取ってあるから、羽伸ばして来い!」
「なによー小声で話せるわよー。」
「みんなー。行き先サンドシティーだってー!」
女性達が仲間に話しながら帰って行った。
「サンドシティだって!」
「きゃー!1度泊まってみたかったの〜。」
「やったー!」
収穫を終えた女性達は歓喜した。
⭐️
日も暮れ、エイムスとギルドのみな、そして犬達で焚き火を囲んだ。
エイムスとブラスト、ヴァルがバッタの事を話し合っている。
「これから飛んでくるバッタは羽音で気絶させられるから気をつけろよ。」
「うん、僕たち喰らった事があるんですよ〜。」ヴァルはブラストを見た。
「初めて会った時ねー。神経がビーン!って、マジヤバかった。」ブラストは思い出した。
「ああ、誰かが話し始めると突然ブラックアウトするから最悪だよな。」エイムスは足を組んで伸ばし、椅子にもたれた。
クラウンはチョコとブランケットに包まり、その時の事を思い出した。少し微笑みながら、焚き火を見つめている。
スノーとゴーストもゴロンと横になって焚き火を見つめた。
ハニはハーブティーを飲みながらエイムスに話しかけた。「昔はバッタの襲来で町が滅んだって聞きました。」
「大昔な。バッタの襲来があると、作物はほとんど食い尽くされるから、殺虫剤をドローンで散布して追いかけていたらしい。場所によっては何度も襲来するから、殺虫剤を撒きすぎて、で、その土地はなんも育たず砂漠化して、町が滅んだって事だ。」
ハニと虎徹はうなずいた。
「どうやってここまで立派な畑に育てたのですか?」虎徹はたずねた。
「ここの先人達は風土に合わせた土づくりを始めた。塩害には石灰を混ぜるとかな。バッタは春と秋の産卵期に駆除をする。この辺はそれで十分だった時もあるんだ、、バッタが海を渡る様になって外来種が来るまでは、、」
ヒュー。
焚き火の火の粉が舞う。風向きが変わったのが見えた。
「来る。ここからは静かに頼んだぞ。」エイムスが消音イヤホンをつけながら言った。
ギルドのみなはうなずき、ヘルメットを閉じた。
クラウンは仰向けになり、空をぼーっと見た。
ゼブからトランシーバーでコール。
「南から大群が来てる。」
エイムスは小声で応答した。
「了解。風向きが変わった。」
「了解。」ゼブは応答した。
⭐️
15分後。
ビー、バタバタ。
ビー、バタバタ。
ビーン、ビーン。
バタバタバタバタ。
クラウン達の頭上をバッタの大群が塊で飛んで行く。薄暗がりの中で黒い呪いの様に動き、独特の羽音が空気を震わせる。
みなブランケットに包まり、静かに時を過ごした。
虎徹が瞑想しているのを見て、ハニも胡座で座った。
⭐️
30分後。
バッタの大群は収穫後の畑で産卵を終えた。トノサママヒトビバッタが風に乗って飛んで行くと、産卵が終わったバッタ達も次々と飛び立った。空一面に広がりながら風の道をバッタ達は流れていった。
⭐️
辺りが静まり返ると、エイムスが無言で立ち上がり、焚き火の火を大きく燃え上がらせた。
炎が大きくなり、足元が見える様になった所でエイムスがイヤホンを外し、ヘルメットを開けるサインを出した。
「産卵が終わった所を固めて終いだ。行くぞ。」エイムスは軽く手招きし、畑の照明を点けに歩き出した。
エイムスは散布機や直播機に入れる肥料やリン酸、土を固める薬剤などの調合をクラウン、ブラスト、虎徹に指示した。準備できた農機にエイムス、スノー、ハニは乗り込み整地作業をした。ヴァルはパワーを使って複数台操作した。
エイムスは他のハンター達も無事に作業しているかトランシーバーで確認し合った。
⭐️
数日後。
プロテア砦の全ての収穫が終わった。
フェニックスシティのオープンの日に収穫祭のイベントも行う。クラウン達もフェニックスシティとプロテア砦を行き来し、慌ただしくオープンの準備をした。
⭐️
フェニックスシティ。
オープンの日の朝。
保安官達のファンファーレが響いた。イベント広場で収穫祭が行われている。
アナウンサーが元気に中継している。
「ササー!私は野菜コンテスト会場に来ています!見て下さい。フェニックスシティのオープン初日には、こーんなにたくさんの方々が集まっています。このあと地元の芸人さんと一緒に中継をお届けしまーす。」
⭐️
野菜コンテスト会場。
広場に各野菜コーナーが並ぶ。みな食べやすい大きさにカットされた野菜を試食し、投票している。
観客席には農家の応援や投票を済ませた客で賑わっている。その中には、招待されたエーデルワイス砦の皆と一緒に小夜、アリーヤ、イノセント刑事、ナオミ刑事達もいて、座って楽しそうに話している。
ステージで司会者がマイクにスイッチを入れて話しだした。
「只今より、野菜コンテストを開催します!農家さん自慢の野菜達が出揃いました。審査して頂くのは、野菜ソムリエやグルメ情報の編集長、栄養士、食育アドバイザーの方々。そして審査員長は美食家のモナコ・グランプリさんです。」
モナコはステージの上の審査員席で手を振った。会場に拍手が湧く。
「では早速、投票の終わったキャベツから行きましょう!紹介してくれるのは、お笑いコンビのロトスコープハウスー!」
「ササー!ベスト3に勝ち残ったキャベツがこちらです。相方のアフロより大きなキャベツもありますー。このキャベツはなんて名前なんですか?」
ロトスコープハウスはキャベツ農家達にマイクを向ける。
「ブリザード・ソリッド・バスケットです。今年は大きく育ちました。」
「ロイヤル・キャノピーです。贈答品としても人気があります。」
「エメラルド・タイガーです。食感が自慢です。」
「早速試食します!もしゃもしゃ、、ん!甘みがパネー!」
「もしゃもしゃ、、パリッとしてて食感がマジ、パネエ!いくらでも食べれそうでーす!」
審査員達にも運ばれ、メモをとりながらキャベツを味わう。笑顔を見せたり、目を閉じてうなずく。
司会者「さあ、それではお皿の裏に品種が書かれています!お気に入りのキャベツのお皿をお持ち下さい。オープン!」
会場から響めきや歓喜の声があがる。
「優勝は3票入ったエメラルド・タイガー!おめでとうございます!」
会場から拍手が湧く。優勝したキャベツ農家は拳をあげて喜んだ。
⭐️
司会者「お次はオニオンです!紹介してくれるのは、お笑いコンビのハピ丸ラキスター!」
「はいはーい!こちらも顔くらい大きい立派なオニオンもありまーす。品種名を教えて下さい。」
ハピ丸ラキスタはオニオン農家達にマイクを向ける。
「ケンタウリ・キックです。生でそのまま食べられます。」
「シャイニング・サラマンダーです。独特のスパイシーな香りが人気です。」
「トニー・ギャラクシー・キャラメルです。甘い品種で丸ごと煮込むと口の中で溶けます。」
「早速、頂きます!シャクシャク、、ムム!ウメイジング!」
「コリンコリン、、歯ごえたえがいい。ステーキやお酒にも合いそうです。お酒が飲みたくなりました。」
審査員達にも運ばれ、メモをとりながらオニオンを味わう。驚いたり、香りを嗅ぐ。
司会者「さあ、それではお皿の裏に品種が書かれています!お気に入りのオニオンのお皿をお持ち下さい。オープン!」
会場から響めきや歓喜の声があがる。
「優勝は4票入ったシャイニング・サラマンダー・オニオーン!おめでとうございます!」
会場から拍手が湧く。優勝した玉ねぎ農家は応援団に手を振った。
⭐️
司会者「お次はトマトです!紹介してくれるのは、女性お笑いコンビのにょにょー!」
「ふぇえーい!ハートの形のトマトにきゅんでーす。なんて名前のトマトですか?」
にょにょはトマト農家達にマイクを向ける。
「プロテア・ジュリエッタ・ルージュです。冷製パスタにたっぷり和えるのがオススメです。」ギャレットが答える。
「ポセイドンです。濃厚でコクがすごくあります。」
「イクラ・ボン・ボンです。フルーツに負けないくらい糖度が高いです。」
「では、頂きます!もぐもぐ、、うまっ。うまタウロス!」
「ぱく!じゅる、、うわー!体に染み込む〜。」
審査員達にも運ばれ、メモをとりながらトマトを味わう。頬をおさえたり、目をきゅっと閉じる。
司会者「さあ、それではお皿の裏に品種が書かれています!お気に入りのトマトのお皿をお持ち下さい。オープン!」
会場から響めきや歓喜の声があがる。
「優勝は5票入ったプロテア・ジュリエッタ・ルージュー!おめでとうございます!」
会場から拍手が湧く。優勝したギャレットは両手を挙げて小さく飛び跳ねた。
司会者「それでは、後半戦はこのあとすぐです!なお、夜の部では優勝した野菜を使ったメニューで祝勝会が行われます。最高のディナーを審査員のみなさんが手掛けてくれます。お楽しみに!」
⭐️
続く。
絵:クサビ




