3巻 4章 4話
5日後。
プロテア砦のライブの日。
ラファエルの書いたプロテア砦ライブとフェニックスシティオープンの記事は大反響だった。特にハンター5人が並んだライブのポスターログにはハートのスタンプがたくさん届いた。
ラファエルの情報はギルドや警察、保安官にも共有され、プリミティブ・ステーションからフェニックスシティ、プロテア砦まで、周辺は厳戒態勢となった。
安全確保された道を、来場者達はお祭り気分を味わいながら大勢訪れた。
プロテア砦が行うライブは、チケットの売り上げによる収益化と、もう一つ大切な役割がある。働き手の募集だ。収穫時期だけの短期の働き手や住み込みの長期の働き手の手続きも行う。今回はフェニックスシティでの働き手も募集する。音楽をしながら生活したいミュージシャン達や失業者、難民、音楽ファン、ハンター達のファンで会場は賑わっていった。
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ポレポレはドリンクブース、モナコは野菜のスナックフードブースで農園の働き手達と露店の準備をしている。みな楽しそうに良い笑顔で働いている。
クラウンとヴァルはそんな風景を見ながら微笑んだ。
「クラウン、ヴァル、行くぞ!」スノーは声をかけた。
パトロールの集合場所に着くと、ゼブと髭の保安官が話している。
「今年もすごい人気ですねー。東側は問題なさそうですが、西側は多民族が集まるから、そのチェックでごたつかない様に今セッティングしてます。」髭の保安官がディスプレイをチェックする。
「宣伝の反響がスゲーんだよ。働き手登録の受付も拡大してくるわ。保安官、あとは頼みます。」ゼブは振り返った。
ゼブはスノーを見つけ、近づき肩に手を回して言った。
「俺たちの出番、午後の半ばだから、それまでにパトロールから帰って来いよ。保安官には言っといたからな!あとでなー。」ゼブはそう言って忙しなく馬で駆けて行った。
クラウン達は髭の保安官に挨拶して、パトロールに西側ゲートに向かった。
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西側ゲート。
警察ロボ数十台、警察官数十人、保安官達が入場チェックに立っている。
クラウンは西側からくる多民族の数に目を見張った。
保安官が列の先で呼びかけている。「ライブチケットお持ちの方はゲートでチケットをかざしてお進み下さーい。」
働き手登録も列が出来ている。
前髪が長い牛の様な姿のハイランド・キャトル族の家族が保安官と話している。「オリックス牧場を経営しておりましたが、略奪団にすべて奪われました。証明ログです。」
「それは大変な思いをされましたね。家族用宿舎の受付はこちらに向かって下さい。今日はライブも楽しんで下さい。」
しなやかな狼の様な姿の金色ジャッカル族のカップルが保安官と話している。「小さな商店をしてましたが、紛争地帯に挟まれてお客が来なくなってしまいました。新しい街でコーヒー店がオープンすると聞いて来ました。」
「あー、すみせん。コーヒーの収穫は来年からになるので、来年開業予定ってここに書いてあります。他に興味あるお仕事ありませんか?」
「本当だ。うーん、どうしよう。2人で一緒に働けるお店はありませんか?」
「塔の受付は交代制だしな、大勢と一緒でも大丈夫なら野菜の販売所やイートイン、レジ仕事もありますね。」
悩む金色ジャッカルのカップルを見て、ヴァルはクラウンを誘って駆け寄った。クラウンは思い切って声をかけた。「あの、ギルドのレア素材を扱うショップが出来るので、良かったら働きませんか?」ヴァルも一緒に誘った。「2人で一緒にお店できますよ。」カップルは顔を見合って嬉しそうにうなずいた。保安官が案内を見せた。「じゃあ証明ログ見せて下さい。説明も中でゆっくり聞けますので、フェニックスシティの受付はこちらに向かって下さい。今日はライブも楽しんで下さい。」
金色ジャッカルのカップルはクラウンとヴァルに手としっぽを振ってにこやかに入場していった。
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行列の横を通り、パトロール部隊に合流した。保安官に見回り地域を指示され、ハニはカエサルで外門に到着した。
みなで西側のパトロールに向かった。40分程走ると、小さな街の看板が見えた。フェンスに囲まれたフルーツ農園の周りを徐行して見回った。
保安官と農家が道端で立ち話をしている。スノーは車の窓を開けて保安官に声をかけた。「問題ないっすか?」
「ええ、大丈夫です。この辺一帯の農園は防衛力が高いからね。」保安官が返事をした。
横にいた農家がご苦労様と手をあげた。「今日はフェンスの電流MAXにして午後からライブに行くんだ!」
「おー。今日のライブ盛り上がりそうっすね。シシッ。」
「ハンター達が上手いんだよ。君らも見た方が良いよ!」
「ウッス。俺らも行きます!」
「うんうん。君らの活躍ね、保安官達から聞いてるよ。西側にもギルドに来て欲しいよー。年々、紛争や略奪が激しくなってきてる。」
保安官が間に入った。
「大丈夫ですよ。ギルドがすでに手を打ってくれました。店ができるんですよ。それにクエストがたくさん出れば、ギルドはやってくるでしょう。」
「そうか!楽しみだな。ライブ楽しめよ!」
スノーは手を上げて挨拶し、次のパトロールに向かった。
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南のバスターミナル。
プロテア砦に向かう臨時のシャトルバス乗り場には列が出来ており、次々にバスに乗り込んでいく。
バスターミナルをぐるりと見回り、賑やかな人だかりの中で、マダラデビルのド派手なネイルの女達がもう酒を飲んで騒いでいた。
スノーは窓を閉め、座席に屈み、ハニを急かした。「ヤベ!ハニ、静かに素早く通り過ぎてくれ。」
ひとりのマダラデビルの女がカエサルに気づいて指差した。「キャウキャウ!」
「え?じゃあ次行くねー。」ハニはバスターミナルの出口に向かった。バックミラーを見ると3人は飛び跳ねたり、手を振って呼びかけている。ハニはスノーの丸まって隠れる姿を見てクスクスした。
最後のパトロール先、北の果樹園へ向かう。
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果樹園に正午過ぎに到着した。ここの果樹園もフェンスでしっかり防衛されている。農家達の家の周りは誰もおらず静かだ。どこの家も車庫も閉まっており、もう出かけた様だ。
バウ!バウ!
ゴーストが窓の外に向かって吠えた。
「チョコ!イカロス使って!」クラウンはマップを見た。鉄塔に向かって行くマーキングポイントを複数見つけた。
「ハニ、鉄塔が狙われてる!」クラウンが伝えるとハニは急ハンドルでフェンスの間を抜ける。「OK!みんな後ろでスタンバイして!マーキングポイントの塊に送りこむね!」
みな、すぐ扉を開けて後ろの砲台へ移動を始めた。
最初にブラストが砲台に辿り着くと、ケーブルカッターを持ったマダラデビル達を発見した。フェンスの先で鉢合わせした、その瞬間。
「ショックウェーブ!」バーン!
ブラストの放った衝撃波に吹き飛ばされたマダラデビル達はフェンスに吹き飛ばされてぶつかった。
ドン!バチー!!
バチバチ!ビチビチ!
「ギャウギャウ!」「ギャー!」マダラデビル達は電流を全身に浴び気を失った。
最後にスノーが犬達を抱えて砲台に到着し、みな声を上げた。「ホーウ!」「イエー!」砲台に捕まり、ハニは鉄塔目指してアクセルを踏み込んだ。
鉄塔のフェンスをボルトカッターで開け、鉄塔のはしごを登るマダラデビル達。
虎徹はカエサルの屋根に登り、一度しゃがんだ。
「飛翔!」虎徹は高く飛び上がり、フェンスを超え、鉄塔の階段に着地した。虎徹は素早く走り、梯子の上からマダラデビルを見下ろした。虎徹は宙返りしてハシゴを上がってくるマダラデビルの顔面にドロップキックをした。
「ギャウウー!」「ギャウ!」マダラデビル達は真っ逆さまに重なって落ちた。虎徹は着地するや刀を抜き、そのままケーブルカッターを持ったマダラデビル達を横一文字に斬った。
マダラデビル達が恐れ慄き、一斉に鉄塔の高台から下に走り出した。虎徹がフェンスの穴をかがんで抜けると、カエサルが坂道をうなりながら上がって来た。
「虎徹!」スノーが手を伸ばして、虎徹を砲台に引き戻した。
カエサルは鉄塔をぐるっと回り、逃げるマダラデビル達を追いかけた。
ハニのコール。
「Ready!」
「作戦インパクト!行くぞ!」スノーのコール。
逃げるマダラデビル達にカエサルが追いつく。
ブロロォォ!!
「タクシス!」ハニは片手をマダラデビル達に向けた。
クラウン達の体は宙に浮き、猛スピードで逃げ去るマダラデビル達の頭上、空高くから落下する。
カエサルは逸れて逃げる。
「うわー!」クラウンは空から一気に地面に爆進する。
「ホーウ!」みなも声を上げた。
「3、2、1!」スノーの掛け声でみな一斉にパワーを使った。
チョコの体はプリズムを発し、みな体が隕石の様に丸まり燃え上がり光った。
ドカーーン!
火の玉は7つに分かれて飛び出し、マダラデビル達を吹っ飛ばした。地面に転がり、土がぼろぼろと崩れ、クラウンは立ち上がった。
ハニが車で駆けつけ、降りて来た。みなハニに駆け寄りハイタッチした。犬達はジャンプした。
スノーの通報で警察ロボはすぐ到着した。クラウン達はパトロールを終えて、プロテア砦に向かった。
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ハンター達のライブ開演10分前にクラウン達は会場に駆けつけた。
ハンター5人の楽器がステージに並び、ローディー達がセッティングしている。
クラウンは息を整えながら、ライブの前のワイワイとした雰囲気、待ち遠しさで胸が高鳴った。
スノーと虎徹がみなにドリンクを配り、乾杯した。
会場の前列から歓声が上がった。ハンター5人がステージに登場すると会場全体に拍手と歓声が響いた。
ハンター5人が順に楽器を鳴らす。
ポロン、ポロン。
ベーン、ベーン。
パララ、パララ。
フォン、フォン。
タン、タン、タン、タン、、、ゼブが仲間を見た。ライブはそのまま幕を開けた。
ゼブのドラムに合わせて、観客は足を踏み鳴らし、一体感に包まれた。
カントリーの曲を2曲、次はエイムスがマイクスタンドに近づき「The Ballad of Lefty Brown」をカバーして歌うと会場は大合唱になった。
その後、ポップな曲調でブレイズはサックス、オースティンはトランペットを演奏しながらステージの前に立った。ステップを踏むと、観客も一斉にステップを踏んで盛り上がった。ハンターが並んでジャンプすると観客も一斉にジャンプした。
「Rake Stepper」をカバーし会場のボルテージも上がった。クラウン達もステップを踏んだり、肩を組んでジャンプをして楽しんだ。
ハンター達は水休憩しながら一言ずつ感謝の言葉を述べ、楽器を持ち替えた。ゼブは腰にドラムと鳴物を付け、ギャレットはビオラ、エイムスはエレキギターに持ち替えた。
最後のパート、エレクトロスイングを演奏すると会場は一気に熱気に包まれた、ハンター5人がステージから降りて、通路を周りながら演奏すると大歓声が響いた。目の前をハンターが通る度にクラウンはときめいた。
ライブは大熱狂に終わった。
「うわゎ。良かったー。」「また観たーい。」クラウンとブラストはライブが終わるとヘロヘロになった。
ヴァルがディスプレイに向かって真剣な様子で調べている。クラウンとブラストが「何してるの?」とヴァルを挟んで声をかけた。
「アプリで曲探してた〜。はぁ、興奮したね。心拍数が作戦インパクトくらい上がったよ。カバー曲もいい感じ〜。」ヴァルは、ぽーっとした顔でうっすらニヤけている。
「検索した曲なんだったの?」ブラストがヴァルにたずねた。
「Get Movin’」って曲だった。ヴァルがディスプレイを見せた。
「オレにも送って。」ブラストがお願いすると、「僕も!お気に入りに入れたい!」クラウンもお願いした。ヴァルは「OK〜!」と返事をしてディスプレイを操作した。
ライブ後の余韻は冷めずにしばらく続いた。
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続く。
絵:クサビ




