3巻 3章 1話
⭐️2章のあらすじ⭐️
クラウンたちは警察と協力し、この地域を牛耳る5人兄弟、スタンリー一家の三男メンサ・スタンリーを捕らえ、エーデルワイス砦を解放した。エーデルワイス砦はコーヒー農場として運営再開する為、人員募集や復興作業をクエストで支援していた。そんな中、エーデルワイス砦を奪還しようとするテロリストたちをハニが防衛した。その後もブラストは技術提供、ヴァルは自然や動植物の保護、ハニは地雷除去と、それぞれの得意分野で活動を続ける。
クラウン、スノー、虎徹は警察からの情報をもとに、ウララー山に隠れ家を持つスタンリー一家の五男ヌム・スタンリーを発見し逮捕した。その際、捕虜の一人である混血エルフ族の小夜と出会い、エーデルワイス砦にスカウトする。小夜の部族がスタンリー一家に苦しめられていた事、復讐を企てていたことを知り、次男シャーマン・マヌ・スタンリーを探す決意をする。
小夜はギルドの協力を得て辛い過去から立ち直ろうとしていた。ギルドの助けもあり、隣村に住む混血エルフ族の友人アリーヤと再会し、協力を取り付けて、シャーマンがいる宇宙船「スカラベ」の居場所を突き止める。ギルドと警察は「スカラベ」へ逮捕に乗り出し、ついに次男シャーマン・マヌ・スタンリーを捕らえたのだった、、。
ブラストは机の下の怯えるウサギを見つけて抱えた。犬達は鼻を近づけて匂いを嗅いだ。
サイプレス号に戻り、みな宇宙船スカラベで合流した。ギルドは警察官達に拍手され、クラウンはイノセント刑事にクエスト完了のサインをもらった。ウサギの保護をヴァルが仲介し、ウサギと一緒にグリーンプラネット・ステーションに帰還した。
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グリーンプラネット・ステーションのギルドに寄り、報酬を受け取った。シャーマン・マヌ・スタンリーの生け捕り特別報酬が追加された。
クラウンの体は全身金色に1度光った。
みなレベルが1つ上がった。
クラウン レベル34
ブラスト レベル39
スノー レベル28
ハニ レベル46
虎徹 レベル16
ヴァル レベル41
になった。
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1週間後。
クラウン達はエーデルワイス砦、コーヒー農園の手伝いをしていた。
ナオミ刑事が巡回にやってきて、その後の状況を教えてくれた。
木陰でコーヒーを飲みながらナオミ刑事が言った。「イノセント刑事達はなんでも呪い呪いって言うけど、煙を吸っただけの人達や、呪いをかけられなかったアードウルフ達は、無気力状態から徐々に回復したわ。」
「他はまだ回復してないの?」ブラストは聞いた。
「そうなの。幻覚や幻聴の症状は治ったけど、血の呪いをかけられたアードウルフとスカラベで部屋に閉じ込められてた人達は、頭痛や耳鳴り、麻痺が治らない人がほとんどよ。」
クラウン達は残念な顔をして話を聞いた。
「ウサギは元気になった?」ナオミ刑事が聞くと、クラウンは「うん!」と嬉しそうに返事をし、ブラストは「キャベツが大好物みたい。」とログを見せた。
「カワイイー。」ウサギがキャベツをもぐもぐする姿にナオミ刑事は癒やされた。
小夜が大皿にお菓子を盛り付けて持ってきた。「美味しそうなウサギね。」小夜はイタズラっぽく言った。ブラストは信じられないって感じで、あきれ顔をした。
ハニは綺麗に盛り付けられた大皿のお菓子を見て喜んだ。「わー!これ食べていいの?」
「みんなで食べよ。農園のみんなも食べたし、まだあるから大丈夫よ。イノセント刑事達がお礼にお菓子と資材を送ってくれたの。さっきの話だけど、医者が治せないなら、シャーマンに治療してもらえないかな?」小夜はジャムクッキーを一つつまんだ。
「それ、いいわね!誰か有名なシャーマン知ってる?」ナオミ刑事はディスプレイを出した。
小夜は南のエリアをタップして検索を始めた。
みなお菓子を食べながらコーヒーを飲んだ。
しばらくして、小夜が見つけた。
「いた!ポレポレさん、この人は腕も良くて有名よ。」
「遠いわねー。小夜とみんなにもクエスト出すから一緒に行かない?」みながうなずき嬉しそうな顔をしているのを見て、ナオミ刑事は手際良く各所に連絡を始めた。
ディスプレイには南エリアのプリミティブ・ステーションや女性のシャーマン・ポレポレさんのログが表示されている。
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2日後。
グリーンプラネット・ステーションにみな集合し、サイプレス号は南のエリア、プリミティブ・ステーションに出発した。かつてなくサイプレス号内は賑やかになった。
操縦席のスノーの横にナオミ刑事が座り、食糧難が深刻化しているなど、南エリアの状況を話している。
小夜は虎徹の横に座って、モニターでエーデルワイス砦の子供達と話している。
「宇宙船すごーい!」
「小夜ーお菓子食べていい?」
「みんなで仲良く分けて食べるならいいよ。」
「やったー。」
「小夜、早く帰って来てね。」
「うん、シャーマンを見つけてすぐ帰るよ。」
「後ろのゴーグルのお兄ちゃんは何してるの?」
「え?ああ、動物のお世話をしてるよ。」
「ボクもやりたーい。」
小夜は振り返ってヴァルの様子を子供達に説明した。
ヴァルはゴーグルをつけたまま子供達に手を振った。子供達も嬉しそうに手を振った。
ヴァルは儗体を操作して隙間時間に動物の保護活動に励んだ。
クラウン、ブラストはハニに誘われてヨガをしてリフレッシュした。
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8時間後。
サイプレス号のモニターにテロップが流れた。
ープリミティブ・ステーションにまもなく到着ですー
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プリミティブ・ステーション。
8人と2匹はドックに降りた。
ステーションの傍にある地元警察にナオミ刑事は挨拶に向かった。紛争エリアをさけて通るルートを情報提供してもらった。
ナオミ刑事は手配していた大型のキャンピングカーにセカンドカーを連結し、みなを乗せた。ナオミ刑事はサングラスをかけ、お気に入りのドリンク、流行りの音楽を流し、指差し確認して発進した。
クラウンはソファーやキッチン、トイレ、2階のベッドなど犬達と大型のキャンピングカーの広さに感動しながら見て回った。
運転席を見に来たクラウンはナオミ刑事に聞いた。
「後ろのさー、連結したのは何用?」
「私達、女子のベッドルームよ。こっちにベッドが6つあるから、男子は好きな所を使って。」
それを聞くなり、クラウンとブラストは2階のベッドを急いで取りに向かった。
「オレこっちー。」
「僕こっちー。ははっ。」
クラウンはチョコとベッドに寝転んで星がうっすら見え始めた空を眺めた。
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「着いたよー。」ナオミ刑事がキャンピングカー専用駐車場に停めた。キャンプエリアに到着した。
「ナオミ刑事お疲れ様ー!」ハニが運転席の横から外にでた。みなもお礼を言って車から降り、すっかり暗くなったキャンプ場に今夜は泊まる。
「ディナー楽しみだな〜。」ナオミ刑事は運転席から降りて体を伸ばした。
夕飯は虎徹と小夜で作る。虎徹はみなのリクエストでカツ丼をまた作る事になった。
みなも手伝い、キャンピングカーは出汁の良い香りが広がる。
虎徹に教わりながら、小夜は溶き卵を流しこんだ。
クラウンとハニは調理中のログを撮った。
卵に火が通り、テーブルにカツ丼が並んだ。ナオミ刑事と小夜は初めてのカツ丼に感動した。
食べている最中、ブラストが気がついた。「あ!モナコさんが早速カツ丼のログにハートいっぱい送ってくれてる。ははっ。」ブラストはモナコにスタンプを送った。
みなカツ丼をお腹いっぱい食べた。
食後に男性陣はゲームではしゃぎ、女性陣はセカンドカーでおしゃべりや音楽を楽しんだ。
「うおーまた負けたー!シシー、あん?隣も賑やかだな。」
「これ、賑やか、、か?」虎徹は目を閉じて耳を澄ませた。
「キャー。」
「動くな!手を挙げろ!」
!!
「マズい!」虎徹が立ち上がりキャンピングカーの扉を開けた。
扉の前に両手を挙げたモナコ・グランプリが立っていた。
「は!」虎徹は驚いた次の瞬間、呆れた。
ナオミ刑事が銃を構えて呼ぶ。
「ゆっくり膝まづけ!」
「ナオミ刑事、知り合いです。大丈夫です。」虎徹は冷静に言った。
「何度もこんばんはーって呼んだんですよ。サプライズするつもりが驚かせ過ぎてごめんなさい。カツ丼をどうしても食べたくて。」モナコは瞳を潤ませ虎徹を見た。
虎徹は何も言わず、車内にどうぞと手を向けた。虎徹は出汁を温め直し、手際良くカツ丼を作ってモナコに差し出した。
モナコはガツガツと夢中になって食べた。虎徹はそれをじっと見守った。
「はあーもう無くなっていく、寂しい。パク、なんて至福の味!虎徹さん、大変美味しかったです。」モナコは大満足した。
「すごい執念ね。わざわざ農園から夜に徒歩で来たの?」ナオミ刑事は聞いた。
「食いしん坊という自覚はあります。それに警察ロボにちゃんと同行してもらっています。こちらの南エリアにはレストランがほとんど無くて、気がついたら夢中で歩いていました。」
「拙者、一瞬、扉を閉めようかと思った。」虎徹が本音を話すとみな笑った。
「今夜はもう遅いし、泊まってもらって、明日、私達も農園に向かうから一緒に行きましょ。」ナオミ刑事は言った。
「行き先同じなんだー。良かったね、モナコさん。」クラウンは言った。
「この辺で滞在できるのはプロテア砦の農園だけですから。またお世話になります。」モナコはお辞儀した。
「ここベッド余ってるよ〜。」ヴァルはベッドの場所を教えた。
ヴァルは冷蔵庫から飲み物を取ってモナコに渡し、自身もエナジードリンクを飲みながら話した。「この辺は昔から紛争が多くて、レストランや宿泊施設、商業施設はほとんどないんだ。国営の農園や市場があるくらいで、砦の外は危険だから宿泊施設も農園内にあるんだ〜。」
「へー。僕らが探してるポレポレさんも同じ農園の山エリアにいるんだよ。モナコさん、ポレポレさんに会った事ない?」クラウンは聞いた。
「ポレポレさん?いやー、農園はとても広いのでまだお会いしてないですね。私はトマトエリアにいます。これ美味しいですよ〜。」モナコは手土産のトマトの実がついた20cmほどの苗をテーブルの上に置いた。
みな順にミニトマトを一つずつ、もいで食べた。
「オ〜!甘〜い!グッド。」ヴァルは目を閉じて味わった。
「美味しいー!味が濃ーい。」ハニは喜びながらもぐもぐした。
「この苗にこのライトを当てながらお水をあげると1〜2週間で実がなり、繰り返し食べれます。しかもこれ以上、苗の背は伸びないので、持ち歩きにもいいですよ。これ、ギルドのみなさんに差し入れです。」
「アザース。シシッ。マジうえめ。」スノーも、もうひとつまみ。
「甘くてほいひい。」クラウンの口いっぱいにトマトの甘みが広がった。
みな次のミニトマトの実りが楽しみになった。
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翌朝。
クラウンとスノーは和食のレシピを見ながら、余った出汁を使って、炊き込みご飯と汁物、だし巻き玉子を作った。
モナコは朝からもりもり食べ、2人の料理を絶賛した。だし巻き玉子を作ったクラウンは、何層にも巻かれた薄焼き玉子の美しさを褒められた。
ハニとブラストで食後の片付けをし、車は紛争エリアを迂回して農園に向かった。
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トンネルをでると海が見えた。クラウンが窓を開けるとチョコは窓から顔を出した。ゴーストも窓に手を置くのでスノーが窓を開けるとゴーストも窓から顔を出した。犬達は潮風を気持ち良く浴びた。
プロテア砦の外壁が長く続く道に出た。広大な農園の為、モナコと同行の警察ロボはトマトエリアの前で途中下車した。「また一緒に食事しましょう。次はご馳走させて下さい。」モナコは手を振って見送った。
しばらく外壁に沿って走り、プロテア砦の農園、山エリアに到着した。
「着いたよー。私、手続き諸々あるから、荷物まとめておいてね。後で部屋番号コールするわね。」ナオミ刑事は受付にドリンク片手に颯爽と向かった。
みなで荷物や食材をまとめていると、ナオミ刑事からコールが来た。
「コンドミニアム、マウンテンC棟が私達の部屋になったから、もう向かって大丈夫よ。これ開錠コードね。後で車で向かうから、先に見てていーよ。あ!ベッドは後でくじ引きで決めるからね。」
「はーい。」クラウン達のコール。
みな先にコンドミニアムを見に行く事にした。
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乾いた道を歩くと、A棟の玄関ポーチの椅子に座った男が、椅子の横に立て掛けていた長い猟銃を取り出した。
スノーが気づきみなを制するように手を横に伸ばした。「おい、おい、銃持ってるぞ。シシッ。」
スノーの手で立ち止まり、クラウン、ブラストはA棟を見た。
「うわっ。」
「怖!」
後ろをついて来ていたみなも立ち止まった。
ギルドのみなが足を止めると、男は太ももに猟銃を乗せ、銃先を肩にかけた。男は一度うなずいた。
スノーも男の目を見ながらうなずいた。
「なんでうなずいたの?」クラウンは小声でスノーに言った。
「シシッ。なんとなくだよ。」スノーは調子を合わせた。
猟銃を持った男が手招きした。
「こっち来いって呼んでる。」ブラストが不安そうな声で言う。
「ちょっと行ってくる。」スノーが言うと「え?行くの?」「ヤバそーだよ。」クラウンとブラストはおろおろした。
「ゴースト、ついて来い。」スノーはゴーストと男の元へ小走りで向かった。
⭐️
続く。
絵:クサビ




