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トレモロ 3  作者: 安之丞


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14/23

3巻 2章 4話



ウララー山周辺は警察や救助のヘリが飛び回り、テロリストの拠点は制圧された。正面の入り口から安全確認された通路を通って、囚われていた5人の女性達とクラウン達は救助用のヘリに乗って戻る事になった。


救助用ヘリに乗り、クラウン達は女性達に水や栄養補給ゼリー、ブランケットなどを配った。


囚われていた女性達は安心から笑顔が少し戻り、チョコとゴーストは女性達に撫でられてしっぽをブンブン振った。


ヘリで移動中、砂漠地区の病院に向かうとアナウンスが流れた。白髪のエルフは虎徹に話しかけた。

「さっきは助けてくれてありがとう。私は病院で診てもらう必要ないから、難民キャンプを探したい。地元の人?詳しい人を紹介してもらえないかしら。」


「地元の者ではないが、紹介できる難民キャンプが西にある。弓の腕がたつなら、そこから近いエーデルワイス砦のコーヒー農園が働き手を募集している。いい所だ。」


「へえ。弓が役に立って、屋根と食べ物もあるなら行ってみようかな。」


「名はなんと申す?」


「サヨ。小さい夜って書いて小夜よ。貴方は?」


「拙者は虎徹。仲間のスノー殿、クラウン殿だ。」虎徹はギルドの証明証をディスプレイに出した。クラウンとスノーは小さく手をあげて挨拶した。


「虎徹ね。お互い漢字の名前ね。ねえ、このコーヒー農園にも来る?」


「ああ、時々な。希望するなら、この後送り届けよう。」


亜人の女性達4人を病院に送り、クラウン達は小夜をコーヒー農園まで送り届けた。農園長とハニとヴァルが出迎え、農園の子供達は弓を持った白髪のエルフの小夜に興味津々で歓迎した。


⭐️


キャピタル動植物園。


クラウン達が疲れて宿舎に戻ると、ブラストはニヤニヤしながらログを見ていた。「おっかえりー!今日のログは何回みても笑っちゃう。お菓子とおもちゃ使ったんだ、ははっ。は!オレ、不謹慎だね。」ブラストは真顔に戻ってログを閉じた。


クラウンはブラストの横に座った。「お菓子ありがとう。面白いアイデアだったでしょ?」と嬉しそうにブラストの顔をのぞいた。

ブラストはまたニヤけて、うなずいた。「あーお腹すいた。グリプラステーションのギルドに寄って、カフェで飯にしない?」ブラストが声をかけると、みな顔がほころんで、何を食べたいか話しながら立ち上がった。


⭐️


グリーンプラネットステーション、ギルド。


みな順にポッドに入り、報酬を全て受け取った。


共通報酬。

エーデルワイス砦、奪還。

警察からの応援要請。※詳細はこちら。

動植物園の保護活動。

難民キャンプへ支援物資を運搬。

エーデルワイス砦、コーヒー農園の人員スカウト。

エーデルワイス砦、復興作業。



クラウンの個別報酬。

協力要請に応じ、チョコのアップグレード。チョコは認識レベルアップ、探索範囲が拡大した。



ブラストの個別報酬。

バーニングデスロードの技術提供。

研究専用ドローンの提供。

調達。



ハニの個別報酬。

地雷除去。

エーデルワイス砦、防衛。


みな全身が金色に2回光り、2レベルアップした。


クラウンはレベル33

ブラストはレベル38

スノーはレベル27

ハニはレベル45

虎徹はレベル15

ヴァルはレベル40

になった。



最後にポッドに入ったスノーとハニは同じタイミングで退室した。みなカフェテラスで待っている。向かいながら、話した。


「ハニ、警察の応援要請の詳細見た?」


「見たー。3男のメンサは誤認逮捕扱いで、報酬の取り消しになってたけど、5男のヌムは逮捕時のサポート報酬もらえてたね。」


「まだメンサの件はごたついてんだな。シシッ。あー腹へった。」


「私も腹ペコー。今度、イノセント刑事に聞いてみたら?」


「そーだな。」


みなで夕食を食べ、ログを見ながらあれこれ話しあった。


⭐️


3日後。

この日やる事のないクラウン、スノー、虎徹はイノセント刑事と一緒にコーヒー農園のパトロールにでかけた。


農園のみなは雨が降った後の土を耕し、土作りやコーヒーの苗の世話をしている。小夜も子供達と一緒に元気に働いていた。


お昼の休憩中にイノセント刑事は小夜を呼び出し、ディスプレイを立ち上げ、話を聞いた。クラウン達もそばでお茶しながら同席した。


「亜人の女性達にも事情聴取をしました。一緒にいた方々は小夜さんの事を知りませんでした。出身は南東のこの村で、今は身寄りはありませんか?」イノセント刑事はマップを指した。


「はい、身寄りはありません。もとはこっちの南西の村の出です。住んでた所は水源がダメになって、南東の村に開拓移住しました。そこはテロリスト達に襲われ、村はなくなりました。」小夜は出身の村を指した。


「その時に小夜さんだけ捕まったのですか?どうやってテロリストに捕まったのか経緯を教えてもらえませんか?」


「村が襲われた時、私は部族のみんなで作ったアクセサリーを街に売りに行っていました。帰ったら、みんな殺されてました。いたぶられた痕が可哀想で、、。私は情報を集めながら難民キャンプを渡り歩いて、テロリストが酒場の女性達を誘拐している所を見つけました。亜人の女性達に紛れて自分から捕まりました。私が呼ばれたら殺すつもりでいました。」


「まさか、1人で敵討ちに、、。ギルドが一足早く見つけてくれて良かった。ここで元気にやっていけそうですか?」


「まあ、ここはアットホームで子供達もかわいいし、気に入ったかな。」小夜は憂いた顔で言った。


クラウンは小夜の話を聞きながら、マップをタップして気がつき、イノセント刑事に聞いた。


「イノセント刑事、小夜さんの出身の方の村、水源がダメって言ってたけど、今は貯水槽の会社になってる。知ってる?」


「え?!」みな声が揃った。


スノーは横からのぞいてマップ情報を読んだ。「宗教法人アクア、経営コンサルタント、、シャーマン・マヌ・スタンリーだと?」スノーは読み上げ、小夜を見た。


小夜は瞬きせずに、目を開いたまま固まっている。


「小夜、大丈夫か?」虎徹が声をかけた。


小夜はわなわなと顔がひきつり言った。「見に行ってくる。スタンリー一家、許せん!」


「小夜、落ち着け。イノセント刑事に話してみよ。」虎徹がかがんで小夜の視界に入った。


スノーも慌てて、立ち上がる小夜を座らせた。


「落ち着いて話してみて下さい。見に行くなら、ギルドの3人も一緒に行ってくれるな?」イノセント刑事は優しい声で言った。


クラウン達はうなずいた。


小夜は残ったコーヒーを飲みきって話し出した。


「父は決して謝らない者だった。母は辛さに耐えられず、地元で有名なシャーマン・マヌ・スタンリーの所に頻繁に相談に行く様になった。母は部族を良くしたい一心でシャーマンの言う事を信じきっていた。シャーマンは母にこちらの方角に行けだの、行ってはならぬだの、次第に周囲から孤立させた。父が酒に溺れて亡くなると、母に取り入り、部族の相談役となった。水源が汚染されているから吉方位に村を開拓移住する様に言われ、移住した。開拓には何年もかかった。お金も必要なのに、高いお布施を要求してきたり、家宝は全てうばわれた。姉妹でシャーマンの所に抗議に行っても『ご寄付です。』の一点張り。母が出てきて、納得済みだと母に追い返された。しばらくして、開拓の資金が底を尽きた頃、テロリストに襲われたんだ、私以外。」


イノセント刑事は静かにうなずきながら、小夜の話を聞いた。


クラウンは悔しくなり唇を噛んだ。スノー、虎徹は険しい顔で話を聞いた。


小夜はギルド3人の顔を見て、優しい表情に戻った。「誰にも話した事なかったけど、案外話してみるとすっきりするものね。一緒に来てくれるなら、私、バイクに乗ってみたい。」


虎徹は眉を緩めて、軽くうなずいた。


イノセント刑事と話し合った後、虎徹のバイクの後ろに小夜を乗せ、クラウンとスノーはキャンピングカーで小夜の出身、水源の村に向かった。


挿絵(By みてみん)


キャンピングカーに乗り、スノーは運転席、クラウンはその隣りに座った。クラウンはチョコを呼んで膝の上に座らせた。「チョコ、ラファエルさんが送ってくれた本とかログを見て探すぞ〜。よしよ〜し。」クラウンはチョコにおやつをあげた。

ゴーストもおやつを欲しがって、後部座席から鼻をクラウンに押し当てた。クラウンは撫でてから、ゴーストにもおやつをあげた。


クラウンはディスプレイを出し、シャーマン・マヌ・スタンリーの本やインタビュー、ラファエルからの情報ログ、公開しているプライベートのログなどシャーマン・マヌ・スタンリーの画像を数百枚チョコに見せた。


「なるほどな。シシッ。特定できるといいな。」


「これだけ特徴ある背景が映り込んでるし、色んな人達も一緒に写ってるから、いけるんじゃないかな〜。」


「有名なシャーマンらしいから、別宅に神殿もありそうだな。」


「スノー!あったよ。公開されてる神殿は3カ所、その敷地内にそれぞれ家もあるよ。うわー、豪華で引く〜。」


「ろくでもねーな。クラウン、この先揺れるぞ。」


ハードロックが流れ、キャンピングカーは山道に入った。


⭐️


続く。

絵:クサビ

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