3巻 2章 3話
25m程の石の円柱を乗せたトラックが荒野を走る。運転している農園長はヴァルとコール中だ。
「園長〜良かったですね〜。カルラ様が守護神の農園なんて、そうそう無いですよ〜。」
「あー。昨日正式に聞いた。コーヒー農園があった頃は守ってくれてたそうだ。こっちに来てからツイてる。」
「2回も襲われたのに前向き〜。今日はあと1往復おねが〜い。」
「オーライ!もうすぐ着くぞー。」
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ハニは地雷原に設置したクレーンリフトの一番高い所で構えた。
「タクシス!」
地雷原を黄緑色に光る円柱が転がり始めた。
ドカーン!ジリジリジリ。ドッカーン!
地雷除去でハニは連日パワーを使い続けた。農園長が到着し、新しい円柱の石を届けてくれた。
ハニは休憩をしながら農園長とヴァルとランチした。
「あのよー、効率良く転がす順番、方向をクラウンに聞いた方がいいんじゃないか?」
「そっかー。同じ本数で効率のいいローラーの掛け方あるかな?」ハニは聞いた。
「すぐに答えはわからんが、賢き者なら知っていそうだ。それよりハニの体調が心配だよ。連日ヘロヘロになるまでやっているだろ?」
「やりはじめると、ついつい夢中になって。ここまでやったら終わりー。にしないとね。」
「それがいい。」
「何?面白い話?」ヴァルが食後のコーヒーを淹れて持って来た。
「クラウンに効率のいいローラーの掛け方を聞こうって話。」ハニはコーヒーを受け取った。
ヴァルはナイス!のハンドサインをした。
「ヴァル、テロリストが連れていたアードウルフの子はどうなったんだ?」農園長はコーヒーを一口飲んで言った。
「イノセント刑事が手配してくれて、メトロポリタン動植物園で植物の世話係しながら施設内のスクールに通うって。」ヴァルは言った。
「ナオミ刑事に聞いたら、あんまり話さないらしいけど、植物のお世話が上手なんだって。」ハニは笑顔で言った。
「ううん。すべての雲には、銀の裏地がある。だな。」農園長はコーヒーを飲んで美味い顔をした。
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ハニーアナグマ族の住処、北の国境を横に連なった山々、ウララー山脈の東側に、クラウン、スノー、虎徹、チョコ、ゴーストは偵察に来た。
山頂付近に洞窟、山の麓にハニーアナグマ族の拠点が見える。
イノセント刑事から、これまでに集めた情報や手がかりのログをもらい、ウララー山が見渡せる所で、クラウンはチョコのイカロスを使ってみた。
「やっぱり!ウララー山であってたー。ここにテロリストの5男がいるね。えっと、名前はヌム・スタンリーだ。なんでこんな山の中にいるんだろ?」クラウンはしゃがんでチョコを撫でた。
スノーは真剣な顔でマップとマーキングポイントを見た。
「街に住めないほど悪さしてると、辺境地しか選択肢がなくなるのかもな。シシッ。クラウン、こっちの裏手の排気口を使って侵入できそうだ。今、ルートを探す。ちょっと時間くれ。」
クラウンと虎徹はうなずいた。
虎徹は外を見渡した。
「ここでの暮らしぶりは外に一歩でれば危険。塀やドームの内だけに秩序がある。」
「うん。ホント治安が悪いよね。」クラウンは返事をした。その時、ハニからメッセージが来た。クラウンは地雷除去エリアのマップをタップして大岩や砂山の配置を見て、サクッと返信した。
スノーがルートを割り出した。
「よーし、このルートでどうだ?偵察用と、こっちは動かないマーキングポイントの塊があるから、この部屋も怪しいな。」
クラウン、虎徹はうなずき、ルートを確認して設定した。
「よーし、偵察隊出陣ー!イノセント刑事は後で呼べばいいよね?」クラウンはチョコとゴーストを撫でながら2人を見上げた。
スノーと虎徹の目はやる気に満ちていた。
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ウララー山の裏手に回り、虎徹は犬達を抱えて飛翔を使った。
崖から飛び降り、排気口の前に着地した。
虎徹は犬達を下ろして撫でてから、排気口を壊して開けた。チョコとゴーストはぐいぐい進む。
クラウン達はディスプレイを立ち上げ、ログを見守った。狭い岩場の隙間を、スノーがみつけたルート通りに犬達は素早く進む。換気扇の先から光が見えた。
ゴーストは換気扇のキャップを外し、オートレンチを咥えて当て、換気扇のプロペラを外した。スノーはマーキングポイントで、誰もいない事を確認してGOサインを出した。
換気扇から侵入すると、豪華絢爛な部屋があった。「うわっ、豪華〜。僕の好きなお菓子がいっぱーい!」クラウンは驚いた。
ゴーストが棚をあける。並んだカツラを犬達は嗅ぎまくる。チョコはパーテーションの先に入り、寝室、浴室を見つけた。「ゴースト武器を探せ。」スノーの命令でベットの下、棚の隙間、洗面台の棚に武器を見つけた。スノーは武器が見つかる度に「シシッ。」鼻息を鳴らして犬達の活躍を喜んだ。
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数時間後。
スノーはイノセント刑事にコールした。
「スタンバイできました。」
「たった数日で突き止め、その数時間後に捕獲となると一度戻ってミーティングを、、、嫌、君達を信じよう。今、チームとヘリで向かっている。」イノセント刑事は少し動揺していた。
「討伐ならすぐ行けますけど、捕獲を優先でいいんすか?」
「そうなんだ。最悪、討伐で問題ない。しかし誘拐された者の情報をなんとか聞き出さないと、銀河中を探すのは不可能だ。あと10分で到着する。」
スノーの近くでクラウンはブラストとコールしている。
「ブラスト、技術会議中なのに調達ありがとー!」クラウンはブラストにドローンで配達してもらったチップスを食べてみせた。
「すぐ近くの店で買えて良かったよ。オレもそっち行きたかったなー。まだこっちは終わらないから、頑張れよ。なんか虎徹さんニヤニヤしてない?」ブラストは少し疲れた顔で笑った。
「拙者は捕獲が楽しみなだけだ。ブラスト殿も健闘を祈る。」虎徹は小さく手をあげた。
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イノセント刑事達がヘリで到着し、防弾装備に着替え始めた。
クラウン達は先行して、警察が提供してくれたステルスドローンに乗って排気口に向かった。
クラウン、スノー、虎徹はギルドのワッペンを合わせて笑い、同士討ちしない設定にした。
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犬達がヌムの部屋に再び潜入した。それぞれが配置に付き、みなログを見守った。
ガチャガチャ音がして扉が開いた。
太々しい顔でヌム・スタンリーが入って来た。
机に置いてあるチップスの筒を取り、ソファーに歩きながら蓋を開けた。
ポン!バシュー、しゅるしゅるしゅる〜〜。
「ドワー!!ハア、ハア、ウオー!」
チップスの筒から虹色のバネが飛び出し、3mのバネが部屋を縦横無尽に跳ね回る。
「コノヤロー!ガキみてーな事しやがって!オイ!オイ!」
ヌムの大声を聞きつけてアードウルフの側近がはしごを駆け上がった。
「どうしました?!なんだコレ?これに叫んでたんですか?」アードウルフ族の男はニヤけてしまった。
「テメーコノヤロー!」ドス!
ヌムは怒り、足蹴りしてアードウルフをはしごの下に蹴り落とした。
「俺じゃありせん!買って来たヤツらでしょ。ペッ。」蹴り落とされたアードウルフは血の混じった唾を吐いた。
「買って来たヤツらをアニマルケージにぶち込んでおけ!!後で罰を与える!」バタン!ヌムは上から睨みつけ、扉を勢いよく閉めた。
ヌムは苛立ち、パーテーションを勢いよく払い退けて倒し、シャワーの蛇口を捻った。服を脱いでバスタブに立ち、シャワーを浴び始めた。
クローゼットからプリズムを出したチョコが飛び出し、カラフルポップコーンをバスタブに投げ入れた。驚いて振り返ったヌムは目を凝らした。「まさか動物か?」
その隙に、ゴーストはシャワーの温度を最大に上げた。シャワーの温度は高温になり、熱湯がヌムの背中にかかった。犬達は部屋を飛び出した。
「ウギャー!」ヌムが飛び上がると、バスタブの中でカラフルポップコーンが弾け、ヌムはかがんだり、飛び跳ねたり、カラフルポップコーンを踏んで滑り、すっ転んだ。バシャーン!パチパチ!バチバチバチ!「アツ!ハフ!アツ!ウオー!」ヌムはバスタブで大暴れ。
チョコとゴーストは最上階の廊下に出て、避難用のテラスの壁をオープンにした。
イノセント刑事や警官達はステルスドローンで次々に侵入し、クラウン、スノー、虎徹も犬達と合流した。
イノセント刑事を先頭に警官達はヌムの部屋に向かい、クラウン達は2階へ向かった。
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ヌムの部屋。
ヌムはカラフルポップコーンまみれで、ベッドの下の棚を勢いよく引いた。「ギャー!ダハー!爪が、、ハア、どうなってる。コノヤロー!」犬達が武器棚をカミハタの実の接着剤で固めていた。
イノセント刑事が部屋に到着した。「手を挙げて投降しろ!」
ヌムはよろけながらも洗面台の棚を開け、銃を構え、イノセント刑事に向かって撃った。
ポン!ポヨポヨ。
ハートのマシュマロが飛び出し、高級カーペットの上を転がった。イノセント刑事達はヌムを一斉に取り押さえた。
ヌムはおもちゃの銃を壁に叩きつけて叫んだ。「さっきからくだらねーんだよ!!殺してやる!」イノセント刑事はヌムに手錠をかけた。
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2階。
アードウルフの側近は買い出しをした部下を集めて、2階のアニマルケージにぶち込んだ。5人は文句をいいながらケージに座り込んだ。
岩壁の部屋の奥には、もう一つアニマルケージがあった。亜人やエルフ族の女性が5人座っている。スノーはクラウンと虎徹に静かにのサインをしてシェルを使った。
側近は女性達に近づき「お前、ヌムのダンナの機嫌を取ってこい。こっち来い。ちがう、白髪のお前は座ってろ!」亜人の女性は下を向いたまま立ち上がり、数歩前に出て、前を向いて凝視した。側近はイラついて声を荒げた。「早く来いって、、ううう、、。」アードウルフは気を失った。スノーは岩肌で近づき締め落とした。
虎徹とクラウンが上の階から下りて来ると、アニマルケージ内の部下達は騒いで檻から手を伸ばす。
気絶した側近の手からは鍵の束が落ち、スノーは拾い上げて、虎徹に渡した。「オレは表の拠点からアナグマが来ないよーに、この下の扉を閉めて来る。避難は頼んだ。シシッ。ゴースト行くぞ。」スノーはスリープスタンプを騒ぐ部下達に押し当て眠らせた。スノーとゴーストは下の階に向かい、一階の扉をロックした。
鍵の束を虎徹が試す。
白髪の長いエルフが虎徹に駆け寄った。「弓をそいつらに取られた。緑色の弓、見てない?」
「見ておらん。開けるから待っておれ。」
「虎徹さん、マーキングポイントが3つ来る。」クラウンは警戒し、虎徹は刀を抜いた。ハシゴから飛び上がり、檻の前に3人のアードウルフが現れた。1人は緑色の弓を構えている。
クラウンと虎徹はアイコンタクトした。
「ロージー。」「飛翔。」
クラウンと虎徹がジャンプするとチョコからプリズムが出て光り、虎徹の刀は炎に包まれた。
虎徹は中央のアードウルフを回転斬りした。横の2人のアードウルフも一瞬で爆発した。
クラウンは鍵の束を慌てて拾い、解除を試す。
スノーが駆けつけた。「大丈夫か?キッチンは空だった。こっちに来てたか。」
虎徹は弓を拾い挙げた。クラウンが鍵を開けた。エルフが虎徹に駆け寄り、虎徹が弓を渡すとエルフは弓を抱きしめた。
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外に大型の警察の輸送ヘリが2台現れ、モニターにはカラフルポップコーンまみれのヌムとイノセント刑事が映った。
「ヌムを捕らえた。ここを制圧した。拠点のテロリストは大人しく投降しろ。」
テロリスト達は大人しく投降した。
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続く。
絵:クサビ




