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トレモロ 3  作者: 安之丞


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10/22

3巻 1章 9話



中止になったバーニングデスロード実験場で、ヴァルと研究員達はボックス型と円盤型の機器を砂に並べていく。


ブラストはコントローラを握り、螺旋を描く様に操作し、一斉に火柱を上げた。


正午を超え、日差しは灼熱の域へ。熱波を浴びながら、ブラストは空に向かって構えた。「ストーム!」爆風がおきてトルネードは火柱を飲み込み空高く昇っていく。


「フォウ!準備OK〜!10分後くらいかな?雨早く来いよ〜。」ヴァルはコールして、ヘリの操縦席に飛び乗り、出発の準備に入った。ブラストもヘリに駆け込み、研究員達は応援しながら見送った。


⭐️


カルラに許しを得ている為、山道からエーデルワイス砦に向かい、虎徹はバイクで到着した。


「行くぞ。」虎徹がコール。


「飛翔。」虎徹は砦の壁の外から高く飛び上がり、南西の見張り台の屋根に着地した。

ドスン!


見張り台のアードウルフとハニーアナグマは屋根を覗き顔を出した。「鳥か?」虎徹は逆側の屋根から、見張り台に侵入し、2人を斬った。


砦の外壁の上の見張りは6人。

虎徹はクラウンに言われた通り、火薬庫側から討伐に向かった。


見張り台から壁の上に降り、身を低くして走る。武器棚に身を潜め、歩いてくる見張りを斬った。斬った見張りは武器棚にひっかけた。次の見張りはそのまま走りながら切り捨て、壁の外に投げた。


火薬庫を通りすぎた所でコール。「クラウン殿、火薬庫を通過。」


「了解。」クラウンはカエサルの外に出て、外壁そばの茂みで、フレイヤを呼び出した。


炎の女神は現れた。「フレイヤ、火薬庫を燃やせ!」「山ほどあるな!迦楼羅炎やってみせようか?」「スノーや動物を燃やさないで。行け!」クラウンは命令した。


フレイヤは壁を垂直に飛び、砦の南東から侵入。目の前の火薬庫の窓を突き破って突入した。


バリーン!


火薬の入った樽の棚が並んでいる。フレイヤは棚から大樽を2つ両肩に乗せた。入り口の見張りをしていたハニーアナグマは片手斧を投げつけた。フレイヤは床の小さな火薬樽を足ですくい投げ、片手斧を防いだ。樽は壊れ、火薬が部屋に飛び散った。フレイヤは窓から飛び出す直前、飛び散った火薬に火の玉を撃った。


ボカーン!

ボカーン!

ボカーン!


次々に爆発が起こる中、砦の警報が鳴った。燃え盛る火薬庫の真上でフレイヤは火薬樽の蓋を開け、火薬をサラサラと飲み込み干した。ゴウゴウ!口から炎を吐いて、カルラ炎をやってみせた。火薬庫、倉庫、要塞の最上階は火の海になった。


挿絵(By みてみん)


フレイヤはもう一つの大樽を倉庫の前の門に向かって投げた。南西の門に向かって落ちていく大樽に、フレイヤは火の玉を撃った。門は吹き飛び、フレイヤは消えた。


燃える門に向かって、倉庫から慌てて飛び出した2台のトラックが門の外に走り去った。


外で待ち伏せしているナオミ刑事達が追跡する。「テイザー攻撃がアナグマ族には効かないから、追跡はまかせて。」ナオミ刑事からコール。


ハニも車の外に出て、チョコとゴーストにヘルメットやベスト、ネットランチャーを装備させた。


「チョコ、ゴースト、おいで。」先に向かっていた、クラウンの合図で開いた門に犬達は一斉に走り出した。


青空に突然、積乱雲が迫って来た。


ハニは構えた。「タクシス。」自身の体を浮遊させ、迫ってくる積乱雲を背に、砦全体を見渡した。アニマルケージは大小4つ。ハニは4つ全てを持ち上げようと、両手を広げ掲げた。アニマルケージは動物が暴れても動かない様に、強力なくさびで固定されていて、ハニはなすすべなく地上に降りた。


「奪還に失敗。強力に固定されてる。」ハニのコール。


犬達は開いた門へ向かう途中、虎徹が投げた見張りの死体に、ゴーストが鼻を近づけた。カギをポケットから探し出し、ゴーストは咥えたまま、門の近くで潜んでいるクラウンに渡した。クラウンはゴーストをなでた。


「ゴーストがアニマルケージの鍵を見つけた。中に入って奪還しよう。ハニはパワーが使えるまで、門のそばの茂みで待ってて。」クラウンのコール。


「了解!」ハニは返事をした。


「外の見張りを一掃した。このまま本丸の2階から入る。」虎徹からのコール。


「山道に到着〜。ブラストと向かってるよ〜。」ヴァルからのコール。


クラウンはみなのコールで力が湧いてきた。犬達と門から砦の中に入った。南西のアニマルケージの鍵を開けた。兵舎に潜んでいたアードウルフが大鎌を持って襲って来た。クラウンは構えた。「ロージー!」バン!アードウルフは倒れた。さらに2人、両刃斧を持って出てきたが、檻からでたサイ3頭に連続で跳ね飛ばされた。


壁の内側は棘だらけの生垣が植えてある。クラウンと犬達はスノーがいる北東のアニマルケージを目指して進む。ゴーストがクゥンと鼻を鳴らした。スノーは気絶したまま横たわっている。スノーの横の檻にいるサーベルタイガーは、ゴーストの姿を見て興奮して吠え始めた。


ハニは門の外の茂みに隠れると、葉が揺れ始め、パラパラ大粒の雨が降って来た。そこへ、ブラスト、ヴァルも合流した。ハニもスタミナが回復し、ブラスト達と砦の中に入った。


「ヴァル!早く来て!」クラウンは苦しそうな声でコール。


ヴァルが駆けつけると、スノーのケージの中でクラウンはサーベルタイガーの牙をつかみ、入れさせない様に必死に守っている。クラウンは引っ掻かれ、ギルドスーツには血が滲んでいる。


「スピリット!」ヴァルが構えるとサーベルタイガーの目は紫色のグラデーションになり、大人しく門の外へ向かって走り出した。


クラウンが座り込むと、雨が大降りになってきた。スノーが目覚めた。「シシッ!シー!」


「スノー奪還!」ハニがコール。


「1人逃げられた。中を制圧す。」虎徹のコール。


「ハニ、ヴァルは動物の保護をお願い。」クラウンはヴァルに鍵を渡した。ブラストはストールを裂き、クラウンの太ももや背中の傷を止血した。


ハニとヴァルは残り2つのアニマルケージを開けに行った。


その時、要塞の1階の大広間の扉が開いて、skull knock 3が現れた。


「何がmcsとギルドの二刀流だ、ウラララ!中途半端なっ、軍人のなりそこないがー!」スカルノック3は立ち上がったスノーに突っ込んで来た。


スノーも向かって走り出した。

「悪事の顛末(てんまつ)もわかんねー薄志弱行(はくしじゃっこう)が!」スノーは手を交差させガードした。


スカルノック3は大きな爪と手で何度も殴る。水飛沫が飛び散る。「ガウ!はくしー?なんだと!」


スノーは足としっぽでスカルノック3を薙ぎ払い、倒す。片足を持ち上げ捻る。「本を読んだりなー、シシッ。」膝を力ずくで曲げ、スカルノック3の背中を反らせた。スノーはサソリ固めをキメた。「映画見て鍛えろよ!シッー!」


スカルノック3は頭に血が昇った。両手で地面を押し上げ、身を揺すると、雨で濡れた事で滑り出た。先に立ち上がったスノーは何度か足を振り下すが、転がってスカルノック3は泥まみれで避ける。スノーの足が空振りする度に、爪で太ももやしっぽが引っ掻かれていく。雨のおかげですぐさま傷は癒えていく。


スカルノック3はアニマルケージ側の木箱を駆け上がり、ジャンプしながら両膝を曲げ、スノーのアゴに激突した。蒼魔刀(そうまとう)を喰らったスノーは後ろに転がって吹き飛んだ。


大雨の中よろけながら立ち上がったスカルノック3は、バランスを崩し数歩下がるとケージに背中をついた。クラウンとブラストはケージの扉を思い切り蹴った。スカルノック3は扉で背中を強打し、片膝を突いた瞬間、スノーがタックルし担ぎ上げた。


「クラウン!ブラスト!キメろ!シッー!」

持ち上げられたスカルノック3の頭をクラウンとブラストは両側から蹴り飛ばし、スカルノック3は白目になった。スノーは腰を回転させて投げ、地面に叩きつけた。


挿絵(By みてみん)


パワースラムをくらったスカルノック3は立ち上がらなかった。


雨が強まる中、3人はハグした。


「動物達も警察ロボと保護ケージに移送完了!みんな、無事?」ハニのコール。ブラストがスノーの顔を見せようとディスプレイを立ち上げると、背後からスカルノック3が両手を組んで振り上げた。


その瞬間、水飛沫が一文字に飛ぶ。

ズバシャーン!


虎徹がスカルノック3を斬った。「討伐完了。」虎徹はコールした。


⭐️


クラウンは安堵した瞬間、はっとした。「あれ?チョコ達は?」


ブラストが改めてディスプレイのマップを見た。「要塞の中だね。地下かな。」


クラウン、ブラスト、スノー、虎徹は要塞の地下に駆け下りた。

長い廊下の一番奥の扉の前で、チョコはプリズムを出し、尻尾を振って待っていた。ナンバーロックをゴーストが前足と鼻を使って解除し、扉が開いて行く。チョコとゴーストはネットランチャーを構え、撃った。


ズバーン!


クラウン達が駆け寄ると、衝撃でネットに絡まり気絶した男が1人倒れていた。


身なりが良く、立派な宝石がついたアクセサリーをしている。部屋も高級カーペットや高そうな調度品、装飾品が部屋中にあり、防火仕様のシェルタールームにはトイレや冷蔵庫も備えてあった。


クラウンがディスプレイをかざすと、[スタンリー一家、三男「メンサ・スタンリー」貿易商]と表示された。


⭐️


2章に続く。


絵:クサビ

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