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ゼロヨン★☆グラウンド

作者: 花 美咲

ホーネット vs グラスホッパー



郊外のラジコンショップ・"540模型 "



店主・中村が、この店を立ち上げたのには、深い理由があった。


かつて日本選手権の常連として名を馳せた中村だったが、近年のラジコン業界の流れ ー ー ハイテクプロポ、高性能アンプ、高額なオプションパーツ ー ー


そうした "お金でラジコンの性能が決まる"ようなラジコン業界の現状に、強い危機感を抱いていた。


これでは、ラジコン業界の未来を担う子供たちが入り込む余地がない。


「 子供たちが遊ばないラジコンに、未来はない 」


そう考えた中村は、ノーマルラジコンと入門用プロポ、均一な540モーターを軸にしたレース形式を重視し、"540模型"を開店。


サーキット使用料は無料、コンセントも使い放題、エントリー費用も無料、さらに、ラジコンキットを買いに来た子供たちには、丁寧な無料の組み立てアドバイスを行い、"自分の手で完成させる楽しさ"も伝えてきた。


そんな姿勢に共感し、近所の子供たちは、この店を"ゴーヨンマル"の愛称で呼び、足繁く通うようになった。


店の裏手には、手作り感満載のオフロードラジコン専用のオフロードサーキットが広がっており、週末になると、名もなきラジコンレーサーたちがこぞって集まる。


最近のブームは、"オフロードラジコンによるゼロヨン勝負"


オフロードラジコンにとって、本来の醍醐味は、コーナーリングとジャンプだという声もあるなか、540模型では、ただの"直線勝負"が、なぜか、異様に盛り上がっていた。


オプションパーツ使用不可のキット純正のノーマルオフロードラジコン、入門用プロポを使用しての勝ち抜き戦のトーナメント方式が、勝負にスリルを与えていたし、優勝賞金3万円という金額が盛り上がりに一役買っていた。


昨今のラジコン業界に物申すラジコンレースだと、540模型の店主・中村は、子供たちに語っている。


高性能プロポ、高性能アンプ、高性能サーボ、高性能パーツ、子供のお小遣いの許容範囲を越えて、最早、金銭的に余裕のある大人のオモチャになっている。


子供のお小遣いの許容範囲を越えているから、子供とラジコンの距離が広がっている。


お金を注ぎ込んだラジコンが一番速いんでしょって風潮を問題視した、540模型の店主・中村は、未来のラジコン業界を背負って立つ人材を育成しなければいけない危機感を感じていたし、店主・中村自身も、全日本選手権に出場する腕前の持ち主だった。


そんな彼が、ノーマルラジコン、素組みから、オプションパーツの重要性、走りの劇的変化を子供たちに伝えたい思いから、540模型を開店させたのだった。


540模型の店名の由来は、ラジコンキットに付属する540モーターにこだわりたいという思いから ... ...!


そんな、540模型が主催するオフロードラジコンによるゼロヨン勝負が、今度の日曜日に開催される。


小学生の男の子たちは ... ...


「 今度の日曜日、ゼロヨンレース、観に行こうぜ!」


... ...と盛り上がる。


小学生の男の子たちにとって、"540模型" は夢の入り口。


お年玉を握りしめてラジコンキットを買いに来ると、店主・中村を筆頭に、スタッフたちが無料で組み立てのアドバイスをしてくれるし、ラジコン初心者にも優しく、子供たちの成長と遊び心を支える場所で、現在(いま)、注目を集めている2人の高校1年生がいる。


田宮模型から販売されている、オフロードラジコン・ホーネットを操る、直線番長と呼ばれている走り屋の哲郎(てつろう)と、もう1人、こちらもまた、田宮模型から販売されている、オフロードラジコン・グラスホッパーを操る、整備士(メカニック)幸二(こうじ)だ。


彼らの勝負を一目見ようと、子供たちは、サーキットの柵の外に張り付くレベル、"憧れのラジコンレーサー" として超人気なので、今度の日曜日もオフロードラジコンによるゼロヨンレースに出場をしているので、盛り上がることは確定的である。




レース前日の夜、幸二は、ピットスペースの片隅で、黙々とグラスホッパーを整備していた。




「 中村さん ... ... もし俺が勝ったらさ、この優勝賞金でピットテーブルにUber Eatsを頼んで、みんなでご馳走を食べながら、ラジコンについて語り合いたい。勝負が終わったあとも、ラジコンを愛する者同士、もっと仲良くなれる気がするんだ 」


その言葉を聞いた店主・中村は、ふっと笑った。


「 そうか ... ... だったら賞金は3万円じゃ足りないな、5万円にしてやる。お前がその想いを形にするなら、俺も応援するよ 」


それは、単なる気まぐれではなかった。


店主・中村は知っていた、哲郎と幸二が、ただのライバルではないこと。


かつては一緒にラジコンを始め、互いに師弟として店主・中村の下で学び、切磋琢磨してきた過去。


走りを極めた哲郎と、整備を突き詰めた幸二。


その2人が正面からぶつかるこの勝負には、単なる速さだけではない、深いドラマがあることを・・・





日曜日、天気は快晴、540模型主催によるオフロードラジコン・ゼロヨンレース大会が予定通りに開催された。





ピットテーブル無料解放、電源コンセントも無料解放、エントリー費用は無料、子供たちが出場しやすい取り組みも盛り上がる要因で、出場選手たちも、俺のオフロードラジコンが一番速いと豪語する名もなきラジコンレーサーたちが集結している。


出場選手たち、俺のオフロードラジコンが一番速いと豪語する名もなきラジコンレーサーたちを破竹の勢いで破り、決勝に勝ち上がってきたのは、540模型、出場選手たち、ギャラリーたち、みんなの予想通り、田宮模型から販売されているホーネットを駆り、その圧倒的な直線スピードから"直線番長"の異名を取る高校1年生の哲郎。


見るからに自信満々、余裕の表情でピットに立っている。


その対戦相手は、同じく高校1年生の幸二。


使用するオフロードラジコンは、同じ田宮模型から販売されている "グラスホッパー" 


本来は、入門用の軽量マシンで、ホーネットよりも格下とされている。


「 幸二よ! 380モーターが、540モーターに勝てると思っているのか? 楽勝だぜ 」


哲郎が見下したのも無理はない、ホーネットが搭載するのは540モーター、一方のグラスホッパーが搭載するのは、控えめな380モーター、数字が示すとおり、パワーは圧倒的に違う。


だが・・・


幸二のグラスホッパーには、こっそりと540モーターが搭載されていた。


もちろん、レギュレーションは "純正キットのみ"


"オプションパーツ不可"だが、モーター交換は明確に禁止されていなかった。


主催側も、車検でモーターのラベルまでは確認していない。




スタートライン・・・




決勝戦の舞台、コース中央にスリーカウント方式のスタートシグナルが置かれ、オフィシャルが、ホーネットとグラスホッパーを並べる。


ビールケースを逆さまにしたプロポ操縦台にスタンバイする、哲郎と幸二、ピットテーブルから、フェンスの向こうから、ギャラリーが見守る最中、オフィシャルが、スタートシグナルのスイッチを操作すると、ギャラリーの熱気が一気に高まる。


【 カウントダウン、いきます! 3... 2... 1... 】


プッ ♫ プッ ♪ プッ ♬ ポーン 


スリーカウントのスタート合図は、雰囲気を最高潮のレベルまで盛り上げてくれた。


ピットテーブルから、フェンスの向こうから、その場に居たラジコンを愛するラジコン野郎たちが、ホーネットとグラスホッパーの直線勝負に心が奪われていた。


【 スタートォッ!】


その瞬間、甲高く唸るモーター音が響いた。


ブィィィン!と鋭く響くホーネット。


対してグラスホッパーは、低く力強い駆動音。


オフィシャルのアナウンスの叫びが響く最中、両者のマシンはまっすぐ土煙を上げて飛び出した!


ーーが、哲郎が操るホーネットが、わずかに左へ逸れる!


わずかなプロポ操作のミス、それはスタート直前まで、対戦相手である幸二のグラスホッパーを見下していたことで生じた油断だった。


「 まさか、グラスホッパーが横並びで走ってくるとは思わなかった。」


その場に居た全員が、ホーネットの勝利を信じていたので、異様などよめきと歓声が沸き起こる。


「 なっ、なんでーー!」


グラスホッパーの動きに、拍手喝采に、哲郎の叫びが掻き消される。


ホーネットと並走するグラスホッパーの走りに、哲郎は焦った。そして、横に立っている、プロポを握る幸二の顔をチラ見する。


対する幸二は、哲郎の存在など眼中にはなかった。


幸二の視線の先にあるのは、一直線に走るグラスホッパーだけだった。


「 気に食わないぜ! グラスホッパー!」


焦りが、プロポのステアリングホイールを握る指を狂わせる。


わずかに舵を切りすぎた、その瞬間を、車検オフィシャルスペースから、哲郎と幸二の対決を見守っていた店主・中村は、見逃さなかった。


「 哲郎、お前はわかっていない。ラジコンは直線を走らせるってのが一番難しいんだ、オフロードラジコンは、特に繊細なステアリング操作が必要なのに、それを怠ったお前の負けだ。 」


店主・中村が、心で呟いている最中にも、哲郎は焦っていた。


焦って、わずかに舵を切り過ぎた。


ゴールラインを通過することなく、哲郎の操るホーネットがコースアウト、自爆。


スッテンコロリン ... ドンガラガッシャアァーン ...


【 勝者、グラスホッパーを操る幸二選手 ... ... 】


運営のアナウンスが、オフロードサーキットに響く。


ギャラリーたちの間に、微妙な沈黙のあと、どっと歓声が沸いた。


あのグラスホッパーが、ホーネットに勝ったぁーー!


ゴールラインを通過して、停車しているグラスホッパーに視線が集まる。


そのグラスホッパーを回収する、勝った幸二の顔に笑顔はない。


ただ、そっとプロポを置き、モーターの熱を確かめた。


その指先に、ほんの少しの熱と、誇らしさが残っていた。


幸二の姿を見守っていた店主・中村は、幸二の顔に笑顔がない理由をわかっていた。


ホーネットとグラスホッパーのゼロヨン勝負をギャラリーした者たち、幸二の顔に笑顔がない理由を理解する者は皆無だろう。


店主・中村レベルのラジコンキャリアでないと理解することは、難しいだろう。



拍手、拍手、拍手喝采・・・



オフロードサーキットには、ゼロヨンレース参加者、オフィシャル、ギャラリー、全員参加で、拍手喝采の最中、優勝 ... ... 幸二選手とアナウンスされる瞬間だった。


「 ちょっと待った!」


決勝戦が終わり、優勝、幸二選手の名前が呼ばれる直前、哲郎から抗議が入った。


「 おい、あのグラスホッパー、モーターを交換しているだろう? 純正じゃない!失格だ!」


周囲が、ざわつく。


「 ホーネットのキットに付属しているのは、540モーターだ。グラスホッパーのキットに付属しているのは、380モーターだ。モーター交換は、明らかに反則じゃないか?」


決勝戦のあと、敗れた哲郎が怒りをぶつけてきた。


その場に居た者も一瞬、静まりかえる。


だが、幸二は一歩前に出て、ピットテーブルからグラスホッパーの組立説明書を取りに行き、哲郎の前で、グラスホッパーの組立説明書を開いて見せた。





田宮模型 グラスホッパー 基本スペック


全長389㎜ 全幅223㎜ 全高135㎜ 車体重量・830㌘ モーター・380タイプ( 540モーターも使用可能※別売 ) 駆動方式・後輪2輪駆動 前後共にフリクションダンバー 3ピースタイプホイール 中空ゴム製フロントグループドタイヤ 中空ゴム製リヤパドルタイヤ 軸受けは前後輪共にボールベアリングに交換可能 ボールアジャスターつきステアリング 特殊強化樹脂製バンパー





「 ここ、見てみなよ。」


幸二が、指差した先には、こう記されていた。


※540モーターも使用可能※別売


「 つまり、俺のグラスホッパーは、このキットの正規の性能を使っただけ、レギュレーション違反じゃない 」


主催の540模型店主・中村も組立説明書に目を通し、頷いた。


「 うん、間違いない。これは、アウトじゃない。完全にセーフ 」


店主・中村を中心にして、オフロードラジコン・ゼロヨンレース運営スタッフの緊急審議が始まる。


緊急審議を見守っている、出場した選手たち、ギャラリーたち、緊急審議の結果は即決だった。


【 幸二選手のグラスホッパーは、仕様上540モーター対応の純正状態であると認められます。従って、レギュレーション違反には該当しません。】


それでも納得いかない哲郎に、幸二はまっすぐに言った。


「 もし、まだ納得いかないなら、もう一度走ろう。今度は、ちゃんとお互い全力で。」


店主・中村が、マイクを取る。


【 よし、再戦だ!】


オフロードサーキット場内に歓声が沸く、場内のノリノリの雰囲気を、さらに盛り上げるために、再び、店主・中村が、マイクを取る。


【 ついでに、賞金も上乗せする。"5万円 " 優勝者にふさわしい賞金だろ? 】





再戦が決まった翌日・・・




540模型の店内には、常連のラジコン少年たちの間で様々な憶測が飛び交っていた。


「 なんで幸二、ホーネットじゃなくて、グラスホッパーを選んだんだろうな? モーターを380モーターから540モーターに替えたら、普通、フリクションダンバーがネックになって、直線走行は困難なはず!普通なら不利だろ 」


「 フリクションダンバーをオイルダンバーに変更したら、540モーターのパワーに耐えられるグラスホッパーになるとは思うけどな 」


その声が届いたかのように、幸二は、その会話に参加した。


「 ... ... 知らないのか?」


幸二は、店内で販売されているホーネットとグラスホッパーのキット、箱の側面を指差した。


「 ホーネットの車体重量は874㌘、グラスホッパーの車体重量は830㌘、約44㌘も軽い。」


一瞬、空気が止まった。






田宮模型 ホーネット 基本スペック


全長400㎜ 全高150㎜ 全幅230㎜ 車体重量874㌘( RCメカ、バッテリー含まず ) ホイールベース・251㎜ 最低地上高・16㎜ モーター・540タイプ 駆動方式・後輪2輪駆動 トレッド・フロント172㎜、リヤ185㎜ デフギヤ方式・3ベベルデフ ステアリングタイロッド・2分割 サスペンション・フロント/スイングアクスル、リヤ/ローリングリジット ギヤレシオ・8.2:1





「 同じ540モーターを載せるなら、軽い方が、加速が速い。だからグラスホッパーを選んだ、最初から"ゼロヨン"を見据えてな。」


その言葉に、誰もが納得せざるを得なかった。


幸二の勝利は、単なる偶然じゃない。


ラジコンに対する知識と、勝利への戦略が導いたものだった。





再戦当日・・・





雲ひとつない快晴、オフロードサーキットのコースは、540模型スタッフにより完璧に整備されていた。


車検は合格、オフィシャルの手により、再びグリッドに並ぶ、ホーネットとグラスホッパー。


「 哲郎、今度は上から目線で来ないよな? 」


「 ... ... 当然だ。」


540模型の常連の客が、ゼロヨンレースの参加者たちが、ピットスペースから、哲郎と幸二の対決に注目する。


スリーカウント方式のスタートシグナルが設置された、ビールケースを逆さまにしたプロポ操縦台にスタンバイする哲郎と幸二、スタンバイを確認したオフィシャルは、マイクパフォーマンスを開始する。


スターターの手が上がる、40㍍先には、チェッカーフラッグを持ったオフィシャルがスタンバイをしている。


【 カウントダウン、いきます! 3... 2 ... 1... 】


プッ ♫ プッ♪ プッ ♬ ポーン


スリーカウントのスタートシグナルは、540模型の店主・中村が操作している。


スタートシグナルの導入により、フライングスタートの問題が解消された。


そして、正々堂々と、ホーネットとグラスホッパーは、ほぼ同時に飛び出した。


その瞬間、甲高く唸るモーター音が轟いた。


ブィィィィィィィン!と鋭く響くホーネット、対してグラスホッパーは低く力強い駆動音。


並ぶ、並ぶ、抜きつ抜かれつのデッドヒート、唸るモーター音、舞う砂埃、バンピーな路面、どっちのマシンが勝つのか?


ホーネットか? グラスホッパーか?


ホーネットの加速は鋭い、グラスホッパーも一歩も引かない。


抜きつ抜かれつのデッドヒート、最後の瞬間、ほんの数㌢の差でーー 勝者、幸二!


ギャラリーから歓声が上がる中、哲郎は納得がいかない表情だった。


ビールケースを逆さまにしたプロポ操縦台に立っている哲郎が、隣のプロポ操縦台に立っている幸二に言った。


「 なぁ、幸二、なんでお前のグラスホッパーが勝ったんだ? 」


「 ... ... なぁ、哲郎、前回のゼロヨン勝負のあと、ホーネット、ちゃんとメンテナンスをしたか? ネジの緩み、チェックしたか? 」


「 いや ... ... 特にしてない。なんとなく ... ... そのまま ... ... 」


「 俺は全部バラして、フリクションダンパーの調整もして、ギヤの噛み合わせ、モーターのバックラッシュ調整、全部をやり直した。あと、ジョンソン540モーター、ブレークインをしたやつを使ったんだ。」


「 ... ... ブレークイン? ... ... 」


「 哲郎のマブチ540モーターに対して、俺はジョンソン540モーターを使用したけど、俺がジョンソン540モーターをチョイスしたのには理由があるんだよ。」


「 意味がわからん? 」


「 新品のマブチ540モーターとジョンソン540モーターを鳴らした場合、ジョンソン540モーターの方が少しだけ高性能なんだよ。新品のモーターは最初は回転にムラがある、時間を掛けて鳴らし運転すれば本来の性能が出る。つまり、俺が勝った理由は、知識とラジコンへの愛だよ。」


「 俺は、モーターのチョイスを間違っていたのか? 」


負けて悔しそうな顔をしている哲郎に、幸二は、トドメの言葉を刺した。


「 ... ... 哲郎、俺が勝ったのは、ジョンソン540モーターをチョイスしたからじゃない。」


「 じゃあ ... ... なんなんだよ。」


「 知識と愛と整備、勝てるマシンを選び、勝てる状態に整えて、最後まで大事にする。それが、ラジコンの"勝利の方程式"だと思っている。」


幸二の言葉に、哲郎は、しばらく黙ったままマシンを見つめていた。


勝利した幸二に、店主・中村が用意していた優勝トロフィーと賞金5万円が贈呈されたタイミングで、Uber Eatsで注文していたご馳走が届いた。


「 Uber Eatsです、お届けものでーす!」


店主・中村は、再戦が始まるタイミングで、幸二の意向を考慮して、Uber Eatsを手配していたのだ。


幸二が勝っても、負けても、店主・中村は、Uber Eatsの支払いを面倒見てやるつもりだったみたいだ。


ピットスペースのテーブルに、次々と運ばれてくるピザ、フライドチキン、ジュース、アイス、菓子類・・・


大量の食べ物と飲み物に唖然とする哲郎とギャラリーたちーー


「 な、なんだこれ? 」


「 賞金で頼んでたんだよ、俺が負けた場合、中村さんが支払ってくれるみたいだったぜ。」


幸二と店主・中村、師弟の関係は、店主・中村の意向すら理解できるレベルだった。


幸二が、笑って言った。


「 ラジコンパーティーをしようぜ! 哲郎も、お前も、あいつも、このオフロードサーキットにいる全員で一緒に! 勝負は終わった、今度は、ラジコンを語り合う番だ。」


540模型、オフロードサーキットピットスペースに笑顔が広がっていく。笑い声とともに語り合うなか、店主・中村が哲郎と幸二の肩を抱く。


「 お前ら、次の勝負、用意してるからな。」


「 え? 次 ... ... ? 」


「 今後、オフロードサーキットの隣でオンロードサーキットを作る予定だ。次は、オンロードのゼロヨンレースだ。」


本気(マジ)っすか? 中村さん、冗談は顔だけにしといて下さい。」


「 哲郎、中村さんに失礼やって ... (笑) 」


「 たわけ者、哲郎、舗装も始まるんや。タイヤのチョイスは、重要だからな? 勉強しろよ!(笑) 」


店主・中村には野望があった、走りにおいて天才的な感覚を持つ哲郎にドライビングの真髄を叩き込み、整備と知識で抜きん出た幸二には、マシンの構造とセッティングの奥深さを教えてきた。


彼らがいつかコンビを組み、全国のラジコン・サーキットで名を上げてくれることを、店主・中村は密かに夢見ていた。



店主・中村の言葉に驚く哲郎と幸二、沸き立つラジコン仲間たち、ラジコン愛に満ちた宴は夜まで続いた。


この日を境に、540模型のオフロードラジコン・ゼロヨン大会は、単なる"直線勝負"ではなくなった。


速さだけじゃない、工夫と情熱、仲間との絆を競い合う、本物のラジコン競技へと成長していった。


まっすぐ走ることは難しい、だからこそ、まっすぐ向き合う気持ちが、何よりも大切なのだ。







【 終わり 】







"ゼロヨン"は、絆の始まり。


ラジコンが教えてくれたのは、速さだけじゃない。























































実際問題、グラスホッパーに540モーターを搭載して、フリクションダンパーのままなら、走行は、大変だと思います。オイルダンパーの装着をオススメします・・・(笑)








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