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第1話


「ふんふんふーん♪」


 鼻歌を歌いながらご飯を作る。


 今日は待ちに待った「トラベラー・オンライン」の第2陣の受け入れ開始日。


 ログインできるのはもう少し先だから、その間に家事を済ませておく。


 こういうのはできる時にやらないとめんどくさくなるから時間ができたらやるのが大事。


 掃除も終わったし、洗濯物も片付けた。


 仕事についてもとりあえずはいい。


 後はご飯を食べちゃえば雑事は無くなる。


 取り敢えず出来る限りゲームに集中したいからご飯を作るのは今日が最後かな。


 色々買いまくったし1週間は持つでしょ。


「完成〜!」


 料理も完成したし食べちゃおう。


 うんうん。


「90点〜」


 テンションも上がってたからなかなか美味しいのができた。


 幸先いいね。


 よし。


 お皿も片付けてっと。


 お!


 もうすぐ開始だ。


「時間調整完璧〜」


 ゲームの準備をしよっと。


 この日のためにベット型を買ったんだ。


 何回か動作テストもしたし大丈夫。


 寝てゲームを起動する。


 するといつの間にか宇宙空間のような場所にいた。


「ほー」


 辺りの宇宙空間は今までのゲームを超えて真に迫っていた。


 これだけであのリアルなファンタジー世界という謳い文句に納得できる。


「あの大丈夫ですか?」


 そうやってぼーっと眺めていると声が聞こえた。


 声に振り返るとそこには可愛らしい女の子がいた。


「トラベラーさんはダーシュエに行くためにここに来たんですよね?」


 ダーシュエってのは今から行く「トラベラー・オンライン」の世界のことだね。


「うん!楽しみにしてたんだ!」


「なるほど!」


「貴女のお名前は?」


「サーナって言います!ではキャラメイクを始めますね?」


「お願いします!」


 可愛らしい女の子⋯サーナが指を動かすとマネキンが姿を現す。


「まずはトラベラーさんの写し身を作りましょう。この時、トラベラーさんの元の世界の姿のままでは作成することができません」


「身バレ防止ってやつだね!じゃあ、ぱっと作っちゃおう!」


「一応、ダーシュエの世界での姿のため、あまり変な姿はおすすめしません」


「わかってるよっと。できた!」


「速いですね!?すごいです!そして素晴らしい写し身ですね!」


 そう言ってサーナが指を指すのはリアルの身長よりも少し低くした写し身。


 可愛らしく赤で纏まった写し身はあの一瞬で作ったと思えないほどに違和感がない。


「へへへ。これが本業だからね!」


「そうなのですね。では次はステータスを作成しましょう」


 そうサーナが言うと写し身から光が飛んできて目の前で止まった。


「その光に触れてください」


「わかった!」


 光に触れるとステータスウィンドウが現れた。


――――――

Name︰

Race︰

Job︰

SJob︰


HP︰

MP︰

EP︰


STR︰

VIT︰

STM︰

AGI︰

DEX︰

TEC︰

INT︰

MID︰

LUK︰


STP︰100

SP︰10


SKILL︰

――――――


「それがこの写し身のステータスです。そこに情報を入力するとステータスが作成できます」


 ステータスウィンドウを触ると情報の変更ができるっぽい。


 取り敢えずNameをつけとく。


「メイリというお名前なのですね」


「うん!この名前は大切な名前でね!キャラに名前をつける場合、絶対にこれにしてるんだ!」


 続いてRace、種族だね。


 これは色々あって悩むな〜。


「種族ですか。このダーシュエで何がしたいとかはありますか?」


「うーん。元の世界では動くのが苦手だったからこの世界では動けるやつ。つまり戦闘をしてみたいんだよね。それも剣とか使うやつ」


「そうですか。なら獣人やドワーフ、竜人などがおすすめですね」


「それぞれの特徴は?」


「獣人なら素早く力強い、ドワーフなら力強く頑強、竜人なら全体的に能力が高いですが弱点が増えるといった感じですね」


「うーん。どれも剣とか使うなら良さそうだけど戦闘でブンブン攻撃できるかって言うと出来なさそうなんだよね。出来るなら逃げ回ってチクチクする感じがいいな」


「近接で逃げ回りつつ隙があったら攻撃するタイプですか⋯。なら、ハーフリングなどがオススメですね。ハーフリングは素早く器用なため、先程の条件に合います。けれど耐久力はとても低いので攻撃は受けないほうがいいでしょう」


「ふむふむ。ハーフリングとかいいかもなー。あ、でもハーフリングにしちゃうと写し身がもっとちっちゃくなるんだ」


「ハーフリングですからね」


「うーん。なら辞めとこうかな。他にいいのも無さそうだし人間にしとく」


「わかりました」


 次はJobだね。


 選択肢がたくさんだ。


 これはおすすめを聞いておこうっと。


「Jobのおすすめを教えてくれる?」


「Jobもさっきの条件でよろしいでしょうか?」


「うん。お願い!」


「回避しながら攻撃なら双剣士とかですけど、逃げ回ってチクチクってニュアンス的に回避ですらない方がいい。でしたら暗殺者、斥候、盗賊辺りの攻撃力は低いですけど急所に攻撃したら攻撃力の倍率が上がるスキルが取得できるJobがいいでしょう」


「それぞれの詳細は?」


「暗殺者は攻撃力の倍率が上がるスキルがこの中で一番ありますね。斥候は気配察知などの逃げるのに役立つスキルを覚えます。盗賊はこの中で素早さが一番高く小技を覚えやすいので使い勝手がいいでしょう」


「うーん。逃げ回ってチクチクでも戦闘していきたいから暗殺者にしようかな」


「では次はSJobですね。これもおすすめを聞きますか?」


「お願い!」


「SJobはただダーシュエを楽しみたい方なら生産職をおすすめするのですが戦闘重視ということで戦闘を有利に進める職業がいいでしょう。それでさっきの条件を合わせると軽業士、短剣使い、細剣使いなどがいいでしょう。軽業士は身軽になり素早さがもっと上がります。短剣使いは短剣を使うのに特化した職業で先程の戦闘方法に合った毒や麻痺などのスキルを覚えます。細剣使いはほか2つと違い素早さは上がりませんが急所攻撃に更に特化することが出来ます」


「なるほどね。うーん。この中だったら細剣使いかな。攻撃力を少しでも上げたい」


「なるほど特化型ではなく、逃げつつ攻撃もしたいという要望に合ってますね。では次にステータス振りですが、その前に設定を反映させましょう」


――――――

NAME︰メイリ

RACE︰人間 LV1

JOB︰暗殺者 LV1

SJOB︰細剣使い LV1


HP︰200

MP︰60

EP︰180


STR︰120

VIT︰40

STM︰140

AGI︰190

DEX︰150

TEC︰200

INT︰50

MID︰20

LUK︰100


STP︰100

SP︰10


JOB SKILL

暗殺術LV1 気配隠蔽LV1

隠蔽LV1 急所攻撃(J)LV1

SJOB SKILL

細剣術LV1 歩術LV1

急所攻撃(SJ)LV1 回避LV1

――――――


「人間は最初のステータスは全て100ですがジョブのマイナス補正もあってこのようになっていますね。暗殺者と細剣使いというジョブであるためAGIとTECは高いですが防御面であるVITやMIDはだいぶ低くなっています」


「おー。特化型だ」


「はい。それでステータス振りですがこれはSTPを使います。そしてステータスは上昇のマイナス補正を受けます。例えばこのステータスですとSTPをTECに10振れば20にINTに10振れば5になります。基本的に良いところを伸ばすステータス振りをオススメします」


「うーん。そういえば他のゲームだと攻撃力の参照が弓はDEXとか剣はSTRとかに分かれてるけど細剣はどう?」


「細剣はTECですね」


「なるほど〜。じゃあ、こうしよう」


STM︰140→210

TEC︰200→300


「STMとTECに振るのですね」


「うん。逃げ回ってチクチクするにはAGIが大事だと思うけどSTMがなきゃスタミナ切れになりそうだし、細剣は攻撃力が元々低いっぽいしTECを底上げしなきゃチクチクすら出来ないでダメージが通らないとかありそうだから」


「いい判断だと思います。続いてSPの使い方の説明です。SPはスキルを取得するため使うほかスキルを進化させるのにも使います。SPはスキルのレベルアップで取得できます。スキルの取得はSPを使う、行動で取得する、ジョブを成長させるなど複数の手段があるため、プレイヤーによってはSPを消費するかしないかは分かれることになるでしょう」


「なるほどね」


「もともと持っている10SPは貯めることも出来ますが最初はスキルを取得することを強くオススメします」


「まあ、ジョブスキルだけだとSP貯まるのも遅そうだし、他のスキルの取得手段もどのくらい時間かかるかわからないしね。貯めるとしても初期投資的に使ったほうがよさそう」


「はい。それでスキルの取得ですがSPを押すとリストが出てきます。基本的にSPの消費は1ですが特殊なスキルなどは消費SPが増える場合もあります」


「なるほどー。⋯たくさんあるね」


「こちらもジョブと同じようにオススメをいくつか紹介しますか?」


「うん。お願い」


「でしたら、まず細剣の攻撃力のあがる剣術、弱点が分かる弱点看破、隙を狙いやすくなる観察、距離を開けることのできる逃げ足、ジョブスキルと重ねることで更に攻撃力が上がる急所攻撃、急所攻撃の時に避けづらくする隠蔽などがオススメですね」


「うん。取り敢えず言われたのは全て取得しちゃう。オススメ理由も納得できるしねー。他はある?」


「他⋯ですか。そうですね⋯。最初に2つほどステータスを上げるスキルを取得するのはいいと思います。ステータス上昇系はレベルが上がれば効果は上がっていくので早めに取得してレベルを上げるといいでしょう」


「じゃあ、TEC上昇とAGI上昇を取得しよう」


「後は敵を見つけるための気配察知や攻撃を察知する直感、情報を得るための鑑定、逃げるための走法などがありますね」


「うーん。取得するなら直感と鑑定かな。よし、これで10個!」


「スキルの取得が完了したため、初期装備を配布します。⋯最後に改めてステータスを見ましょう」


――――――

NAME︰メイリ

RACE︰人間 LV1

JOB︰暗殺者 LV1

SJOB︰細剣使い LV1


HP︰200

MP︰60

EP︰180


STR︰120

VIT︰40

STM︰210

AGI︰190

DEX︰150

TEC︰300

INT︰50

MID︰20

LUK︰100


STP︰0

SP︰0


JOB SKILL

暗殺術LV1 気配隠蔽LV1

隠蔽(J)LV1 急所攻撃(J)LV1

SJOB SKILL

細剣術LV1 歩術LV1

急所攻撃(SJ)LV1 回避LV1

SKILL

剣術LV1 弱点看破LV1 観察LV1

逃げ足LV1 急所攻撃LV1 隠蔽LV1

直感LV1 鑑定LV1 AGI上昇LV1

TEC上昇LV1

――――――


「スキルの急所攻撃についてるJやSJは同じスキルを取得した際に何で取得したかを示します。SPや行動で取得したスキルは何もつきません。そして同じスキルの効果は重複します」


「へえ〜。じゃあ、今のステータスだと急所攻撃が3つ重複してるからめっちゃ強いってことね」


「そうです」


「装備はもう出せるの?」


「はい。装備を意識するとインベントリから取り出すことが出来ます。装備は一度取り出すとそのまま持っておくことになるので気をつけてください」


「ふーん。⋯おー!細剣だー!」


 カッコつけて構えてみよ〜。


 わあー!重さもしっかりあるし練習しないといけないなー。


「ふふ。⋯ではこれにてキャラメイクを終了します。ご不明点がございましたらメニューからヘルプを呼び出してください」


「はーい!」


「メニューは思考や声で呼び出せます」


「了解っ!」


「では改めて⋯。ダーシュエに生きる者達は全て生きています。AIとは思わずに人として接してあげてください。メイリさん、ダーシュエを楽しんで」


「うん。人として接するよ」


 人として接するのは大事だもんね。


 あ、そうだ!


「ありがとうございます。ゲートを開きます。ここに入ればダーシュエの最初の街です。では、さよう⋯」


 サーナの声が不自然に途切れる。


「ごふっ!」


 サーナの口から血が流れる。


「ふーん。案内人もしっかりと人なんだ」


 サーナが信じられないような目をしてこちらを見る。


「血は一緒の赤。ポリゴンは出てないのか。死体はどうなるんだろ?」


 サーナは口を開きかけるが声が出せない。


「死体はそのままっぽい?あー。解体用に短剣でも貰えばよかった」


 細剣をサーナから抜くとサーナは倒れる。


「細剣にもちゃんと血がついてる⋯。振り回せば落ちるかな?」


 細剣を鞘にしまいつつ、装備を着る。


 そのままゲートに向かう。


「ふんふんふーん♪楽しみだな〜」


 ゲートに行く途中で振り返る。


 倒れたサーナに言う。


「ダーシュエでも楽しむよ。ありがとう。バイバーイ!」


 そのまま、ゲートに入った。


 倒れたサーナは震える指を動かす。


「こ⋯⋯まで⋯⋯⋯が⋯で⋯⋯⋯も⋯⋯」


 サーナは何かの操作を終わらせるとそれを最後に粒子となって消えた。


 ⋯誰もいなくなった宇宙空間は何もなかったかのように美しかった。


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