第三話 神殿
久しぶりにヴェルハの神殿に来た。…それにしてもデカすぎるだろ! なんだこれ! 前見たときよりもデカくないか?
ヴェルハの神殿は、ほとんどの色が黒、赤、金で、「中華風」って感じだった。風、と言ったのは、前の禍々しい西洋建築の城を魔改造して作ったようで、ところどころ前の面影があるからだ。
「わあ…!」
「どうだ俺様の神殿は! かっこいいだろう!」
アルマが飛び跳ねてはしゃいでいる。愛らしい。
「自慢はいいからさっさと案内しろ。 …まあ、かっこいいことは認めるけどな」
「ふん。ついてこい」
神殿の中は、小物などが多少変わっているだけで、内装に大きな変化はなかった。床は前と変わらぬ黒水晶の床で、天井にあったシャンデリアは前と同じく不気味な灯りをともしている。
「なにがあったんだ? ヴェルハ」
「気分だ。人間界を見に行ったときにかっこよかったものだから、外装だけやってみたのだ」
「どれだけかかったんだ?」
「数分だ。実際外装を考えるほうに時間がかかった」
やっぱりこいつ、実力だけはあるな。こんなデカい建物を、わずか数分で建て換えるとは。
「着いたぞ、アルマはこっちだ。アルトはそこで待ってろ」
「ああ、わかった」
ヴェルハが立ち止まったところは、広間だった。ここでヴェルハと過ごしてたっけ、懐かしい。
アルマは能力の強化で、俺は身体強化だ。とりあえずアルマたちが戻ってくるまで周りでも眺めていよう。
「…流石ヴェルハと言ったところか。こいつらは、試作品か?」
周りを眺めてみたが、人体錬成で生まれたようなものには見えない奴らがいっぱいいた。「魔族」というには失礼に当たりそうなほど神々しいお姉さんから、なんか癖がすごいおじいちゃんまで、多種多様だ。引き続き眺めていると、ひとりが声を掛けてきた。かわいいドレスを着た、ちいちゃい女の子だ。
「アルトおねえさん」
お姉さんって… そういえばそうなんだけど… 確かに今の俺はセーラー服を着ているし、髪だって長い。間違えるのは必然か。
「お前は俺を女だと思ってるようだけど、俺は男だよ」
「そうなの? ヴェルハが見せてくれたあなたの写真は、女の子だったの」
「昔はそうだったんだ」
「そうなんだぁ」
うん。後でヴェルハに新しい服をせがもう。
「お前は?」
「わたしはクルーウェル。後ろをみて。ヴェルハがきたの」
言われたとおりに後ろを向くと、ヴェルハがいた。その後ろにはアルマもいる。アルマは俺に駆け寄ってきて言った。
「お兄ちゃん!」
「アルト、お前の番だ。ついてこい」
「ああ」
「クルーウェル、こいつの面倒をみてくれてありがとう」
「楽しかったの。また話そうね! アルトおにいさん」
あとがき
クルーウェルはアルマと同い年です