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ハルモニア ~神の用意した脚本を完遂しないと死ぬらしいので、全力でふざける~  作者: 慈雨の羽
第四章『目眩く舞台には、華々しいスポットライトを』
27/41

25、告解

1480字

「嘘でもいいから答えてくれ。もしかしてフランネルはまだ生きてる?」

今度の彼女は冷静だった。驚く素振りも見せず、着々とパンを頬張る。飲み物でそれらを流し込み、深呼吸した後彼女は質問を返した。

「なぜ、そう思うのですか?」

「一昨日、サフィニアとリコリスが戦った時のことだ。リコリスが工房を出てから十分後、俺とアメリアは心配になってリコリスを追ったんだ。」

「把握しております。」

「丁度リコリスがホテルに着いた頃かな……。ホテルで爆発が起きた数分後。ホテルに向かう道中で俺は、逃げる人影を見たんだ。」




――一昨日。

ホテルの方からもの凄い爆発がした。遠距離でも爆風を僅かに肌で感じられる。

「テレジア、急ごう!」

走りが加速した頃。俺は少し遠くの茂みに大きな影を見つけた。走っていてよく見えなかったがあれは……

「アザリア?担がれてるのは……フランネル……か?」

茂みの向こう、フランネルを担いだアザリアがホテルと反対方向に猛ダッシュしているように見えた。

「テレジア、はやく!」

「あ、ああ!」




「……なるほど。」

「見間違いの可能性も否めない。ただ、一旦本人に確認を取ってみたくてね。真偽を聞かせてくれ。」

空気を伝って彼女の鼓動が感じられる。それくらいの沈黙が数秒続いた。しかし彼女はケロっと笑顔を作って言った。

「私は知りません。フランネルはボイジャーと一緒に亡くなられたじゃない。遺品だって見つかって、前にお二人で墓参りもしたのでしょう?」

「……」

俺の中で生まれたこの感情は何だ。本人から回答を得られたことに対する安堵なのか、嘘をつかれているかもしれない不信感なのか、面と向かってフランネルの死を突きつけられた失望なのか……。

「っ。そうか。まぁ君から答えを聞けて良かった。そろそろアメリアが目を覚ます頃だし、今日はもうお開きでいいかな。」

「ええ。また次も誘ってください。とても楽しい一日でした。」


玄関の鍵を閉め、上着を脱いだ。冷え切った手のひらを脇腹で温めながらメインルームに向かう。するとそこには、もう起きて夕飯の下準備をするアメリアがいた。

「あら、おかえり。」

「ただいま。」

「どこ行ってたの?」

「エリカんとこ。」

椅子を引いて腰を下ろす。やっぱりここは温かいな。

「今晩は私が作るね。」

「嬉しすぎてゲロ吐きそう。」

料理の具材の匂いがいい感じに漂う。真顔でノートを取り出し、家族一覧の項目をパラパラと捲った。見つけた。

≪フランネル(名前には線が引かれている)≫

「……」

「フランネル?」

背後で、エプロンで手を吹くアメリアがノートを覗き見していた。

「覗き見とは感じ悪いぞアメリア。」

「別にいいじゃない。フランネル……彼ね、ずっと明るい人だったのよ。」

「ふぅん……。」

「彼の脚本を聞いたことがあるけど、自身の脚本完遂のために全力な人だったの!もし脚本の再現を完遂したら、全ての子供が夢を諦めないで済む社会の実現を望むって言ってた。」

「彼の過去を知ってる?」

「いいえ何も?でも本屋にボイジャーって名付けるくらいだし、宇宙が好きだったんじゃない?」

そう呑気に吐き捨ててアメリアはキッチンに戻った。


夜。

「今夜は星がよく見えるな……。」

窓の外、眩しいほど星が照っている。天の川がよく見えるが、この空も全てエリカによって生み出された嘘の空なのだろうか。物理的に触れることが可能な空だと想像すると、自分たちがいかにハルモニアに囚われているかが分かる。果たしてここを脱出する方法は本当にあるのだろうか?

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