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プロローグ『カムパネルラは夢を見る』
俺は長い夢を見ていた。
果てしなく長い夢。
水中で目を開けると、水面が空を模倣して光っている。
口から伸びる泡が、悲し気に目に映る。
そんな中、どこかからか名前を呼ぶ声が聞こえた。
テレ…a…、レ…ジア!
ああ……それは、確か俺の名前。
しかしいつからだろう。
みんな消えて居なくなってしまった。
雄一大切に思っていた存在も、先に人生の幕を閉じた。
ごめん。
俺はお前を幸せにしてやれなかったな……
それだけが、心の中で逡巡する。
せめて一緒に雪を見たかった。
名前を呼ぶ声は途絶え、次に水底から機械的な音がしだす。
これは母の延命装置の音だ。
……ん?いや、違う。母の延命装置は俺が停止させたはずだ。
やがて機械的な音に、愉快な音楽が混ざり出す。
それはまるで……子供の頃大好きだった「遊園地」を彷彿をさせるものだ。
さっきまで明るかった水面はどす黒く濁り、口から最後の泡を吐いた。
やがて俺の意識は、長い夢の中で深淵に呑まれた。




