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11,春のめざめ

1136字

≪この手紙は、私サフィニアという存在があったことを未来永劫ここに残すために書く。もし自身の脚本『一度信じた正義を信じ、信念を貫き通し、強者を演じる』というものを完遂できずナハツェーラ討伐で死んだ時のためである。もしもの事態に備えて手紙は三部に分ける。そしてこれが二つ目だ。


両親死亡の後、私は大人たちの手により遠くの大陸に売られることとなる。奴隷生活の幕開けである。


若さはかけがえのない宝である反面、時として自身を苦しめる凶器にもなる。若さと美貌を買われた私は奴隷主のお気に入りになった。ましてや声を出せないことをいいことに言葉で言い表せない残酷な仕打ちも受けた。頭を下げる屈辱に耐える日々、私は未だに忘れない。ここで寿命で死ねるとは思えなかったが、皆平等に死が訪れるのであれば、もう用済みとして殺されても構わないとさえ思えた。私はより模範的な従者であり、従順な奴隷としての身分を受け入れざるを得なかった。


知らない大陸な訳だから、現地民の言語は全く分からなかった。そんな言語の違いでも苦しんでいた頃。当時同じ奴隷であった地元民の男の子から猛烈なアプローチを受けた。いや、実際本当にアプローチだったのかは分からないが、自作の花冠を渡されたんだからあれはアプローチだろう。しかし私は彼に興味があるわけではなかった。なんせ言葉の分からない男だ。気にかけてくれるのは嬉しかったが、仲良くしているところを見られると奴隷主に不機嫌な顔をされるばかり……だから彼とは真剣に向き合わなかった。


しかし本音はどうだろう?今振り返ると、もしかすると私はあの時点で彼に向き合いたかったのかもしれない。毎日決まった時間に彼は私のいる家の前に現れる。庭で作業する私を見つけて柵を乗り越えて来る彼。それを確認するたびに私の胸は確かに躍っていた。


しかし夢は、いつか必ず朽ちる。それこそ、皆平等に死が訪れるのと同じ原理でだ。彼が死んだ。死んだというより、私の飼い主に殺された。鳴り響く銃声がこだまする。人生で二度目の銃声。弾は私の耳たぶをかすり、そのまま彼の心臓を撃ち抜いた。百点満点の射撃だっただろう。叫ぶ間もなく倒れた彼に、私は駆け寄り体をゆすった。反応がない。後ろから首根っこを奴隷主に捕まれ、私は家に引きずり込まれた。見えなくなるまで彼の遺体に手を伸ばしていた。段々離れていく。声を出せない私は、どうしてこんなにも非力なのだろう?後日、喋れず字も書けない私は証人になれず、裁判で彼の死は事故死と処理された。


それ以降、奴隷主の私に対する体罰は酷くなった。廃人となった私は長い夢を見ることになる。そしてハルモニアに来たのだ。


三枚目では、ハルモニアで彼と再会した話を記録しよう。

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