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深淵のアビス〜最弱冒険者の最強成り上がり伝説〜  作者: ヤノザウルス
機械の国 マキナ編
50/51

45 次の目的地:マキナ

レベル5万。

その指標へと辿り着いた僕は、現実世界での険しい出来事を置いて、クエストへと赴くことにした。


「転移」


黒色の石を手に持ち、僕はかの地へと舞い戻る。

自分に当てられた部屋の外の景色を眺め、思いに耽る。


嫌な記憶がこびり付いた、美しい街の風景。

されど、この美を守りたいと思う心は、僕を有無を言わさず突き動かした。


足を運び、王城の廊下を通っていく。

向かう場所は一つ。王の執務室だ。


分厚い木の扉を数度叩き、エヴリンさんの許可を待つ。


「入れ」


その合図と共に入室した僕は、久方ぶりの王様の顔を拝んだ。


「お久しぶりです、エヴリンさん」


「おお、雨宮くんではないか。どうかしたのか、英雄殿?」


「あはは......その呼び名はちょっと恥ずかしいので、やめてください......」


気恥ずかしい名前で呼ばれた僕は、照れながら頭の後ろに手を置いた。

英雄の呼び名は未だ慣れないものだ。


「あ、そういえば、跪いたほうがいいでしょうか......」


エヴリンさんの恥ずかしい呼び声のせいで冷静になりつつある僕の頭は、ある問いを弾き出した。

ーー今更だが、王様の前で跪いていない僕は処されたりしないだろうか? 大丈夫だと良いんだが。

正直ちょっと怖い。


「ふふ。そこまで怯えなくても、大丈夫ですよ、渉様。そんなことしなくてもいいですから」


自らの態度を改めようと悩んでいた矢先、エヴリンさんの隣にいたエリーが合間に入ってくれた。

可愛らしく手を口元に置いて笑う彼女は、実に可愛らしい。見惚れてしまいそうだ。


「? どうかしたのですか、渉様?」


「あ、いや、なんでもないよ」


じっと彼女の顔を眺めていたら、それは随分と時間が経ってしまっていたようだ。

そんな見惚れそうーーではなく、実際に見惚れていた僕は、すぐさま彼女から視線を外し、本来の目的に振り返ってエヴリンさんに要件を話した。


「それで、今日はどうしたのかね?」


「ーーエヴリンさん、どうか僕に機械の国・マキナとの交渉を任せてもらえないでしょうか?」


「ほう......?」


「実はーー」


マキナ。その国名を出すと同時にエヴリンさんは身を乗り出し、興味深そうに僕の話に聞き入った。

一体どういう要件での交渉なのか。一体なんのための交渉なのか。そんな疑問が今彼の頭の中で錯綜していることだろう。

そこで僕はこれまでの経緯をざっくりと話した。混乱を避け、できるだけ恐怖を呼ぶ情報を抜いて。


マキナは、その名の特徴の通り、高度な機械文明が発達した北部に位置する国のことを指す。

このエルファス王国近隣に位置しており、ちょうど山を越えれば見えてくるぐらいには近い。


そして、マキナにはそれはもう立派な蒸気機関があったり、ロボットがあったりと、現代文明よりは劣るとしても、この世界では遥かに進んだ技術で国を築き上げていた。


「ふむ......サイレント・オークの厄災......にわかには信じ難いな。しかしまあ、色々と疑問はあるが、マキナーー何故かの国を選んだのかを教えてくれんか?」


エヴリンさんの疑問ーーそれは、当然のものであった。

そも、マキナは機械の国であり、そこにいるほとんどの生き物が機械である。

故にマキナは今まで価値観の差から外交は殆ど行っておらず、一種の鎖国状態に陥っていた。


そんな国との交渉は困難を極める。

それに、メリットもそう多くないようにも見える。

僕も初めてマキナについて知った時は、同じような感想を抱いた。

しかしーー。


「ーーマキナには圧倒的機械の武力があります。それをうまく利用できれば、サイレント・オークの襲撃を避けることができるかもしれないんです」


「なるほどな......確かにお主の言う通り、マキナの武力を仲間にすることができるのであれば、大きな躍進になるかもしれんな......」


マキナに着目する理由ーーそれは、その圧倒的武力にある。

その強さはかつて、一撃で地形を変えただとか、一騎で敵部隊を壊滅させただとか、数々の逸話が残るほどのものらしい。


やはりここはメインクエストを進める目的も兼ねて、マキナに向かうのが得策だ。

なんとしても、この案は通したい。


「どうですか、エヴリンさん?」


「うむ......」


僕がそう聞くと、エヴリンさんは顎に手を置いて深く考えた。

その老成した、されど威厳ある声が執務室に響く中、エヴリンさんは早急に案を出し、それを僕に伝えた。


「雨宮くんの言う、厄災ーーそれが本当に訪れるのであれば、これは決して悪い手だとは言えぬな。うむ。ではその案、任せることにするぞ、雨宮くん。すぐに手配を進めよう!」


「ーーありがとうございます!」


熟考したエヴリンさんは、悩んだ末に僕へと許可を出し、準備を即座に進めてくれた。

馬車の手配に、必要な物資。ありとあらゆる必需品を用意してくれ、僕はの旅路は準備万端だった。


あとは気楽に一人で赴くだけ。

そう思ったのも束の間、現実はそうはいかなかった。


「まぁ、予想はしてけど......」


そう言いながら、僕は僕の後ろを付いてくる数名に目を向けた。


「楽しみですね、渉様」


「渉、準備はいいか?」


「雨宮さん、楽しみですね。遠征任務!」


「私達も、忘れないでおくれよ?」


「ガハハハッ! 楽しみだな!」


僕の後ろで騒がしくやっている人数、合計五人。

それぞれ順番に、エリー、ユリウス、カエデ、ゲルダにダナンだ。


今になって事情を聞いたが、エヴリンさん曰く、「マキナへと外交の目的で行くのであれば、エリーは連れて行ったほう何かと都合がいい」のだとか。

そして、予想は付くと思うが、残りは彼女の護衛だ。まさに近衛騎士団の花形が揃っている。

まぁ、カエデがいる理由はわからないけど。


「む。ちょっと、雨宮さん! 今、失礼なこと考えてませんでしたか!?」


そう色々と考えていると、プンプンとほっぺたを膨らませたカエデが近づいてきた。

どんぐりを大量に口に含んだリスのような顔付きで迫る彼女は、その気迫よりも可愛さ強くが目立っている。


愛くるしい......が、しかし、一体どうやって僕の考えを彼女は見抜いたのだろうか。思考盗聴ができるスキルでも有しているのか?

なんだか、怖くなってきたな。


「か、考えてないよ。ほら、もう出発するから行こう。遠征任務が待ってるよ」


「そ、それもそうですね。早く行きましょう!」


怒れる彼女を宥め、僕を含めた選抜された六人が馬車へと乗り込む。

フカフカの馬車の椅子に腰を下ろし、鞭が空気を叩く音と共に馬が嘶き、僕らは長い旅路の一歩を踏んだ。


揺れる馬車の目的地はただ一つ。

メインクエストの足掛かり。協力関係を結ぶ、一つ目の国。

それはーー。


「ーーマキナへ〜出発〜!」


「カエデ......」

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