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深淵のアビス〜最弱冒険者の最強成り上がり伝説〜  作者: ヤノザウルス
現実世界編1〜町田 行持復讐編〜
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41 パーティー攻略

こんにちは、雨宮渉です。


今僕は、昨日のダンジョン『無暇の迷宮』に潜っています。

もちろん、目的はと言うとーー。


「グゥオオォ......」


「はい終わり、と」


僕はミノタウロスの太い首を一刀両断し、システムからの報告を待つ。


『レベルアップしました!』


僕の実直な働きを如実に示す報告を頭の中に止め、次のダンジョンからの報告を待つ。


『報告。冒険者雨宮渉のダンジョン『無暇の迷宮』踏破回数が100回を超えたので、これ以上の討伐報酬及び、踏破報酬を受け取ることはできません』


「もう100回来たのか......」


100回。その回数に僕は着々と近づいているのは感じていたが、まさこれほどまでに早く到達できるとは思っていなかった。


この回数は、あらゆるダンジョンの討伐、踏破報酬が配られる指標となる数字だ。

攻略するごとに配られる報酬は下がって行き、やがては潰える。


要するに、回数制限を迎えたのだ。


「ここも、もう潮時か」


僕はクルリと身を翻し、塵となって消えていくミノタウロスに目を向ける。


こいつとももうお別れになると思うと、少し寂しい気もする。

まぁ、だがミノタウロス自体はありふれたモンスターだし、会おうと思えば、別のダンジョンでも会えるだろう。


「『無暇の迷宮』ちょうどいい経験値稼ぎになったな。よし、行くか」


僕はそう言葉を残し、ダンジョンを後にした。

名前にしては、迷宮という部分の大半は蔑ろにしたと思うが、存分に楽しめた実感はあったかな。


「さて、次はどうしようかな」


転移で地上へと戻り、僕は次の行動を決めあぐねていた。

先ほど確認した所、僕のレベルは45000台に差し掛かっており、どこかもう一つ高難度のダンジョンを回れば、目標の50000に届く具合だった。


「でもなぁ、レベルを上げすぎるとアークナイツにも目をつけられそうだし......」


高難度と言ってもBランク。今の僕の偽情報では到底入れない領域だ。

そしてなんと言っても、この偽造は肝心のアークナイツの町田行持に見つからないためにしていることでもある。

『新進気鋭の話題沸騰中の冒険者!』などと言われても、目をつけられて正体がバレるのがオチだろう。


「確か今は行けてもCランク下位のダンジョンなんだよな......でもレベルは上げたいし......どうしよう......あ、着いちゃった」


そう悩んで歩みを進めているうちに、いつしか僕は冒険者協会の前にまで足を運んでいた。

兎にも角にもまずはクエスト完遂の報告するためと思い、ここまで歩いてきたのだが、


「あ、そうだ」


ここで僕の中で妙案が浮かんだ。



「あら?」



僕は駆け足で冒険者協会へと足を踏み入れ、そしてその速度を保ったまま、受付の方へと歩みを進めた。


「今日は早いですね、源氏さん。どうかされたんですか?」


いつも通りと、三枝さんが僕の来訪を迎える中、僕は勢いそのまま台に手をつけ、彼女へと詰め寄った。


「わっ!」


そのいつもとは違う、些か興奮気味な僕の対応に彼女が驚いた表情を浮かべる中、僕は三枝さんへと本題を話す。


「パーティーを組んでダンジョンに行かせてください」


「......へぇ。源氏さん、ついにパーティーを組む気になったんですね!」


ド直球もド直球、いきなり過ぎる僕の本題をなぜか嬉しそうに三枝さんは受け止めてくれた。

まぁ、理由自体は僕も把握している。再三言われてきたことだし。


彼女は僕にパーティーを一度でもいいから組んで欲しいと、頼み込んでいたのだ。


何もダンジョンはソロで挑むものではない。むしろ、逆だ。

普通の冒険者ーーそれもA級未満の人達の大半は、パーティーを組んでダンジョンに行くのが基本となっている。

理由は単純。そっちの方が安全だからだ。


ダンジョン攻略とは、日々未知に挑むある種の神秘にも近い。

毎日死と隣り合わせ。一抹の不安を心に抱え、それでも夢へと近づくために死に物狂いで生き残り、強くなる。

その生存率を高めるためにも、仲間と共に切磋琢磨し、高め合い、助け合うのが基本となるのだ。


その点、僕は異端とも言える存在だろう。

低ランクのくせにソロを貫く。周りから見ればただの変人だ。


ただ僕がそれをしていた理由は『往来の転移石』があったので、一人でも安全を確保できたのと、単純に他の人に正体がバレるのを恐れたためだ。

だが、今回のでそれももういいかと僕は思い始めていた。


今までの感じ、この『隠聖の外套』を着ていた隠聖とやらは、相当な使い手だったようで、僕の正体は一切バレることなく、ここまでやり過ごせてきた。


これなら無理に安否を放棄したソロ戦術よりも、他の人と少し上のダンジョンを攻略してみるのも悪くない手だろう。

それに、シンプルにそろそろ他者と関係を持ち始めた方がいいだろうし。ほら、僕ってばぼっちだから。


「まぁ、そんな所です」


「よかったです! 少し待っていてくださいね」


ありきたりな返答を返し、三枝さんの質問に答える。

すると彼女は目を輝かせ、同時に安心したような表情を浮かべて受付の裏側へと行った。

数秒と待たぬうちに三枝さんは戻ってきて、一枚の依頼書を僕の前に差し出した。


「どうでしょう? Bランクダンジョンでの少数のパーティー募集。源氏さんの条件とも合致していますしーーあ。すいません、これ荷物持ちの依頼でした......源氏さんは、嫌ですよね......」


しかしと、彼女は少しバツが悪そうに尻すぼみし始めた。

はて、なんのことやらと思っていたが、僕はこの名前を使い始めてから荷物持ちの仕事を引き受けたことが一度たりともないことを忘れていた。


そういえばだが、荷物持ちと言う職業は世間一般的には不名誉な仕事であると認識されている。

それも、低ランクのダンジョン攻略になればなるほどだ。

荷物持ちの別名は『死体漁り』や『金魚の糞』など酷いものばかりだから、そのイメージが根付くのも無理はない。

そして同時に、ランクが一定よりも高い人たちがそのクエストを耳にもしたくないのもまた、必然なのだろう。


だが、忘れないで欲しい。イヤイヤとはいえ、僕は人生のほぼ全てを荷物持ちとして過ごしてきた。

この分野に関して、僕は誰にも負けないと自負しているし、さほど嫌ってもいない。


僕はこの仕事に感謝している。この荷物持ちと言う職業がなければ、僕と奏は早々にのたれ死んでいただろうし、これのおかげで僕は冒険者と言う職業に憧れを持てた。

まぁ、不名誉かもだけど。


「三枝さん、大丈夫ですよ。その依頼、受けさせてください」


「本当ですか? ありがとうございます! そう言ってくれると、助かります!」


依頼書を後ろへと退く手を止めて、三枝さんは気まずそうな顔をパァッと明るくする。

そしてそのまま受付の窓口に乗り出して、僕の手を握り込んできた。


「源氏さんは他の冒険者と違って横暴じゃないですし、自慢話もしませんし、荷物持ちのクエストにも嫌な顔一つしませんし、本当源氏さん程いい冒険者は中々いませんよ」


「そ、そう言ってくれると嬉しいです」


顔面偏差値が高すぎる彼女の顔が近づき、僕は少し顔を赤面させてたじろいだ。

ギュッと握られる手の柔らかい感触を感じながら、僕はこれ以上は耐えられないと思い、急いで振り解き、依頼書を取ってその場をすぐ後にした。


「じゃ、じゃあ、これで! また会いましょう......!」


「あ、源氏さん! 気をつけてくださいね!」


別れを告げ、僕は走った。

それに答えるように彼女もまた返事を返し、僕は外套を靡かせて逃げるように退散した。


(さ、三枝さん......いい匂いしたなぁ......頑張ろう......)


そして勢いそのまま、謎のパワーで元気が出た僕は、依頼書にあった集合場所へと向かった。




☆☆☆☆




今、僕の目の前には、廃れた洞窟に繋がるような洞穴型のダンジョンがある。

周りには、一緒にダンジョン攻略をすると思われる人たちが複数人おり、今は全員集合するのを待っている所だ。


「すまんすまん、悪いな、遅れたよ」


「お、来たな。それじゃ皆んな、集合してくれ!」


数分後、最後の一名と思われる人が呑気そうにやってきて、僕たちは号令の元、作戦のおさらいをするために一箇所へと集まった。


「よし、いいか? 今回の目的は、()()()()攻略だ。もし、少しでも危ないと感じたら、すぐに撤退するぞ。いいな?」


「「「はい」」」


皆一同に集まり、最終確認と喝を入れ直す。

今回は、ランクの低い冒険者が多いため、攻略は「もしできたら良い」ぐらいの気持ちのもので挑むらしい。

正直、これには安心している。

攻略するまで絶対に撤退はしない、とかだったら嫌だからな。


「じゃあ、一度荷物の点検だけ進めてくれ。終わったらまた集合して、出発するとしよう」


そうして、準備を着々と進め、各々点検等を終えると、先ほど作戦の最終確認を行ったリーダーらしき人が、気分転換にと、皆んなで自己紹介をしようと提案した。

僕たちは承諾し、再び円形状に集合し、言われた通り軽く自己紹介を済ませた。


「じゃあまず、私から」


最初に手を挙げたのは、二十代前半ぐらいの女性だった。

彼女は立派なローブを着ており、右手には高そうな杖を持っていて、いかにも魔法使いと言う感じの雰囲気を醸し出していた。


「私の名前は、西野明里(にしのあかり)。Cランク冒険者で、職業は魔法師。 よろしく」


淡々と挨拶をした彼女で場の雰囲気は少し和む。

今の会話内容を冷たいと感じる人もいるかもしれないが、それが彼女の場合不利に働くことはない。

Cランク魔法師。その情報が場に活気を与えたのだ。

高いレベルの魔法職は何かと重宝される。頼れるアタッカーだ。


「なるほど......魔法職か、期待してるぞ」


「ええ、よろしくね」


それをリーダーらしき男もわかっていたのか、彼も期待を込めて、チームのことを頼んだ。

二人は手を交わし、ひと段落ついた所で次の人が口を開いた。


「じゃあ、次は俺だな」


次に声を挙げたのは、中年の男性だった。

髭の剃り跡と日焼けが目立つ、陽気なおじさんだ。

見れば腰に長剣を抱えており、左手には小さい盾を身につけていた。


「俺の名前は、安西輝彦(あんざいてるひこ)。気軽に、安西さんとでも呼んでくれ。職業は剣士。C級だ。よろしくな」


またしてもC級。

これはまた、熟練の冒険者だな。

タンク兼アタッカーを担う、パーティーの中心となる役割だろう。


「今回も頼むよ、安西」


「おうよ、任せてくれ」


そう言うと、リーダーは安西さんの方に手を伸ばした。

安西さんもそれに応え、差し出された手を強く握り返す。


見れば分かる。彼らは長年仲良くやっているのだろう。

二人の間には強い信頼の色が窺える。


そうして紹介を進めていき、僕ともう一人を除いた、系4名が紹介を終えた。

紹介された情報を総合すると、リーダーの田中さんがB級のタンク職。

C級剣士の安西さんに、C級魔法師の西野さん。

Dランクのシーフ件アサシンの、忍者ライクの小林さん。

そして、荷物持ちの僕と、このいかにもなフルプレート装備に身を包んだ少年。


なかなかいい構成ではないのだろうか?

田中さんが攻撃を食い止め、安西さんが叩き、西野さんの魔法でトドメ、牽制をする。

なかなか整ったパーティーに見える。


この少年も、重くて丈夫そうな鎧を着ていることだし、何かしらの前衛職であろう。

これは、期待できるかもしれない。


期待を寄せて、僕は最後の子の自己紹介に胸を踊らせ、傾聴した。


「ええと、こんにちは。僕の名前は、高羽塔矢(たかばとうや)って言います。Eランク冒険者で、役職は重戦士です。Eランクなんで心細いかもしれませんが、精一杯頑張るので、よろしくお願いします」


ショートカットで綺麗な銀髪の髪を持つ少年。

あたふたと自信なさげに自己紹介をする彼を元気付けようと、リーダーの田中さんが笑顔で前に出た。


「よろしくな、塔矢くん。見たところ君はとても若い。あんまり緊張せず、気楽にやってくれ」


「......! はい、ありがとうございます!」


優しく微笑みかける、田中さんの言葉に感化されたのか、塔矢くんはだんだんと元気を取り戻していった。

いい人だな、田中さんは。


まあそうなんだかんだで会合を進めてうちに、ついに僕の番が回ってきた。


「じゃあ、最後に君は?」


田中さんが僕へ、会話のバトンを渡す。

それを受け取り、僕は簡潔に自己紹介を済ませた。


「あ、はい。僕は、雨宮源氏って言います。今回は荷物持ちをさせていただきます」


「荷物持ちくんか。わかった、よろしく頼むよ」


田中さんと握手交わし、パーティーメンバーそれぞれと軽い挨拶を交わし、最終準備をする。

その間、僕はみなさんから僕が持つと指定された荷物をかき集め、背中に乗せ上げた。


「ふぅー......ん?」


背中に大量の荷物を乗せて、いざ出発しようと意気込んだその時、僕は少しばかり違和感を覚えた。


(なんか、いつもより軽いな)


猛烈に......とまではいかないが、持っていた荷物がいつも以上に軽かったのだ。

この量の荷物は何度も持ったことはあるが、大体は肩慣らしをしてからじゃないと、動くのも辛い。

というのに今回ばかりは、背中に羽が生えたように、持っていた荷物を軽く感じた。


(今日調子いいのかな? まぁ、いいか)


これには驚いたが、僕はあまり気にしないことにした。

今日は調子が良いんだとでも流し、皆と合流する。


「よーし。じゃあ、ダンジョンに入るが準備はいいか?」


「「「はい!」」」


リーダーの田中さんが号令をかけ、それに皆んな気合を入れて返事を返す。


「よし、じゃあ、いくぞ!」


先陣を切る田中さんを先頭に、続々とダンジョンへと突入する。

視界は暗転し、僕らは再びその神秘に見出され、宝目指して踏み込んだ。


これより、Bランクダンジョンの攻略が開始した。






「あれは......雨宮渉?」


「何?」


「......至急、増援を」


「......了解した」

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