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深淵のアビス〜最弱冒険者の最強成り上がり伝説〜  作者: ヤノザウルス
現実世界編1〜町田 行持復讐編〜
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30 新たな目標

遅れてしまい、申し訳ありません。

用事が立て込んでおり、投稿が遅れました。

あの奇怪な夢の後、僕は妙な胸騒ぎがしてすぐさま『往来の転移石』を使い、エルファス王国へと向かった。


しかし、僕の目に映ったのは、活気溢れる豊かな街並みだけであり、他のみんなも元気な姿を見せてくれた。

皆、焦燥感に駆られる僕の姿を見て、一様に不思議な顔を浮かべた。


「どうしたんだ?」


「どうかしたのか?」


「どうかしましたか?」


絶望に堕ちず、胴体も刎ねられず、ただただ元気な姿でキョトンとしていた。

そして、そんなみんなの姿を見た僕もあれを悪夢と捉え、再び石の力で現世へと帰還した。


「本当に夢...だったのか...」


頭を悩ませ、僕は部屋の壁へと寄りかかる。

少しの安堵とそれを超える大きな疑念に僕は襲われた。


あの妙にリアルな感触。

炎の熱さ、人間の冷たさ、顔に張り付いた人々の絶望。

その全てが偽物というには、あまりにも出来すぎていた。



「...まあ、悩んでも仕方ないか...」



疑念は未だ残る。

猜疑心も、不安も、心残りも全て拭えていない。


ただ、現時点で起こってもいない出来事に目を向けるほど、今の僕は強くないし、それほどの余裕もない。


あの時王国を襲ったのは、サイレント・オークの軍勢だった。

一つの国を焦土に帰し、その全てを赤色に染めた。


そんな絶望に立ち向かうのであれば、僕は今よりもっと強くなくてはならない。


今の弱いままの僕では、あの悪夢を現実に変えることしかできない。

弱いままでは、何も為せない。


「強く、なろう...」


小さい声量で放たれたその声は、されど僕の中で揺るぎないものへとなった。


夢の冒険者のため、守りたい誰かを守るため、家族のため。

僕は、必ず強くなると決心した。



「よし。じゃあ、まずは、特訓だな」



そう言って僕は寄りかかる壁を離れ、急ぎ装備を手に取って、あの場所へと向かった。




☆☆☆☆




舗装された道路を通り、数多の縦長の建造物を潜り抜け、僕は動く鉄の塊へと乗車した。


「うっ...」


時刻は朝8時。

満員電車の洗礼を久々に受けた僕は、分厚い肉の壁で押し潰されながら通勤を果たした。


人のいろんな匂いの入り混じる空間に、多くの自然の香りを吸い込んでいた僕は吐き気を催しながらも、なんとか目的の駅へと辿り着き、下車した。


「は、吐きそう...」


強烈な香水や汗臭い匂いが未だ鼻腔に残る中、僕はトボトボと歩きながらその場所へと向かった。


歩いて少し。そこにその場所はあった。


「懐かしいな。冒険者協会」


冒険者協会。

日々、冒険者の斡旋や管理を任されている非常に重要な役所。

現れる危険をいち早く察知し、その対策に冒険者を派遣する所謂、派遣会社的役割を持つ組織だ。


協会は仕事場を提供し、冒険者はその仕事を完遂する。

要は、僕ら冒険者の活動をやりやすくしてくれる所だ。


「行くか...っと、その前に」


久しぶりの圧巻の光景に、僕は準備を怠らず中へと入った。


黒い全身ローブを羽織り、それを深々と頭の方まで被る。

少し怪しく見える外見は、ここでは僕をうまく溶け込ませられた。


「怪しまれてないみたいだな...」


このローブは、エルファス王国を去る時に貰った宝物殿の装備の一種だ。

名前は、『隠聖の外套』と呼ばれており、今の僕に必要な機能を多く揃えた一品だ。


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

防具名:隠聖の外套(いんせいのがいとう)

推奨装備レベル:15000

詳細:かつて、『隠聖』の名を冠した、優れた暗殺者が愛用していたとされる外套。

その外套は闇夜に身を隠し、決して他者からの介入を許しはしない。

・スキル【隠蔽(LVMAX)】

・スキル【偽造(LV5)】

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


中々に鳥肌が立つ内容の文章だが、大事なのはこの外套に備わっている効果だ。


スキル【隠蔽】に【偽造】。

この二つのスキルは、今の僕が冒険者として活動する上で最も必要なスキルだ。


なぜならそれは、あの男・町田 行持が未だ健在だからだ。


僕を裏切り、蹴落とし、殺そうとした大罪人。

奴の魔の手がどこに伸びているかわからない今、僕はひっそりと身を隠さなければいけない。


奴は仮にもトップギルド:アークナイツのAランク冒険者だ。


近しい戦闘能力を持つ、ユリウスと戦った僕だからわかる。

今の僕が奴と戦っても勝ち目はないだろう。

戦力差は圧倒的だ。


一応警戒は緩めず、辺りをチラチラと見て確かめる。

昔、僕が入場した瞬間に嫌悪感を向けられていた視線はどこへやら、今は皆一様に楽しく談笑している。


所々、アークナイツの紋章を着た冒険者たちを見かけたが、こちらを見てもなんの反応も見せないので、僕はそのまま受付へと向かった。


どうやら、外套のスキルはちゃんと効果をもたらしているようだ。


「こんにちは、本日はどう言ったご用件でしょうか?」


カウンター越しに微笑みを浮かべて僕へと問う受付嬢。


「ええと、新規冒険者登録をしたいのですが...」


それに僕は早急に返事を返し、要件を済ませようと急く。


「わかりました、冒険者登録ですね。少々お待ちください」


そう言うと、受付嬢は素早く部屋裏へと回り、とある物を取ってきた。

それを丁重に僕の前へと置くと、手を向けて僕に指示を出した。


「こちらに手を乗せてください」


目の前の受付嬢に言われ、僕はその透き通っている綺麗な石へと目を向け、触れる。


高そうな台座の上に乗る高そうな石。

明らかに大事そうに扱っているその仕草。


これの正体はと言うとーー。



「確認しました。では、こちらが冒険者ライセンスです」



触れた水晶は少しだけ光を帯び、その中から捻り出すように一枚のカードを吐き捨てた。


そう、これの正体は以前話した、ここ冒険者協会にしか置いていない、冒険者の能力やライセンスの創作などができる特別な機器だ。


これには正式な名前はないが、冒険者達の間で『水晶玉』と呼ばれている。

まあ、凝った名前をつけるのもなんだか恥ずかしいしな。


まあ、それでいろんな冒険者のデータを管理したり、新規の能力値を測定しているという訳だ。



そして、今回一番の問題がその表示されるスキルボードだ。



僕の今の能力やステータスを見られてもさほどの心配はいらないだろう。

だけど、僕の雨宮 渉という名前を見られてしまったら、大問題だ。


瞬く間に僕が生存していたという情報は伝播し、ついにはあの男の耳にも入るだろう。

そうなれば、僕の人生は今度こそ終わりだ。


そして、そんな事態は必ず避けたい。



まあ、だからこそ対策は怠らなかったけどな。



新しいライセンスを渡され、僕はそれを受け取り、ポケットの中へと詰め込む。

すると突如、僕の前にはスキルボードが写し出され、その場で受付嬢が僕のステータスを確認した。


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

雨宮 源氏

18歳 性別:男

レベル:1200

称号:なし

パッシブスキル:初級剣術LV3・自然回復LV2

アクティブスキル:筋力増強(小)LV2

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


「雨宮 源氏様。レベル1200ですので...Eランクですね。では、こちらで記録しておきます」


「あ、はい。ありがとうございます」


そう言って彼女は手元にあった紙に情報を記載して、それを下の棚へと仕舞い込んだ。



少々ヒヤッとしたが、どうやらうまくいったようだ。


『隠聖の外套』の二つ目の能力、【偽造】スキルを今回は使った。


自らのステータスを偽造し、自分の身分さえも偽れる、まさに詐欺師に打ってつけのスキルだ。

まあ、そんな犯罪には使わないけど。


それで名前を偽造し、ステータス表記も変えたという訳だ。

まあでも、僕はどうやら自分の名前を完全に捨てるのは嫌だったみたいだな。


まあ、あんな奴のせいで自分を隠さなきゃいけないなんて、普通に癪だしな。

この名前は僕の意志の象徴として、残しておこう。



雨宮 源氏。



懐かしい響きだ。

もう何年聞いていなかったか。


もう彼のことは、過去に置いてきたと思っていたのに...やっぱり、そう簡単に忘れられるものじゃないか。

もうどこへ行ってしまったかは知らないけれど、僕はいつまでも彼との再会を望んでいる。


まあ、それにこの名前を使えば、彼の目にも止まるかもしれないしね。



僕の父親に。



「では、雨宮様。最初はクエストを受けますか?、それともダンジョンへと赴かれますか?」


そう懐かしい記憶に浸っていると、どうやら準備が整ったようで、受付嬢は僕へと声をかけた。


まずは、当然レベル上げだ。


町田 行持に勝つためにも、妹を守るためにも、まずは力が必要だ。

だからこそ、僕は昔からの夢にも応える形で、当然の選択に切って出た。


「じゃあ、手頃なダンジョンで」



ソロでダンジョン踏破を目指す。



「かしこまりました。こちらに現在出現中のダンジョンのリストをまとめましたので、どうぞご活用ください」


「ありがとうございます」


すると、受付嬢は素早く紙の束を渡し、それを全て僕に持たせた。

僕は一言感謝を言い渡し、そしてその資料を見聞しながら、次の目的地を決めた。


「よし、ここにしよう。新築のDランクダンジョン:『死せる騎士達の箱庭』」


見聞の結果、僕は一つのダンジョンに目を向けた。

そして次なる目的地として、その場所を第一候補に挙げた。


いざ行かん、ダンジョンへ。


もう僕はあの頃の弱い僕じゃない。

成長し、力と決意を蓄えた今の僕を見せてやる。



あの地獄から這い上がった今の僕を。



「待ってろよ、町田 行持。今お前の喉元にこの剣を突き立ててやる」



そうして僕は冒険者協会を後にし、目標のダンジョンへと足を運んだ。

少しでも面白いと思って頂いたら、下にある星のマークでレビューをお願いします。(o_ _)o

あともし、改善点などがあれば、感想等などを受け付けていますので何かあれば感想をお願いします。

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