きてもらう! ~集中豪雨だから来てもらう。自分の体操着を彼女に着てもらう~
着替えシーンのためだけに書いた作品です。
男子高校生のあなたには同級生の彼女がいる。
黒い髪を後ろで一つに縛ったその女子は、あまり目立たない容姿ではあるものの、それなりにかわいらしい。
言うことを簡単に聞いてくれそうな子で、かわいいから彼女になってくれと頼んだら、
「……はい」
顔を赤くしながら、あなたを待たせることなく良い返事をくれた。面識があまりなかったので、すぐには信じられなかった。
理由を問うと、胸部の控えめな彼女はこんなふうに答えてくれた。
「私、かわいいと言われたの、初めてで……。そう言ってくれたあなたを……信じたいと思います」
真っ赤になりながらも一生懸命に喋る姿に、あなたは申しわけなくなってしまう。なぜなら、ただちょっとかわいいと思えた彼女に対し、軽い気持ちで告白したからだ。最近、友人達が次々と彼女を作っていくことへの焦りが、あなたの根底にあった。
そのことを隠さずに、あなたは彼女へと打ち明ける。
「……そうだとしても、私を選んでくれたことは確かです。私が嬉しく思ったのも、確かです」
幻滅するどころか、彼女は肯定してくれていた。
「これからは彼女として、よろしくお願いします」
丁寧に頭まで下げられる。その姿は、純粋に美しいと感じた。
そんな彼女とつき合い始めてから、もう一ヶ月以上経つ。
彼女は同級生だけれども、あなたや級友に対して常に敬語で喋っている。それも彼女には合っている感じがしたので、あまり気にはしていない。
今の季節は夏。
あなたがいつものように彼女と下校していると、急に天候が悪くなった。
「今日、雨が降るなんて、天気予報では言っていませんでしたよね」
そう話す彼女もあなたも、傘は持っていない。
雨がより激しくなる。あなた達は自然と駆け足になった。
あなた達の自宅はどちらも、高校から徒歩で通える範囲にある。なおかつ、あなたの家のほうが近い。だから、彼女には自宅へと寄ってもらうことにした。
「こんな姿ですみません。お邪魔します……」
自宅に入った時の彼女はけっこうな濡れ具合で、あなたは彼女を直視出来なかった。白い半袖ブラウスの夏服を着る彼女を、洗面所に案内する。
彼女への着替えとして、家にあった予備の体操着を渡した。
「ありがとうございます」
学校指定の体操着は男女兼用で、上は白い半袖シャツ、下は紺色ハーフパンツのセット。あなたは痩せ型で、背丈は彼女と同じぐらいなので、サイズは問題ないだろう。
洗面所の引き戸を閉めた後、あなたは廊下で私服に着替えた。
ドアの向こう側にいる彼女が着替えるのを待っていると、玄関が開く。
あなたの姉が帰宅した。
「ただいまー」
こちらへと早足で来る制服姿の姉は、やはり豪雨の影響を受けていた。
「あ~ん、めっちゃ濡れちゃったよぉ~……」
姉は洗面所の引き戸を開ける。あなたの制止は間に合わなかった。
「え?」
あなた達の視線に気づいて声を出した彼女は、ちょうどブラウスを脱ぎ終えた状態だった。
上も下も、白一色の質素な下着なのを、あなたは見てしまう。
「きゃあああああっ!」
彼女はすぐに脱いだブラウスで体を隠し、その場でしゃがみ込んだ。
少し後になって、姉によって、冷静に引き戸が閉じられた。
「……今のはもしかして、彼女さん?」
あなたがそうだと答えると、姉は申しわけなさそうに、自分の服を彼女に貸そうかと言ってくれた。しかし、この姉はあなたの彼女とは真逆の、背が小さい割に発育が良い体型のため、あなたは申し出を断った。
さらに少し後になって、彼女が洗面所から出て来た。白い半袖シャツの裾は、紺色ハーフパンツの内側に入れている。
「あの……着替え終わりました。先ほどは大声を出してしまい、すみませんでした」
こちらこそごめんねと、姉が謝っていた。二人のやり取りを見ていたあなたは、自分の体操着が彼女に着られていることに対し、新鮮で特別な気分を抱いていた。
雨はまだ、止んではいない。ただ、姉がいて気まずかったので、あなたは彼女を自宅に送ることに決めた。彼女の濡れた制服は、用意した手提げ鞄に入れて、あなたが持って行く。
外に出て、傘を差して濡れないように歩いていれば、必然的にお互いの距離が縮まる。
学生鞄を肩で背負う、半袖ハーフパンツ姿の彼女。
あなたは、彼女が自分の体操着を着ているのだと意識すると、どうしても気持ちが昂ってしまう……。
彼女の家に着くまで、さほど時間はかからなかった。玄関前で、彼女はあなたに頭を下げる。
「送って下さり、ありがとうございます。体操着はお洗濯してからお返しします」
そう聞いてちょっと残念だなと、あなたは思ってしまった。
そんな時、
「――それとも、洗わないで、今お返ししたほうがいいですか?」
耳を疑うような提案が来た。
あなたがその提案を呑むのには、かなりの勇気が必要だった。理由は単純で、彼女に変態と思われてしまう可能性があるからだ。
しかし、最終的には、彼女の温もりを直に感じたい欲求が心の中で勝利する。
よってあなたは、出来る限りさり気なく、洗濯代がもったいないからそのまま返してほしいと、彼女に伝えた。
「はい。……お返しする前に、ちょっと傘を置かせて頂きますね。雨で濡れないよう、こちらに来て下さい」
あなたは玄関屋根の下に入った。彼女に傘を閉じられて、玄関横に立て掛けられる。
「お預かりします」
彼女は手提げ鞄をあなたから受け取って、家の中に入る。手提げ鞄と自分の学生鞄を置いて、戻って来た。
玄関口を背にする、体操着姿の彼女。
あなたは静かにしていた彼女の顔を窺う。その顔には、何かをしようとする決意が見て取れた。
「――失礼しますっ!」
正面の彼女は、あなたを驚くぐらいに強く抱きしめて来た。
あなたの上半身には、半袖の中にある彼女の小さな胸部が当たる。
あなたの下半身には、彼女の紺色ハーフパンツが当たる。
あなたは困惑とそれ以上の興奮で、駄目になりそうだった。
じゅうぶんに長い時間を感じた頃に、大胆だった彼女はあなたから体を離す。
「では、体操着を脱いで来ますので、しばらくこちらでお待ち下さい」
彼女は自宅に入り、あなたは玄関屋根の下で待った。まだ雨が降っているのを見ていた。
間もなくして、彼女は玄関口を少し開けて、そこから顔を出す。
「こちらをお返しします」
あなたの体操着を入れた手提げ鞄を渡そうとする彼女は、白い靴下をはいたままの下着姿だった。玄関で体操着を脱いだだけなのだろうと思われる。
彼女の見た目は貧弱で地味でも、素晴らしい。
半裸の肌面積は広く、肩の白いストラップや胸部の白いカップ、下半身の白いショーツにも目が行ってしまった。
体操着を返してもらうという目的を思い出したあなたは、落とさないように気をつけて、手提げ鞄を受け取った。
「……あの。あなたに、謝りたいことがあります」
何かと思いつつ、あなたは真っ赤な顔の彼女に視線を向ける。
「今日……実は、自分のハーフパンツをスカートの中に穿いていたのですが、あなたのをお借りしたかったので、ずっと黙っていました。短い間ではありましたが、あなたのものを穿かせて頂けて、ドキドキしていました」
聞いている間、手提げ鞄を持つ手に力が入る。彼女の下着姿に、あなたもドキドキしていた。
「お洗濯の前に、ほんの少しで構わないので、体操着の裏側で、私のことを感じてほしいですっ! また明日いつもの待ち合わせ場所でお会いしましょう、さようなら……っ!」
最後のほうは恥じらいで早口になっていた彼女に、玄関を閉められた。あなたは傘を広げ、家へと帰ることにする。
自宅の自室に着いた後、あなたはドアをきちんと閉めた。
耳を澄まして、周囲が静かなのを確かめる。誰も来ないことを信じて、あなたは体操着の内側を、慎重に嗅いだ。
少し前までは、彼女の肌と白い下着の外側にあった、あなたの体操着。
素敵な彼女の匂いがまだ残っているような気がした。
(終わり)
最初は、自宅トイレに入ったらモブキャラ女子の部屋にワープして着替えを見てしまうという話だったのですが、現実的な内容に変更しました。
最後まで読んで頂き、ありがとうございます。