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悪役令嬢は、昨日隣国へ出荷されました。  作者: ねこたまりん
業務日誌(一冊目)
5/24

(5)会議

 (あるじ)思いの従者と侍女は、明日の皇子との面会について、深夜の荷馬車の中で、声をひそめて相談していた。



「なあリビー、その帝国の皇子って、これまでお嬢と接触する機会があったのか?」


「私は聞いてない。マーサさんも知らないみたいよ。ただ、ローザ様の様子が、なんかおかしいの。たぶん何か隠してらっしゃると思う」


「なんだろうな。城を売るっていう話も、胡散臭く感じるんだが」


「だよね。マーサさんの話だと、内見で皇子の名前が出たら、ローザ様が急にうろたえたんだって」


「アレクシス、だっけ? たしか、第三皇子だったよな」


「帝国のことには詳しくないけど、やり手だっていう噂はあるよ」


「魔導エネルギー関係か?」


「確かそうだったと思う。うちの侍従長が、そんなこと話してた。ローザ様との取り引き相手として、帝国の魔導ギルドがいいんじゃないかって。理由は、その皇子がギルドの梃入れして、営業が健全化したからだったはず」


「うちの侍従長、帝国と繋がったりしてねーよな」


「ないでしょ、それは。あの人、お嬢様ファーストの鬼だもん」


「あー、リバーズのバカ息子を殺しに行きそうで、止めるの大変だったもんな」


「みんな、止めたく無さそうだったもんねー」


「お前もな」


「当然!」


「しかし、どうすっかね。俺らが聞いても、口を割らねーよな、お嬢は」


「うん。マーサさんは、バカ男との婚約破棄の疲れが出たんじゃないかって言ってたけど」


「んなわけあるか。バカの屋敷に行く直前まで、嬉しそうにぴょんぴょん跳ねてたじゃねーか。あんなことでくたびれるタマじゃねーよ、うちのお嬢は」


「マーサさんから見たら、ローザ様は、まだきっと、守ってあげたい小さな子なんでしょうね」


「むしろ、俺ら全員をお嬢が守ってるのにな」


「ほんとにね…。だけど、明日、どうする?」


「何事もない、とは思えねーな。勘だけどな」


「うん。マーサさんは面会に同行するんだけど、私もできるだけ近くに控えていようかな」


「お前、早めに宿の荷物まとめとけ。俺もズラかる準備だけはしておくよ。いざとなったら、荷馬車の中に瞬間移動してくるように、お嬢とマーサに伝えておいてくれ」


「分かった。万が一ってことになったら、四人で帝国外に飛べばいいね。どこへ飛ぶ?」


「前にお嬢と話してた、逃亡先の第二候補の国があっただろ?」


「ああ、古代文献を使って魔導エネルギーを大量生産してるとかいう、あそこ?」


「それだ。面白い事業をやってるってことで、お嬢が興味持ってたんだよな。エネルギー販売での競合相手だけど、お嬢の液体化の技術を売りにして、うまく事業に噛めないかってな。俺も悪くねーと思ったんだけど、なんとなく流れで帝国に来ることになったんだよな」


「そっか。じゃあ、そういうことで、これからローザ様たちと話してくるよ。明日の朝、早めに報告にくるから、起きててね」


「分かった。おやすみ」


「おやすみ、ネイト」




 荷馬車から少し離れたところに、人影があったのだが、ネイトとリビーは気づかなかった。





「昔から、君の信奉者たちは厄介だったけど、今世は特にひどいねえ」


 人影は、淡く光る小さな石に、優しい声で語りかけた。


「やっとのことで、君を帝国に呼び寄せたんだ。これ以上、逃してあげるわけにはいかないな」


 石が震えるように輝きを増し、胡散臭い微笑みを浮かべる青年を照らした。


「素直に怯える君は、ほんとうに愛らしいよ、僕のローザ」



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