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悪役令嬢は、昨日隣国へ出荷されました。  作者: ねこたまりん
業務日誌(二冊目)
17/24

(7)試行と検証

「私に出来ること……そうだ!」


 ローザは寝台に腰を下ろして、詠唱を始めた。



「我は請い願う…我が最愛の家族たち全員の現し身を型取りて実体と成し、彼らを精到に守り抜く同胞となすことを」



「え?」


 マーサの前にマーサが、リビーの前にリビーが現れた。


「ローザ様、これは一体…」


「みんなを守ってくれる仲間を増やしてみた」


 ローザの言葉に、マーサそっくりの人形が強く頷き、リビーの人形も自信に満ちた笑みを浮かべた。


 そこへネイトが転移してきた。


「やっと飛べたぜ、お嬢! って、なんだこりゃ、俺!?」


 ネイトの前にも、ネイトそっくりの人形が現れた。


「一応全員の分を作れたはず。これでみんな、今より少し安全になったかも」


「ローザ様ったら…」


 本物のリビーが、呆れたように笑った。


「大好きな家族が倍になるのは、幸せも倍になるって…単純に考えたんだけど、まずかった?」


 ネイトは自分の人形としばし見つめ合い、何かを察したようだった。


「お嬢、こいつの戦闘能力って、俺の八割くらいだろ?」


「多くてもそのくらいだと思う。さすがにオリジナルに迫る人形は作れないみたい」


「十分だぜ。細かい技量はあとから確認するとして、いま使える戦力はいくらでも欲しいからな。で、さっそくだが、あっちから大勢攻めてきてるぞ」


 リビーが険しい顔を廊下に向けた。


「ネイト、あれって、デミグリッド国の兵士なの?」


「近衛だと思うぜ。ここのバカ王が、お嬢を誘拐して液体魔力を作らせるつもりだったらしくてな」


「え、うちに入ったコソ泥って、王様だったの?」


「その手下だけどな。いまごろ執事長が国の根幹から滅ぼしにかかってるだろうよ」


「アルダス、無事だといいけど…」


「心配いらないって、お嬢。ここに向かってる団体を片付けたら、部屋を城に戻すから、もうちょっと待っててくれ」


「ネイト、私も行くよ。一気に片付けよう!」


「二人とも気をつけて!」


 ネイト二人とリビー二人が部屋から飛び出してまもなく、凄まじい剣戟の音や爆発音が響いてきた。


 するとアレクシス皇子の人形が、にっこり笑いながら、戸口に向かって無詠唱で防音の魔術を発動した。


 それから、ふと気づいたというように、戸口近くで倒れていた家臣を肩に担いで、廊下に出ていった。


 ローザの部屋に、深夜らしい静けさが戻った。


「まあ、魔法も使えるんですね、アレ…王子のお人形は」


「すごいよね。作った私もびっくりしてる」


「もしかして、あの王子人形も、アレクシス皇子殿下の能力の八割ほどをお持ちなんでしょうか」


「そうかもしれない……もしかして私、作るべきじゃないものを、作っちゃったのかな」


 想定外の産物だったとはいえ、ローザは自分の浅慮を恥じる気持ちになっていた。


 他人にそっくりで、しかも強大な戦力になりうる人形を、本人に無断で作成するのは、筋が通らないことのような気がしたのだ。


「私たちの人形は問題ありませんよ。皆、ローザ様のお気持ちを十分に分かっていますからね」


「マーサ…」


「それにローザ様、その皇子のお人形を手放せますか?」


「手放せない。作りたくて作って、私のために生まれてきてくれたものだから、ちゃんと大切にしたい」


「なら、お手元で大切になさいませ。生まれたばかりなのに、ローザ様をちゃんと守ってくれた、よいお人形なのですからね」


「うん。アレクシス皇子殿下には、きちんとお話してみて、もし持ってちゃダメって言われたら、殿下に処分をお願いしようと思う」


「そうなさいませ。でもきっと、ダメとはおっしゃいませんよ」


 マーサは、皇子の秘書が持ち込んで来た「着せ替え」の山を思い出して、心の中でため息をついた。


(ローザ様はご覧になってないけど、城の空き部屋が二つは埋まりましたからね。アレ本人が引っ越してくるつもりじゃないかって、血相変えてた者もいたくらいですから)


「それにね、マーサ。自分のお人形を持つのって、初めてだから」


「ええ、そうでしたね…」


 ローザの養父母は、引き取った養女に「無駄な物」を一切与えない人々だった。


 皇子人形へのローザの思いを知ったマーサは、人形がアレクシス皇子と瓜二つであることは、完全に意識から除外しようと心に決めた。


「そうだ、マーサ」


「何でございましょう」


「ここの王様って、うちから液体魔力を盗んで、何をするつもりだったのかな」


「マーサには分かりかねますが、どうせ、ろくなことじゃございませんよ」


「貧乏で困ってるってわけじゃなさそうだよね。家来の人、豪華な服着てたし」


「城に戻りましたら、皆が報告してくれるでしょう」


「そうだね。ちゃんとはっきりさせて、二度とこんなことがないようにしないとね」


「ええ」


 みんなを守るためにもと、ローザが心に誓う傍らで、マーサは、自分の主が平和に暮らすためにもと、強く心に誓うのだった。







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